#014 皇命で婚約かぁ・・・まじ勘弁w
「調子に乗って基礎クラスと初級クラスを2講義。計3講義受けてしまいましたわ。早く中級クラスにでたいですわね。」
「初日から意欲的じゃないか、講義はついて行けているのか?」
様子を見に来てくれた兄ジェフリーがちょっと心配そうな顔で聞いてくる。
「当然ですわ。わからないことがあればわかるまで質問する主義ですの。」
たとえバカにされたとしても!
聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥ってね!
コルネリスが言っていた通り兄が会いに来てくれたので、兄とコルネリスと私とで寮の食堂で食事をすることにした。
この寮は5つある寮の中でも一番身分の高い皇族、公爵家、侯爵家が使用しているルクス寮と呼ばれている寮だ。現在ここに住んでいる学生は4人か5人くらいらしい。
住んでいる学生のほかにコルネリスの様に聴講や研究室に用のある卒業生も長期ステイしていたりするが、それでも平均で10~15人くらいだそうだ。
だから少し遅い時間に食事をしようと思うと他の学生に会う確率が低いみたい。
今は私たち3人以外には誰もいない。
「今日さ、いいものを作ったんだ。」
満面の笑みでコルネリスが私と兄にブレスレットを渡してきた。スマートウォッチのようにチェーンの途中に丸に近い四角のマナ石がついていて表面に触れると淡い緑の光の魔法陣が浮かび上がる。
「通信用のアーティファクトを省エネ使用に改造してコンパクトにしてみた。同じ魔法陣を組み込んであるからこの三人には簡単に連絡がとれるって仕組み!端っこの小さい方の魔法陣は瞬間移動のスクロールを改良したものだから、こっちは多めに魔力を使う事になるけどこれを起動して通信できた相手のいるところに転移できるようにした。俺って天才?」
「え~!すごいですわ!本当に天才です!どのような連絡手段があるのか、わからなくて困っていました。とても助かりますわ。転移の方は・・・ちょっとトラウマになったのでわたくしはあまり使わないかもしれませんが。」
「あぁ。これは本当に今、必要なものだな。ここに来やすくなったし、連絡も本当に助かる。ありがとうコルネリス!」
「直通の連絡手段って大事だよな。ふくろうも鳩も糞の被害で禁止になったから、いざというときのために研究していたんだ。研究費も材料費もかなりかかったけれど、できて良かったよ。」
「ああ、すきなだけ請求してくれ!いくらでも払おう。本当に助かるよ。そうだ、メリッサ。父上がお前の合格をそれはそれはお喜びで、いくら使っても構わないから居心地よく過ごしなさいとお金をたくさん渡されたのでお前の部屋に置いておいた。」
兄は私の部屋のカギを持ってるから先に行ってきたのね。散らかしてなくてよかった。ここにはメイドがいないから。
ちなみに鍵は魔道具なので寮の入口からは自分の部屋と共有スペース以外には行けないようになっている。だから雑に大金を置いてあっても鍵を持っている人以外出入りできないので危なくない。窓はあるけれど防弾ガラスのように対魔法攻撃用の安全対策もされていて外側からは絶対に開けられない。
「連絡用の方ちょっと使ってみてよ。こっちの魔法陣が俺と同じで、こっちの魔法陣がジェフリーと同じやつだから好きな方起動してみて!」
私は兄と同じ方の魔法陣に触れて指に少し力を入れて魔力をだしてみる。あいかわらず加減がわからず大量に流れたけど壊れはしなかった。すると兄の方の魔法陣が光り兄が魔力を流すとお互いに相手のマナ石に小さい3Dのホログラムのような胸から上が現れた。
「小さいお兄さまが現れましたわ!コルネリス先生すごい!」
「あぁ、すごいな。ぜんぜんタイムラグがない。」
こんなもの作れちゃうなんて!ファンタジーってすごい!私も早く作れるようになりたい。
「コルネリス先生、私も研究室に行ってみたいです。解毒のアーティファクトの作り方を教えていただけるお約束ですわ。」
「大丈夫。約束はちゃんと覚えているよ。でも錬金術の中級を受講できるバッチがないと研究室に入室できない。助手もしてもらえないから。・・・頑張って!」
「初級から上はどのくらいで受けられるようになるんですの?」
「初中級までは自己判断だけど中級以上は先生の許可がいる。まずは初級と初中級をいっぱい受けたらいいよ。そうしたら先生のほうから声かけてくれるから。」
兄は私とコルネリスの講義の話をなぜだか嬉しそうな顔で聞いている。兄妹になったばかりだけれど この身体の血縁だからなのか髪色も瞳の色も同じだからなのか、もう『兄』としか思えない。うちの兄すごいでしょ?頼りがいがあってイケメンで!って自慢したいくらい『兄』だ。だからなのか
「そろそろ私は帰るよ。コルネリス、妹をよろしく。」
と立ち上がった時
「お兄さまもう帰ってしまうんですの?寂しいですわ。」
と口をついてでた。本当にもう少しでいいから一緒に居てほしい。急にホームシックならぬ兄シックになってしまって自分でも混乱する。
ちょうど兄が立ち上がった時に運悪く皇太子が食堂に入ってきた。今度はヒロインを連れていない。
「皇太子殿下、大変ご無沙汰いたしております。お変わりございませんか?」
兄がすぐにフレデリックに気づき挨拶をする。
「小公爵、久しいな。私は変わりない。小公爵は息災か?」
「お気遣いありがとうございます殿下。私も元気に過ごさせていただいております。」
「小公爵の妹は噂とはずいぶん違う印象じゃないか?そんなにかしこまらないでくれ。私たちは親族になる予定じゃないか。」
「恐れ入ります。」
「殿下はメリッサ嬢を第一夫人になさるおつもりなんですか?それとも男爵令嬢を第一夫人にして公女を側室になさるおつもりですか?」
今回は黙っていたコルネリスが突然皮肉たっぷりな質問をしてきた。
「無礼だぞ!小侯爵。私とメリッサ公女との婚約がどうしても気に入らないようだな!そんなに公女の事が好きなのか?」
「コルネリス?」
兄がぎょっとした顔でコルネリスを見る。
「ジェフリー、殿下は男爵令嬢のマリー・ブラウンと恋仲なんだ。お昼にここでベタベタしているところを目撃したからアカデミー滞在の連中に聞いてみた。そしたら四六時中ゼロ距離でいらっしゃるそうだ!殿下、なのになぜメリッサ嬢との婚約を決定事項の様に話されるのですか?」
兄は無表情で溜め息をつき
「コルネリス。二人の婚約は皇帝陛下の命令で、皇家とオーヴェル家ですでに決まっている決定事項だ。我々が殿下の恋愛事情に口を出していいわけでもない。粛々と受け止めなければならないだけだ。」
兄は完全に作り笑顔になり皇太子に頭をさげて「それでは私は父上の補佐が残っておりますので失礼させていただきます。妹をよろしくお願い致します。」
と言って逃げるように帰っていった。
まってぇ~お兄ちゃんいかないでぇ~。
私は一触即発状態のフレデリック皇子とコルネリスに挟まれて泣きたくなった。
「聞いたか?小侯爵、私と公女は皇命ですでに婚約者だそうだ!いくら公女に想いを寄せていても私に喧嘩を売るのは筋違いだ!」
コルネリスはなぜかとても悔しそうな顔で返事をしない。
「公女、明日、晩餐に誘ってもいいか?煩い者がいたら貴女とまともに話ができない。婚約者とは週に1回以上交流の機会を設けなければならないしな。これは国の決まり事だ。」
嫌だ!と言えたらどんなにいいだろう・・・皇子さま、貴方と仲良くなると私には断罪ルートが待っているんです!
私も兄を見習って無表情を保ち、そして作り笑顔でフレデリックの方に返事をした。
「・・・えぇ、喜んで。」




