#019 お前は誰だ!
超スーパーハイテンションで研究室をでた私は、中央にある素材庭園のベンチに座ってコルネリスが数式のメモを纏めて出てくるのを待っていた。
「オーヴェルさん、さっそく研究室にいらしたんですね。ようこそ錬金術研究室へ。」
通りかかったアンソニー先生が私を見つけて話しかけてくれた。
「先生、わたくし初めての魔道具を作らせていただきましたわ。錬金術って素晴らしいですわ。」
私がハイテンションのまま答えるとアンソニー先生は少し驚いたように半歩下がり、改めて「それは良かったです。」と笑った。
「アンソニー先生!」
コルネリスが研究室から出てすぐに私がアンソニー先生と話しているのを見つけたらしく、階段を走り降りてきた。
「ああ、オーヴェルさんはブルターニュさんの助手をされたんですね。どうでしたか?初めての錬金術は。」
アンソニー先生がコルネリスに話しかけた。
「アンソニー先生!聞いてください、実はメリッサ嬢がですね・・・」
コルネリスは私が今までの構築式ではなく「解」を中心にした魔法陣を提案して、それを元に実験した話を事細かに報告している。
アンソニー先生は無表情で聞いていたけれど、突然いつもの笑顔に戻り
「すばらしい着眼点ですね!なるほど、私が今やっている停滞中の研究にも役立ちそうです!ありがとうございますオーヴェルさん!あなたは明日からの中上級クラスをできるだけ受講して下さい。1週間後には上級バッチをさしあげましょう。」
と、とんでもない事をいいだした。
「はい、え?わたくしがですか?今日から中級クラスに上がりましたのに上級クラスなんて・・・」
早く上級クラスに上がれるのは嬉しいけれど、その間に学ばなければならないことがあるならスキップしたくない。それをやると後から問題が生じて戻って学ばないといけない事は大学で経験してきた。
アンソニー先生は私の心配を理解したようで、説明を加えてくれた。
「基礎クラスは錬金術の歴史と概論、初級クラスは錬金術の基礎知識、初中級クラスは分子や原子の説明、中級クラスは計算式と構築の仕方、中上級クラスは数式を魔法陣にする方法、上級クラスからは実際に行った錬金術についての研究例を学んでいく研究者のための講義です。オーヴェルさんは話を聞くところによるともう中級クラスで学ぶ計算式を完全に理解していてその先の想像までできていると判断しました。中上級クラスで学ぶ構築式から魔法陣への当てはめ方も理解しているようですが、念のため1週間みっちり学んでみてください。」
「そういうカリキュラムでしたか。わかりました。今週はできる限り中上級クラスの講義に参加させていただきます。」
研究室を出ると兄から連絡が入った。こちらに来るので「晩餐を一緒にどうか」と言われたので、寮に戻り食堂の使用人に部屋で家族と食べたいので運んでほしいと頼んでみた。
「俺も一緒に参加させてもらってもいいかな?兄妹水入らずのほうがいい?」
コルネリスが三人で一緒にと言うので、コルネリスにメニューを決めてもらって運んでもらう手続きをしてもらった。
デリバリーできるなんてフレデリックに教えてもらわなきゃ知らなかったよ。引きこもりたくなったら天国のようなとこだね、ここ。
兄が来るまで部屋に入るなとも言えないのでコルネリスを部屋に招き入れ兄を待つことにした。
こんなところをフレデリックに見られたら何を言われるかわからない。
でもフレデリックだってどうせマリーと二人で彼の部屋にいたりするのだから構わないだろう。なぜちょっとモヤモヤするの?あの二人の邪魔をしたら死亡ルートになっちゃうのに。
コルネリスは部屋に入ると無遠慮にあちこちジロジロみている。
夕べ遅くまで本を読んでいて寝坊しそうになったので、着替えたものがベットに放り投げてあったり布団も捲れたままだっりするので急いで天蓋のカーテンを下ろした。
「コルネリス先生、あまり見ないでくださいませ、博物館じゃないんですから。」
「あぁ、失礼。女性の部屋に初めて入ったもので博物館より珍しいんだよ。」
えぇ~本当に?そんな軽そうなのに?
兄が思ったより早く来てくれてよかった。
コルネリスの事を信用はしているけれど、兄と違って全幅の信頼を置いているわけではない。
ちょっと軽い感じだし、私の事疑っているしね。
「ジェフリー!お前の妹本当に天才だよ!入学二週間で錬金術上級だぞ!そんな話聞いたことあるか?1年以上かかるのが普通だろ?」
私に天賦の才なんてなくてごめん、大学で学んだだけだよw
コルネリスが興奮して今日の私の研究室での話をする。兄は物理数学には通じてないらしくあまりピンときてない様子だけど、目を細めて嬉しそうに私の顔をずっと見ていた。
兄は私が褒められているのがよほど嬉しいのか、蕩けるような笑顔で一人話続けるるコルネリスに相槌を打っていた。
私もお兄さまと話したい。
コルネリスの心を読んだ話と疑われている話がしたいけど今は無理だぁ。後で通信の魔術具を使おう・・・
「そういえばイゾルデがこの寮に滞在してる。ジェフリーに会いたがっていたよ。」
「イゾルデか、懐かしいな。来週も来るから次は一緒に話をしようと伝えてくれ。まだ公爵の仕事が残っているから私は食事が終わったら失礼するよ。」
「お父さまはお元気ですの?」
「あぁ、元気だ。お前の良い報告をを聞く度、それはそれはお喜びになっている。お前が父上の様子を伺ったと聞いただけで大喜びされるはずだ。」
あの公爵が?想像つかないね・・・
「お兄さま、お父さまのお仕事がまだ終わってないのに来てくださったのですか?お忙しいなら無理されなくてよかったんですのに・・・」
「父上が、メリッサが寂しがっているだろうから早く行ってあげなさいと仰ったのだ。」
命の危険を感じるほど怖いと思っていた父だけど、そんなに心配されているなんてなんだかあたたかい。
「それでは私は戻るよ。何かあったら通信してきなさい。じゃあ、コルネリス、イゾルデによろしく。」
兄は私の頭を優しくなでて軽くハグして帰っていった。
兄の様子をニヤニヤしながら見ていたコルネリスが
「じゃあ俺もそろそろ失礼しようかな。」
といって私の頭を撫でてきた。
なんか嫌な予感がして離れようとした瞬間、兄にされた倍の力で抱きしめられた。
思わずびっくりして魔力が流れ、コルネリスの心を読んでしまった。
(はぁ・・・食べてしまいたいほどかわいい。どうしてこんなに愛おしいと思うのだろう・・・なんかに綾波に、理々沙に似ている気がするからか?)
「えっ?はぁっ?」
私はびっくりして思わずコルネリスの胸元を強く押してしまった。
コルネリスが鋭い目で私を見る。
「・・・・・メリッサ、今 俺に魔力流したよね? 前にジェフリーと気になることを言っていたけど・・・君、もしかして・・・心を読めたりするのかな?」
何が何だかわからない。
この能力がバレたらダメだって兄も言われたけれど、もうどうでもいいや。
「理々沙って・・・」
「あぁ、俺が何年もずっと想いを寄せている女だ。やっぱり心が読めるんだな!」
「コルネリス、あなた・・・転生者?」
・・・というか、私の知り合い?!




