#017 だがそれでいい
1週間、私は脇目も振らずアンソニー先生の錬金術の講義をとりまくった(いや、他の科目も受けろよw)
結果、アンソニー先生から
「オーヴェルさん、そろそろ中級クラスを受講しても理解できると思いますよ。是非受講して下さい。これは『錬金術中級の証』です。これがあれば研究室で助手をすることができます。研究室を一人で使うには上級をける必要がありますので、さらなる努力が必要です。頑張ってください、応援しておりますので。」
と言われ1.5~2センチくらいの小さなバッチをもらった。中学高校の時 制服に制服につけていた校章に似ている。
そっか。私服を着ていても制服のジャケットのようなものだけは上から着ているアカデミー生が多いなって思っていたけれど、優秀な人ほどバッチをいっぱいつけているから付け替えるのが面倒なんだね。
「コルネリス先生、わたくし中級のバッチいただきましたわ!」
「もう?すごい早かったじゃないか!じゃあ俺の助手っていう名目で解毒のお守り作ってみるか?」
「本当ですか?!嬉しいですわ!」
「作り方を教える約束だっただろう?今日はいくつ講義をとる予定だ?」
「今日は午前に初級クラスと初中級クラス、午後の2コマ目の中級クラスにでてみるつもりですわ。」
講義は特別枠以外、基本午前2枠、午後2枠の構成になっている。
「そうか、じゃあお昼はゆっくりとれるな。昼食を一緒に食べながら今日の錬成をシュミレーションをしておこう。」
好きな事をしていると時間はあっという間にすぎる。もうお昼だ!
アカデミーの講義を行う校舎のようなところにも食堂はあるけど、主に平民の子たちが利用するところなので貴族は寮に戻って寮の食堂を使う。
平民は貴族と一緒に食事するのを嫌がることが多いし、貴族は薬や毒の対策のために人の多い食堂は避ける習慣があるからだ。
私も自分の部屋があるルクス寮に戻り食堂に向かった。
食堂に着くとコルネリスが既にいて誰かと話をしている。ここの寮の食堂を使っているのは皇族と公爵家と侯爵家だけなので私も挨拶したほうがいいのかもしれない。
「ごきげんよう。」
軽くお辞儀をしてにっこり微笑んでみる。第一印象大事!
コルネリスが私に気付き、一緒にいた令嬢を紹介してくれた。
「ああ、メリッサ。こちらはノルディーン侯爵家のイゾルデ嬢だ。俺と君の兄のジェフリーと同期で今は薬草学の聴講で滞在しているそうだ。」
「はじめまして。メリッサ・フォン・オーヴェルと申します。よろしく願いいたします。」
「はじめまして!イゾルデ・フォン・ノルディーンよ。ジェフリーの妹さん?ジェフリーにそっくりね。でも、あれ?ジェフリーの妹さんって・・・」
あはは、やっぱり有名なのね。私のおバカはw
「噂は噂だよ、イゾルデ。メリッサは入学1週間にして錬金術の中級バッチをもらったんだ。あのジェフリーが溺愛している最愛の妹君だ。」
「へぇ、あのジェフリーでも自分にそっくりな美しい妹にはメロメロになるのね。是非見てみたいわ。」
「どれだけ溺愛しているかと言うと週一回以上はここに来ている。見たければすぐにみられるさ。さて、メリッサ。まずは食事をしてそれからこの手順とレシピのメモを書き写そうか。ちゃんと紙とインクはもってきたかな?」
そう言って何枚もの羊皮紙の上の部分に穴をあけて紐でとじてある、ノート?紙束?を何枚かめくって移しやすいように私の前にセッティングしてくれた。
私は急いで昼食を摂りながら、それを汚さないように覗くようにして文字だけ目で追う。
コルネリスは満足げにその様子を見ていた。
「うふふ。コルネリス、メロメロなのは兄だけじゃないんじゃないの?視線が甘いわよ?」
「何を言うんだイゾルデ!メリッサは皇太子殿下と婚約されている。俺が付け入る隙はないんだよ。イゾルデこそジェフリーに会いたくて仕方ないんじゃないのか?」
「会いたいか会いたくないかで言えば会いたいけど・・・ジェフリーが女性が好きになる姿なんて想像できないわ。あの人は誰かを好きになった事なんてないんじゃない?あら、ごめんなさいね。妹さんの前で。」
えっ?兄は今まで女の人と付き合ったことないの?あんなイケメンなのに?チェリーボーイ?もったいな~~~~~!
ふたりの会話を聞いてないふりしながら にやけてしまったらしくイゾルデに爆笑された。
「じゃあ、私は午後の1枠目を受けるからお先に失礼するわ。オーヴェルさん、お兄さまによろしく。」
イゾルデが行ってしまったので食堂にはコルネリスと私しかいない。静かなうちにコルネリスのレシピ&手順書を書き写さないと。
フレデリックは自室で食事をとっているのかな・・・
あれ?なんでフレデリックの事なんて考えてるんだろう。集中!集中!
手順書を書き写して大まかな錬成の流れを教えてもらったあと、私は午後枠の中級クラスを受けるために教室に向かった。
「あっ、オーヴェルさんこんにちはぁ~。入学したばっかりなのにもう中級クラス受講するんだね。すごぉ~い。」
教室に入るとすぐにヒロインのマリーが抱きついてきて、上目遣いで笑顔をみせる。これだけかわいいと距離感おかしくても不快じゃないんだね。
「あ、ブラウンさんごきげんよう。」
「マリーって呼んで。私達お友達になったんだもの。そうでしょ?」
首を傾げて笑う。あざとい!かわいい!うん、あざとくてもかわいいから正義!
「マリーは中級クラスなんですの?それとも上級?私は今日から中級クラス受けられるようになったのですわ。」
「そうなの?おめでとう!1週間なんて本当にすごいよぉ。私なんか3ヵ月かかったもん。普通は早い人でも半年以上かかるから3ヵ月でも早い方だって言われるよ。私はねぇ、今上級クラスのバッチもらいたくて一生懸命中級クラスと中上級クラスを受けてるの。」
「いいですわね。わたくしも早く上級クラス受けてみたいですわ。」
「そうだよねっ!そうすれば研究室も一人で使えるようになるしね。マリーはねぇ、錬金術っていうより錬成陣をマスターしたいの。電子エネルギーと物質・・・っていうより重力の本を読みまくってるんだ。メリッサはこのアカデミーの図書室を使ったことある?このアカデミーは芸術と文学と武術と魔術、それから化学と医学の専門家が多くてね、その分野の本がすっごく多くてとてもお勉強になるんだよ。こんど一緒に行こ?」
「面白そうですわ!是非連れて行ってくださいませ。」
「うん、一緒に行こうねっ。わたししばらく錬金術の中級クラスに出まくるからいつでも会えるね。」
電子エネルギーかぁ・・・かわいいだけじゃないんだな。物理化学ヲタとしてはめちゃくちゃ語り合いたいけど、いかんせん本当のメリッサは頭の悪い子だし、今まで何の教育も受けてきてないのに大学レベルの話なんてしたらまずいもんね。
メリッサの中身が違うってバレたら異端で処されちゃうんだっけ?
マリーと皇太子の仲を引き裂いても断罪で処されちゃうし。 死亡ルート多すぎじゃないコレ?
でもたとえ死亡ルートが多くても私は錬金術を極めるのだ!
よし!中級どんとこい!




