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#016 予知夢の検証~転生したのは私だけじゃない?

 

 この世界に転生してから考えることが多すぎて頭がお疲れ様だったせいか、毎日ベッドに入るなり爆睡していたので、とても久しぶりに夢を見た。


 私が誰かと共闘している夢・・・

 「早く魔法陣を作って攻撃しろ!数式を反転させればいいんだろ?」

 数式を反転した魔法陣?

 「反転した魔法陣で攻撃しないと次の攻撃が来る!早く!」

 わからないよ。何の数式を反転するの?

 「ゼミの後、学食で書いてたやつだよ!」

 ゼミ?学食って大学院の??


 ここで目が覚めた。

 私は予知夢体質だけど、夢が正夢になったところで得をしたことは一回もない。

 そもそも夢が正夢になるのか、ただの夢なのかも『夢が現実』になってみてはじめてわかるという無意味な能力なわけで・・・

 でもなんだろう?こっちの世界の夢だったけど、一緒にいた相手は大学院の友達だった?

 

 待って!

 そもそもなんで私はこっちの世界に来たの?

 由吉が番人になるぅ~とか言ってたから由吉のせいだと思っていたけえれど、由吉は実験に成功したの?失敗したの?

 っていうか成功してたら由吉が来ているはずだし、失敗したなら巻き込まれたのは私だけじゃないはず・・・

 私のほかにも転生者がいるのかもしれない。

 今まで由吉がそのうち迎えに来てくれるだろうと漠然と考えていたけれど、もしかしたら私がメリッサに入ったという事もわからず迎えに来れないのかもしれない。


 考えていたら涙が出てきた。理々沙だった頃は何があっても泣くような人間ではなかった。実験や仮説なんて失敗してあたりまえ、何でもポジティブにとらえないとやってられないからだ。このまま由吉が迎えに来てくれなかったら私は身だけじゃなく心もメリッサになってしまうかもしれない。心がどんどん『敵役』に浸食さえていくような恐怖に苛まれて、誰でもいいから他の人と話をしたくなった。一人でいたらダメだ!怖い。

 ふと手元を見るとコルネリスがくれたブレスレットが目に入った。二人を識別する魔法陣が並んでいる。二人とも私の理解者だ。だけど絶対的に信頼をおけるのは・・・

 私は無意識に兄の魔法陣に魔力をこめた指で触っていた。

 


 「メリッサどうした?こんな時間に何かあったのか?」

 こんな時間?周りを見渡してみると明け方に目を覚ましたらしく白み始めた空にはまだ太陽がのぼっていなかった。

 「お兄さまこんな時間だと思わすにごめんなさい。怖い夢を見てつい無意識にお兄さまに会いたくなってしまったようですわ。」

 「そうか、危険な目にあっているのでなければそれでいい。少し待ちなさい。」

 

 少しすると兄が私の部屋に現れた。

 「これは便利だな。転移陣のない場所にも転移できるなんて!コルネリスに感謝だな。」

 兄がたぶん寝ていたのだろうラフな服装のままやってきて私のベッドに腰かけ私の頭を撫でてくれる。

 「どうした?泣くほど怖い夢だったのか?悪夢は自分が潜在的に困っていたり弱っている事の現れだったりする。話してみたら楽になるかもしれない。話してみなさい。」

 「お兄さまはわたくしの絶対的な味方ですか?」

 心の底から怯えていた私は兄の顔を見てすっかり安心したらしくストレートに聞いてしまった。

 「当然だ。2人きりの血を分けた兄妹だからな。落馬事故にあう前のお前は私の事を嫌っていただろう?だから機嫌を損ねぬよう一定の距離を置いていたのだ。会話をしようと試みても私の話しは聞いてもらえなかった。今は会話もできるし世話もやけて本当に嬉しい。私は亡くなった我々の母上に、お前の面倒をみるように頼まれたのだ。」

 「約束を果たせてうれしい」と言いながら兄は私の頭を撫でていた手を背中におとしてそっと抱き寄せてくれた。心が弱っている時の人の温もりはとても心地いい。

 

 「お兄さま、こことは違う別の世界ってあるとおもわれますか?」

 私は単刀直入に訊ねてみることにした。

 「違う世界?違う国の事を言っているのか?ならばこのエルラード帝国の他に・・・」

 「違いますお兄さま。違う国ではなく、ちがう惑星であったり、ちがう空間・・・つまり異世界です。」

 異世界を説明するのって難しいね。でももし兄が転生者ならこれでわかるはず。

 「異世界?う~んオカルト的な話か?小さい頃に聞いたことはある。黒魔術によって違う空間に封印されてしまった・・・のような話だ。だからあるのかもしれないな。だがメリッサ、私以外にはこの話は絶対にしてはいけない。いいな?」

 兄はどうやら転生者ではなかった。嘘を吐いているというよりは、私の聞きたいことを理解できていない様子だ。

 「話してはいけないとは・・・理由はありますの?」

 「オカルト的な話も黒魔術に関することもこの国では異端と言われ、異端者と判断されると裁判もなしにすぐに処刑されてしまう。常日頃から『黒い魔法』に関することは口にしない方が賢明なんだ。もしも命を狙う者がいたとしよう。その者に聞かれてしまったら『オカルト的な話を好む異端者だ』という事を利用されて、その者は自分の手を汚さず相手を死に追いやれるのだ。」


 聞いておいてよかった。

 知らずに処刑された転生者がいなければいいのだけれど・・・ 

 「お兄さま。わたくしは黒魔術の事も知りませんでした。異端者ではありませんわ。」

 「大丈夫だ、わかっている。私には何を話してもいい。私はお前の絶対的な味方だという事は覚えていてくれ。母上との約束でもあるし、ようやくお前が私を頼ってくれるようになったことが私の喜びでもあるのだ。だけど私以外にはこの話はしないでほしい。約束だ!」

 「わかりましたわ、おにいさま。」

 

 理解した。

 私が転生者であると兄に知られてはならないことを!

 小さい頃からかわいがりたくてもかわいがれなかった妹の中身が変わってしまったと知られれば大変なことになるだろう。

 私は子供の様に兄に抱きついて甘えているうちに眠ってしまったらしい。

 気付くと朝で、私はいつもの通り一人ベッドで目を覚ました。


 兄が来てくれたのは夢だったのかな?

 ふとベットの横に置いてあるサイドテーブルに目を落とすと『こんどは良い夢を!』と書かれた紙切れが置いてあった。

 「お兄さまったら本当(テラ)イケメン!」

ちなみに私は予知夢体質ですが、今まで得をしたことはありません(笑)

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