#011 君の瞳に恋してない
「はじめましてぇ~マリー・ブラウンで~すっ」
物凄く険悪な空気をぶった切ってヒロインのマリーがひょこっと顔を出した。
あっ、かわいい!
淡いピンクの髪に金色の瞳。制服の上から白のレースをあしらったパステルカラーのエプロンドレスを着ている。
普通の女子が着ていたらあざとくて見ていられないような可愛らしい装いだけれど、まるで日朝のヒロイン達の様に全く違和感ない。
おバカで高慢ちきな悪役令嬢のメリッサがやきもち妬いていじめる気持ちがわかってしまう。
でもいじめないよ?なぜなら私は皇太子フレデリックに想いを寄せていないから!
美しい男性は目の保養には良いけどそれだけで「好き好き~」ってはならないでしょ?しかも出会っていきなり喧嘩売られているんだよ↓
「はじめましてブラウンさん。メリッサ・フォン・オーヴェルです。昨日試験を受けて今日から講義に出ようと思っています。まだ何もわからないのでよかったら色々教えてくださいませ。お友達になっていただけたら嬉しいですわ。」
私が答えると皆一斉にこちらを見た。あれ?なんか変なこと言ったのかな?
「メリッサ嬢が友人を?・・・あ、いや失礼。」
「コルネリス先生?」
「いや、意外だったんだ。君が男爵家の令嬢を相手にそんな丁寧に接する事も友人に望むことも。」
「アカデミーでは身分を振りかざしてはいけないとジェフリーお兄さまに言われましたわ。それにとっても可愛らしい令嬢じゃないですか!是非仲良くしてくださいませ。」
かわいいは正義!部屋に飾っておきたいほどかわいいんだもん。
「高名なメリッサ公女様に褒めてもらって嬉しいですぅ。是非お友達になってください。殿下もぉ~そんな難しい顔してないでちゃんと仲良くしなきゃダメですよ?婚約者さまじゃないですかぁ~!」
ヒロインのマリーが蕩けるようなかわいい笑顔で無邪気に皇太子の背中をポンポン叩く。
「ふふっ。まだ婚約もしてないですし、いつまで婚約者かもわからないですけどね。」
あっ、やばっ。心の声が口に出てしまった。慌てて口をおさえてみたけれど後のまつりだ。
ずっと黙って成り行きを見守ってたくせに調子に乗ってよけいなこと言っちゃった!どうしよう・・・
「なんだと?私との婚約に不満があるようだな?」
フレデリックがあからさまに美しい顔をしかめた。
「あはは~。メリッサ嬢、そんな正直に言ってしまったからって落ち込んで下向かなくても大丈夫だ。殿下との婚約が破談になったら俺がもらってやるから心配するな。」
コルネリスが私の頭をなでながらフレデリックに挑発的な笑みを見せる。
「もちろん冗談ですよ?殿下。メリッサ嬢は私の親友の妹君です。恋愛関係なんかじゃありませんので。・・・今は!」
フレデリックが私の髪を撫でるコルネリスの手を思い切り振り払って
「なぜ私を挑発するんだ?!それは冗談ではなくブルターニュ令息の本音なのではないか?」
「殿下がそちらにいらっしゃるかわいらしい令嬢を寵愛されるのでしたらメリッサ嬢が気の毒だなと思うのは本音ですよ。それと、メリッサ嬢は殿下が侮辱するような要素はひとつもなく素養も能力もある方です。特に計算力はアンソニー先生がべた褒めするほどです。」
もうやめて!やめてマジやめて!
なんでフレデリックとコルネリスが私を取り合うような感じになってしまっているの?二人ともわたしに恋心があるわけでもなんでもないじゃ~ん!
マリーがかわいらしく口元をおさえているけど、ニヤニヤしながら二人の争いを楽しんでるのはバレバレだからねっ。友達になるって言ったくせに助ける気はさらさら無い。
「殿下、申し訳ありません。わたくしの軽率な発言で殿下に不快な思いをさせてしまったようです。でも、もしも殿下がわたくしと婚約なさりたくないのならばそのようになさってくださいませ。」
私は深々と頭を下げた。この世界線に頭を下げる風習がなくても謝罪が伝わればいい。
「それは謝っているつもりなのか?!令嬢こそ婚約を回避しようとしているようにしか聞こえないぞ!」
えええええ~・・・うん。確かに婚約は回避したい。断罪マジ勘弁! でもでもそんなこと言ったらヤバいもんね。
「わたくしが婚約を回避したいなどとは申しておりません。わたくしは公爵であるお父さまの言う通りにするだけですもの。」
「・・・・・」
フレデリックが黙った。
ついでにコルネリスも黙った。みんな公爵が怖いんだね?そうなんだね?
あ~よかった。良くないかもしれないけど言い争いは鎮火したから良しとしよう。
「ふふふ。でも殿下は婚約者であるメリッサ公女さまに会えるのを楽しみにしてらしたんですよぉ~。」
ちょ~~~~~~っ!!!このかわいこちゃんは空気読まないなホントに!私が心の中で裏手ツッコミをしている間にフレデリックは顔が赤くなりコルネリスは不機嫌そうに腕組をした。
「コホン。まぁ公爵の言う通りせっかく同じ時期にアカデミーにいるのだから親睦を深めるようにしよう。今日はすこし感情的になってしまいすまなかった。機会があったらお茶でも飲もう。ではまたな。」
そういうとフレデリック皇子はマントを翻して去っていった。マリーはフレデリックのマントをつかんだままでにっこり笑って手を振って一緒に食堂を出て行った。
「なんなの?まったく!あんなかわいい子がいるならあの子と婚約すればいいじゃない!」
「本当だよな。ベタベタしてるのはあっちだろう!」
ついまた出てしまった心の声にコルネリスが相槌をうってきた。
仕方がないからもう思いっきり本音を垂れ流そう!
「せっかくアカデミーに入って錬金術を学べるのですから、わたくし一生結婚なんかしないで錬金術を研究したいですわ!」




