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#012 【Side フレデリック・アーサー・ド・エルラード】ここはどこだ


 「フレデリックさまっ!皇太子殿下っ!よかった、意識が戻られたぞ!」


 誰だ?フレデリック?何を騒いでるんだ?どこだここは?

 「頭が痛いな・・・」

 は?何だこの声は。俺の声じゃない!周りで騒いでいる連中はコスプレイヤーか?

 みんな騎士の格好をしているし・・・あれ?なんで日本人がいないんだよ。


「そうか、由吉がゲートの番人になったってわけだな。」


「殿下、何を仰っているのですか?頭は大丈夫でしょうか?」

 見知らぬ騎士が問いかけてくる。

「誰か鏡を持ってきてくれ。」

 まずは状況を把握しないとならないだろう。予想通り鏡に映ったのは俺、加賀凌真ではなく金髪碧眼の・・・ん?あれっ?

 この顔は由吉が誕生日に観たいといった映画の、なんだっけ、すごく長いタイトルのファンタジーの主人公じゃないか。

 あっ、じゃあもしかしてヒロインには綾波が入ったんじゃないか?男爵がメイドに産ませた私生児だっけ?で、公爵令嬢の悪役令嬢と皇太子が婚約してたんだよな?で、どうなるんだっけ?

 皇太子は悪役令嬢と結婚するんだっけ?気の毒だな・・・って皇太子って俺じゃないか!

 はぁ~あの映画、けっこう序盤で寝ちゃったから覚えてないな。こんなことならちゃんと観ておくべきだった・・・


 「殿下、医師を連れてきました!」

 「殿下は剣術の訓練中にお怪我なさって頭から血を流して昏倒されたのだ。しっかり治療するように!」

 医師が何人かで寄ってたかって俺の頭に手をかざす。 ・・・っ、あれっ?

 頭がほわ~っと暖かくなって痛みが引き楽になった。と同時にこの身体の主のこれまでの経験や感情が乾いた布に水がしみこむようにじわ~っと浸透してきた。

 俺はこの帝国の皇帝と第一夫人の間に生れた一人息子で、第二夫人が生んだ腹違いの妹が一人いる。

 婚約者はまだいないようだ。あのアニメのストーリーが始まる前なんだな。


 俺は皇城での暮らしはどうも落ち着かなかった。

 歓心を買おうとする太鼓持ち、あらひろいをしようと必死になる輩。

 特に女性たちは秋波を送るのに必死だった。媚びをうるだけじゃなく、しな垂れかかってきたりベタベタしてきたり色目使ったりで本当にうんざり。

 俺は『女を武器』にしているタイプの婀娜婀娜(あだあだ)しい女って本当に苦手。反吐がでる。

 

 ある日寝付けなくて寝がえりをうった時、宰相の娘が音もなく俺の部屋に入ってきた。服を脱ぎ始めたので部屋の外にいた護衛騎士を呼んで連行させた。

 もしあの時俺がぐっすり眠っていて気付かなければ、そのまま既成事実のように演出されていたのだろう。

 俺は皇帝に直訴してアカデミーの寮で過ごすことにした。皇帝である父親が、色めき立った俺の周りを少しでも鎮めるために公爵家の娘と婚約させると言った。

 

 「あ、たぶんそれが悪役令嬢のメリッサとかってバカ女だな。でもこの状況がしずまるならもう誰だっていいや・・・」


 アカデミーは楽しかった。

 俺は元々国立大学の大学院に通っていて、修士号ではなく博士号をとろうとしていた男だ。

 中学生の時に数学に目覚めた。難解問題は絶対に解くためのカギが隠されているやりがいのあるパズルじゃないか!

 高校の時には物理が特に面白かった、ルールを学んで解くのも好きだしさらに新しい分野に突っ込んでいくのも大好きだ。


 この世界の「魔術」とか「剣術」にもハマった。初めての分野なので未知数で楽しい。

 計算式の構築で新しい魔法陣が作れる。

 つまり新しい魔法が誕生するってわけだ!わくわくするだろ?


 「はじめまして!フレデリック殿下!私はマリー・ブラウンです!」

 あぁ、あの物語(アニメ)?の俺の相手役じゃないか!本当にいたんだな。

 マリーとは話が合った。計算式の見解も、つまり魔法陣の構成も二人でアイデアを出し合って新しいものを生み出したり、研究や実験に対する意見もいつも同じで一緒にいて楽しかった。

 可愛すぎるし、あざとい話し方もする。けれどそんなこと気にならないくらい二人でディスカッションするのは心地よく、俺の研究意欲をかきたてた。

 あっ、そうだ、もしかしてこの子(ヒロイン)理々沙じゃないかと考えたことがあったな。でもまさか「転生者ですか?」なんて聞けるわけない。気がふれたと思われるのがオチだろう。

 宗教上、異端者は処刑されると聞いた。


「なぁマリー、好きな色とか好きな花とか教えてくれるか?」

 ふと、理々沙なら・・・という質問をしてみた。

「え~とねぇ、好きな色はピンク。好きなお花は白いバラかな~。」

 ・・・理々沙じゃないな。彼女はピンクとかパステルカラーなものよりロイヤルブルーとかビリジアンのような色を好んでいたし、好きな花は藤や桜のような垂れ下がる系が好きだったはず。たしか薔薇は刺があるから嫌いとも・・・

 残念だ。こんなに気が合うのに彼女じゃないなんて。うーん・・・もしも、この世界から帰れない場合は俺は物語(アニメ)通りマリーを愛する様になるのだろうか?

 いや、すごくかわいいけどなんか違うんだ。一緒にいるとすごく楽だし、ものの考え方なんかもすごく似ている。親友としてならずっと一緒にいられるけど女性として愛せるのか?

 もしも俺がこのままこの世界に残れば俺は皇帝になって、結婚相手は皇后になるわけだ。・・・アリよりのナシだな。

 

「マリー、私には婚約者がいるんだ。まだ会った事はないんだが公爵家の令嬢だ。もしその令嬢が俺とマリーの仲の良さに嫉妬してマリーを害そうとしたらどうする?」

 俺はマリーと結婚することはないだろうけど、できればコイツとはずーっと一緒にいたい。

「心配ないよぉ~だってマリーは殿下のことすごく好きだけど、殿下と恋人になったり結婚したいなんて全然思わないもの。」

「あ!そうだろ?俺も同じ事思ってた。マリーとは女性としてじゃなく友人としてずっと一緒にいたいなって。」

「マリーは殿下の婚約者がもしもすご~く怖い人でも頑張るから、殿下も優しくしてあげるんだよ?」

「あぁ、そうだな。まだ会ったことないからどんな令嬢かもわからないしな。」

 

 まだ会ったことなくても頭も性格も悪い悪役令嬢なんだって、俺はすでに知ってるけどな。

 

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