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宝物  作者: 夏雪
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このアトリエのオーナーは文化活動やその普及にとても熱意があり、市内在住の人に限り毎月第一と第三水曜日に無料でアトリエを開放している。

お金がない学生にとってはとてもありがたいことで、元々絵を観るのが好きなわたしは学校が終わると遊びにきては見学をしていた。そこで一枚の絵画と出会った。描き途中の泉の絵だった。樹々の間から覗く泉。水際には色鮮やかに蓮の花が彩り、陽に照らされて輝く水面が印象的な絵。言葉で表現することが出来ないほど、わたしはその絵に引き込まれた。

程なく、彼女が席に戻り作業を始めたのだが、作業が終わるのを見計らい彼女に話しかけ、紆余曲折を経て現在に至る。


わたしは彼女が好きだ。

彼女が創り出し、描き出す世界が好きだし、彼女の困ったような微笑みも好きになった。

くるくると少しパーマがかった、それでも艶のある黒髪も可愛いと思うし、絵を描いている所為か、少し病的なくらい白い肌も凄く魅力的だと思う。


月に二回の水曜日はわたしにとって、あの綺麗な絵の中に入り込むくらい夢のように楽しみな日になった。


やがて残暑が過ぎ、ようやく涼しくなってきた10月の第一水曜日、彼女はアトリエに姿を現さなかった。

連絡先は交換していなかったし、どうしたんだろうかと思うも、自分ではどうしようもない。

彼女が来ない水曜日が続き、今年はもう会えないのかなと思った12月の第三週、やっと彼女はアトリエに来た。何処となく、三か月前よりさらに痩せ細った印象を受けた。


「あんまり来ないもんだから、心配したよ! そんな痩せてちゃんと食べてるの?」


わたしが駆け寄りそう言うと、やっぱり彼女はたははと笑った。


「食べてる、食べてる。ちょっと用事でね、また田舎に帰ってたんだ。今日もすぐ帰らないといけないんだけど、君の連絡先知らないなと思って。ちょっと近くまで来たから、居たら聞こうと思ってね」


彼女からそんな申し出があるとは思っていなかったわたしは、ちょっとだけ連絡先を聞かれたことが嬉しかった。実際に会った時は積極的にコミュニケーションを取りにいくけれど、変なところで遠慮なくしちゃって、連絡先まではわたしからは聞けなかったのだ。

いいけどさー、しょうがないなーとか言いながら、鞄からノートを出し手早くメールアドレスと電話番号を書いて、彼女に手渡した。


「ありがとう、今日は急いでるからこれで帰るけど、絶対連絡するから」


彼女はそう言うと、アトリエから去っていく。本当に連絡先を聞くためだけに来たのかな。わたしは暖房が程よく効いた室内で、でも指先が中々に温まらなくて、手を擦りながら絵を見続けた。

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