#022 Charisma & Princess
「今はアニメのストーリーが始まる前だろうけど、何かこの後のヒントになることはないのか?エピソードとか・・・アニメの中では公爵であるメリッサの父親は生きていたの?」
寮の私の部屋に戻るなり亮ちゃんが聞いてきた。
「わからない。そもそも原作を読んでないし通常放送のアニメでもなく2時間程度の映画みただけなんだよ。主役の2人がメインだからオーヴェル家はほとんど出てこなかった。ジェフリーは攻略対象だからちょっとだけ出てきたけど、そういえば出てたねって位の印象。お父さまのアーサーの話はなかったような気がする。」
「ほぼヒントなしか。俺ちょっと調べたい事があるから明日から1週間くらい寮に戻らないけど、絶対に危ないことはするなよ!」
「危ない事なんかないよ~。鍵がなければ寮の部屋には絶対に入れないし、窓だって開かないんだよ?」
「窓は外側からは開かないけど、内側から開ければ侵入できるんだぞ? なんか危機感足りなくないか?ホント頼むよ!」
次の日、私はさっそく1コマ目から錬金術の中上級クラスにでた。
新しい知らない知識を前にするとなんでこんなにワクワクするんだろう!
私がテンションマックスで教室の最前列に座っているとマリーが入ってきた。
「おはようメリッサちゃん、もう中上級クラスに出てるの?昨日中級クラスに上がったばっかりだよね?」
お?なんか ちゃん付けになった・・・そして蕩ける笑顔で手をぎゅ~っと握ってくる。
あ、これ、男子だったら勘違いするやつだ・・・
「あ、違うんですの。アンソニー先生が今週は中上級クラスにできるだけ出たら、来週から上級クラスに出席していいって言ってくださったのですわ。」
「・・・はぁ?なんかムカつく。」
えっ?
今のマリーが言ったの?私が心を読んだの?小声過ぎてわからなかった。
そ~っとマリーの顔を見るとさっきの笑顔のままだった。
「マリー・・・なにか怒ってますの?」
魔力を流したつもりはないので心を読んだという事はないだろう。と、思ったのでそ~っと聞いてみた。
「うん。だって頭にくるじゃない?私だって天才とか秀才とか言われて3ヵ月という早い人の半分の時間で中級クラスに上がった記録保持者なのに、メリッサちゃんがあっさりありえないスピードで抜かして行くんだもん。わたし嫉妬でムカっとしちゃった!」
可愛い笑顔で、てへぺろしながら表情と違う内容を話している。 理解が追い付かない・・・
すごい裏表キャラかよ。
いや、むしろ公開裏表なのかw
っていうか・・・
この子はヒロインなんだからこの世界で一番敵対しちゃいけない子じゃない?断罪ルートに行っちゃうじゃない! コワい、コワいよぉ!!
「わたくしが凄い訳じゃありませんわ。私がアカデミーに来る前からご教授いただいている家庭教師の先生が優秀なのですわ。」
まぁ、正確にはアカデミー来てからの先生だけど、ここはマリーを宥めるのが先!
「そうなの?それなら仕方ないね?ふふっ。」
ふふっ・・・ってナニコレ?!
なんで悪役令嬢がヒロインに嘘ついてまで気を使ってるの?イミわかんない。
午前のクラスはずっとマリーと一緒だった。
毎回隣の席に座っていたけれど、講義中に話しかけてきたり邪魔をしてくるわけでもなく集中して学んでいる様子だ。
私は最難関と言われている大学にストレートで合格したけれど、自分が頭いいともまして天才だとも思っていない。
一言で言うなら『勉強のツボ』を心得ているだけだ。
『ここは理解するだけで良いところ』『ここは違う側面からも解っていないといけないところ』などがわかっている。
マリーも同じタイプのようで、私と同じタイミングで軽く頷いたりメモをとったりしている。
実はこれって『お勉強のツボ』がわかっている友人と一緒に授業受けると身に付いちゃったりするんだよね。
私の場合は予備校の頃に由吉と一緒に勉強していて身に付いた能力だったりする。
由吉、元気かな?早く迎えに来てくれないかな・・・
午前の講義が終わったので昼食をとるため寮に戻る。
マリーが誘ってほしそうな顔でこちらを見ているけど気づかないふりをした。
マリーは男爵家の令嬢だから私が誘わなければ、皇家、公爵家、侯爵家専用のルクス寮には入れない。
他の寮がどんな感じなのかとか食堂や食事のメニューがどれだけ違うのかなどは、行ったことない私にはわからない。
たぶん公爵家の私が招待したらマリーもルクス寮に入れるはずだが、やったことないからわからないのだ。
ルクス寮の食堂は皇室の使用人がメインってフレデリックが言っていたし、皇太子であるフレデリックが住んでいるので他の寮とは食材からして違いそうなんだよね。こんどフレデリックに会ったら他の寮の子をどうやって招待するのか聞いておかなきゃ。
マリーはただのかわいこちゃんじゃなかった。
ニコニコしていて裏で腹黒いよりは、ニコニコと言いたいこと言ってくる方が絶対にいい。その方が私的には好きなタイプなのだけれど、どうしてこんなに気を使ってしまうのか・・・
「そんなの決まってる。嫌われたら断罪ルートが待ってるからだよね・・・」
小さな声で独り言を言いながら西棟を出てルクス寮に向かう庭園を歩いていた。
ルクス寮の庭園は皇宮や公爵家のレベルの作りで、アラベスク模様にデザインされた池や噴水の周りに模様に合わせて綺麗に刈り込まれた植え込みと色がグラデーションに見えるように配置された花が植えてある。
5m以上ありそうな刺付きのアイアンの塀が敷地を囲み、それに沿って刺のあるの薔薇の花が隙間なく植えられている。
お昼の太陽が真上にさしかかり噴水の水がキラキラと輝き、花々の色も鮮やかな色どりを放っている。
「綺麗・・・なんか癒される。いつまでも見ていられそう。」
まだこの世界に慣れていないのにここ数日 不安な気持ちに押しつぶされそうになっていたから。
「癒される・・・」
足を止めて庭園をぼーっと見つめていたら突然強い光がこちらに向かってくるのと同時に「危ないっ!」という誰かの叫び声が聞こえた。
一瞬の出来事で何があったかわからない。
気づくと右手で剣を構えているフレデリックに左腕で抱えられていた。
強い光の正体は何者かによって投げられた短剣だった。それをフレデリックが前腕の袖の下に仕込んだアーマーで防ぎ、急いで剣を抜いたらしい。
フレデリックの右の袖はバッサリ切られてアーマーが露出している。どうやら服の下に仕込まれていた前腕用のアーマーだけでは防ぎきれなかったようで、剣を握っている右手の甲から血がぽたぽたと流れ落ちている。
「フレデリックさまっ!お怪我を?!賊と対峙しないでお逃げください!私の事はいいですからはやくっ!」
私は驚いて素の言葉で叫んだ。
断罪されるかもしれない公爵令嬢よりこの帝国の皇太子の方が守られなくてはならないのに!
「何を言っている。貴女は私の婚約者だろう!命を賭してでも必ず守る!」
心臓がドクンと跳ねた。
まるでお姫様を守る王子様の様ではないか! 私は断罪予定の悪役なのに!!




