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賢者ってなんだっけ?  作者: 木林森
8/11

昨日も来た、森の入り口に到着する。

今日の僕は一味違うぞ!

ボアが出ても、不意打ちじゃなければ何とか出来るだけの準備は整えてある。

後は自分がそれらの性能を引き出せるかが問題だ。

と、いつでもスリングを使えるように準備だけはしておこう。

射撃装置を展開、ついでに周囲の小石を拾っておく。

試し打ちにいきなりモンスターを狙って外すのは怖いので、木に向かって撃ってみよう。

小石をガイドレールに沿って、引く。

狙うのは正面の木の枝にしてみよう。

ツルを限界まで引き絞り…放つ!

石は残念ながら枝に当たらず、横に逸れていってしまう。

どうやら、石を放つ時に腕を振ってしまったのがいけなかった様だ。

なら、真っ直ぐ動かさずに…放つ!

カンッ!と甲高い音を当て、当たる。

ただし、狙っていたのとは別の枝だ。

むぅ、思ったより命中し難いか?

何度か練習しながら奥へと進んでみる。

ちょっと慣れてきたけど、命中し難いなぁ…。

そうだ!何度か練習したし、スキルが追加になってないだろうか。

仮想ウィンドウを呼び出し、確認してみる。

アレ?他にも追加されてる?



【ダッシュ】:1

【跳躍】:2

【情報記憶】:2

【探索】:3

【武具知識】:2

【武器修練:杖】:3 New!

【武器修練:槍】:3 New!

【武器修練:スリング】:3 New!

【回避】:2 New!

【料理】:2 New!

【命中精度】:2 New!



なんかいつの間にか幾つも増えてる!

ボーナスポイントもいつの間にか13ポイントまで増えてる。

確かレベルアップで2ポイント増えるはずだけど、あと1点は何で増えたんだろう?

思い当たるのはイベントかな?

とりあえず今度イベントをクリアした時に確認してみよう。

今は射撃の精度を上げたい…。

あぁ!でも武器の修練も気になる!どうしよう!



結局、武具修練3種と命中精度を取得。

ボーナスポイントは残り2になってしまったが、後悔は…多分しない!

と、言うか、後悔しても取得し直しは出来ないから仕方ない!

とにかくこれで命中精度が上がる筈だし、挑戦してみよう。

それにしても結構森の中を探っているけど、ウサギが見当たらない。

今回は道沿いじゃなく、少し道から離れた所を探っているのだが…。

むぅ。何か条件がそろわないと出てこないのだろうか。

ひょっとして、さっきから射撃練習をしていたから、音に怯えて逃げてしまったのだろうか。

もしそうなら、少しここから離れて、静かに捜索すれば見つかるかな?

ちょっとやってみよう。

ここは村から見れば南東方面になる。

村から伸びていた道は南に向かって進む道だったから…。

よし、東南東を目指してみよう。

大きな音を立てないように慎重に。

射撃練習はウサギを見つけてから、ウサギに向かって撃って行うとしよう。



居た!

音を立てない様気をつけて進む事5分程。

大して進んでは無い筈だが、1匹のウサギを発見する。

多分、前回と同じ脱兎だろう。

相対距離は20メートルくらいだろうか。

さっきまでの射撃練習で狙っていたのは10メートル程の距離までだ。

いきなりこんな距離で当てれるだろうか?

ええい!ままよ!試してみるしかない!

ガイドレールに沿って、石を引いていく。

ん?なんだろう?

スリングの射線上に赤い線が現れる。

向きを少し変えると、射線に合わせ線も動いている様だが。

もしかして射線を示すガイドだろうか?

それなら確かに命中精度は上がりそうだ。

そのまま赤い線がウサギに重なる様に、向きと角度を調整する。

…よし、後はさっきまでと同じように…。

腕を動かさず、石を掴む指だけを、放つ。

風切り音と共に撃ちだされた小石は赤い線をなぞる様に飛んで行き…!


ガツッ!


当たった!直撃だったぞ!

狙い違わず、ウサギの頭部に命中。ウサギは何の反応も無く倒れこむ。

倒したのかな?周りにまだいるかもしれないし、静かに近づいてみる。

…うん。間違いなく倒している。

と、言うか、威力の所為かお茶の間には見せられない程の状態になっている。

しかし、前回といい、今回といい、どうやら脱兎はHPがかなり低いみたいだ。

その分回避能力が高いとなっていたが、今回の様に不意打ちならいくら回避が高くても問題ないだろう。

とりあえずはこいつを剥ぎ取ってみて、また周囲を探索だ!

今回は…ウサギの足?


アイテム:【ラビット・フット】

種別:【装身具:護符】

重量:1

レア度:B

効果:???

備考:幸運のお守り。効果のほどははっきりしないが、持ち主に幸運を運ぶと言われている。


≪【鑑定】のスキルレベルが上昇しました!≫


お?ついでに【鑑定】もレベルが上がったようだ。

しかし、効果の方ははっきりしない。

まぁ、アクセサリーとして使用する様だし、ポーチの飾りに追加しておこう。

何か効果があれば、その内分かるだろう。

よし、周囲の探索を続けよう!



一言で言うと、失敗した。

あれから暫く進んだ先に、土壁があった。

その下部に幾つもの穴が穿たれており、僕はそれに不用意に近づいてしまったのだ。

いや、少し確信はあった。

現実の野兎のの中には穴を掘って暮らす、アナウサギと言う種類が居る。

その穴を発見した時そのウサギを思い出し、これが巣ではないかと思ったのだ。

当然、多くのウサギがいるだろうとは予測はしていたが…。


「流石にこれは、予想以上…だったかな…。」


肩で呼吸をしながら、独り言ちる。

穴からものすごい数の脱兎が飛び出て来たのは、確かにびっくりした。

しかし何よりもびっくりしたのは、そいつらがなぜか僕に突撃してきたことだ。

こいつ等、逃げるだけじゃなかったのか…。

盾とローブがあって良かった。

こいつ等の脚力はやはり尋常ではない。

単なる体当たりでもかなりの衝撃を感じる程だ。

ついでに、数が半端なかった。

渡されたカウンター替わりの宝石を確認する。

宝石に浮かぶ数字は87となっている。

1匹はココに来る前に倒した物だから、残り86匹をここで倒したことになる。


「ふぅ…さて…。」


呼吸を軽く整え、姿勢を正す。

一気に依頼達成したことを喜びたいが、まだそうも行かないらしい。

インフォがまだ出ていないのだ。

流石にこれだけ倒したのだから、レベルが一つくらいは上がる筈。

それが表示されないという事は、まだ戦闘は継続中と考えるべきだろう。

スタッフを構え直し、今度は慎重に巣穴に近づく。

巣穴まで、後5メートルほどになった所で、動きがあった。

巣穴から何かが飛び出て来たのだ。

とっさにスタッフで叩き落とそうとしたが、異常な光景に目を疑う。

僕が作ったこのスタッフは金属製には負けるが、かなりの硬度を誇る。

そのスタッフに、何かが貫通して突き刺さっている!

見れば、それは飛び出てきたウサギの額に生えている『角』だった。

脱兎を一回り大きくしたようなウサギの額には、ドリルの様な角が一本伸びていた。

体格に見合わない長さを持つその角の鋭さと硬さは、スタッフを貫通したことから容易く想像できる。

これに突かれたらひとたまりもない。

しかし今ならスタッフに貫通した所為で、こいつは身動きが取れない。

このまま地面に叩きつけて…。

と、思った所で巣穴から更に何かが飛び出て来ようとしているのが見えた。

僕はそのままスタッフを巣穴に向け押し込むように構える。

手前の角持ちを盾にする構えだ。

一瞬、怯んだ様に動きが止まった。


「ふっ!」


鋭く息を吐き、そのままスタッフの穂先で突く!

バキリッ!と変な音がして、スタッフの穂先がへし折れる。

先に角持ちの角が貫通していた分、薄い穂先の部分は衝撃に耐えられなかったようだ。

しかし、十二分にその役目は果たしてくれたと言えよう。

折れた刃先には別の角持ちの姿が見えた。

こちらの角は二本であり、その中央、眉間に突き刺さるように穂先が残されている。

こめかみの辺りから緩くカーブを描いて正面に向かって伸びる角。

その角は先の一角を槍に例えるなら、こちらは刀の様になっている。

角の外側に向かって薄くなっていく角は、切れ味も十分あった事が窺える。

それは二本の角の一本に刺さった一角の死体が物語っている。

突きこんだ際に、そのままその角に突き刺さったのだ。

そしてその際にもう片方の角で、一角の角がきれいに根元で切り落とされていた。

スタッフ<一角の角<二角の角の構図が頭に思い浮かぶ。

むぅ、これは恐ろしい。良くスタッフで受け止めていたものだ。

もし盾で受け止めていたら、盾ごと腕を貫通、下手したらそのまま体にまで刺さっていたかもしれない。

それに、一角を盾にした際に二角が怯んでくれたのも良かった。

この切れ味と貫通力じゃ、そのまま体当たりされたら一角とスタッフごと僕が切られるか、突かれていたかも知れない。


≪レベルアップしました!ステータス上昇を選択してください!≫


インフォも表示されたし、これで一応戦闘終了の様だ。

疲れた。本当に疲れた…。

とりあえず座り込んで、ステータスの操作を行う。

今回は器用値が上昇していたので、筋力値を上昇させておこう。


プレイヤー:【ステラ】

種族:【ヒューマン】

クラス:【セージ】

レベル:3 ↑New!

筋力値:13 ↑New!

器用値:11 ↑New!

敏捷値:12

体力値:11

知力値:27(内、クラス補正+3)

精神値:15

幸運値:12


≪【武器修練:槍】のスキルレベルが上昇しました!≫

≪【武器修練:杖】のスキルレベルが上昇しました!≫

≪【トレーニング】の効果により筋力値を使用する行動にボーナスが加算されます!≫

≪【トレーニング】の効果により体力値を使用する行動にボーナスが加算されます!≫

≪【脱兎】の【調査】が完了しました!≫

≪【再現】により、【エスケープ】が使用可能になりました!≫


流石にこれだけの戦闘をこなした後だと、インフォも長い。

そして、ようやくだ。

ようやく【調査】と【再現】のインフォが現れた!

内容も確認したいが、先に剥ぎ取りをしておかなくては。

そう言えば、さっきの角持ち2匹の【識別】をまだしていなかった。

先にしておいてから剥ぎ取らないと。


モンスター:【ホーン・ラビット】

レベル:4

種別:野獣

備考:森に棲む兎型の野獣。角を持つ個体で、オスの中でも個体として優れた者がこれになるという。小さな群れでは長になることもある。その角は鋭く、金属製の防具であっても注意しないと貫通することもある。


モンスター:【デュアルホーン・ラビット】

レベル:5

種別:野獣

備考:森に棲む兎型の野獣。二本の角を持つ個体。オスの中でもかなり優れた個体。殆どの群れではこの個体が長になる。角はかなり鋭く、金属製の防具でも注意が必要。


レベル5?ボアより上じゃないか!

これは今後かなり注意しておかないと。

さっきみたいに怯んでくれるならいいが、直接戦いたくはないな。

さて、では剥ぎ取りをやっていこうかな。

これだけ居ればかなり時間がかかりそうだ。



何とか、ほぼ全ての剥ぎ取りを終わらせた。

脱兎から手に入ったのは全て兎肉だった。

皮とか手に入らないかと少し期待したけど、一切出なかったな。

あのお守りも出なかったが、あれはレアアイテム扱いなのかな?

とにかく、後は角持ち2匹だけだ。


アイテム:【一角兎の角】

種別:【素材:角】

重量:1

レア度:B

効果:貫通性能+

備考:ホーン・ラビットの角。より大きく、鋭い物が貴重とされる。


アイテム:【一角兎の皮】

種別:【素材:皮】

重量:2

レア度:B

効果:―

備考:ホーン・ラビットの皮。追加効果は無いが加工がし易く、保温効果に優れる。


アイテム:【双角兎の角】

種別:【素材:角】

重量:3

レア度:B+

効果:切断性能+ 貫通性能+

備考:デュアルホーン・ラビットの角。より大きく、鋭い物が貴重とされる。


ホーンラビットからは皮、デュアルホーン・ラビットからは二本の角が取れた。

ホーンラビットの角は剥ぎ取りでは無く、さっき切り落とされていたのをそのまま拾ったのだ。

ふむ。こうやって戦闘中に取れた角なんかはそのまま手に入るのかな?

まぁ、手に入ったのは良いことだ。

ずいぶんと重くなった袋を担ぎ上げ、時計を確認する。

時刻は10時40分。

ちょっと早いが、村に帰ろう。

思ったより早く依頼数に到達したし、何よりスタッフが壊れたこの状態で戦闘は避けたい。

帰りの方角を確認しようとコンパスを見る。


「えっと、村の方角は…!」


一瞬、コンパスに何かの影が映ったような気がした。

同時に言いようのない恐怖を感じて後方へ飛ぶ。

ほぼ同時に、それは起こった。

雨、いや、マシンガンの様な轟音と共に、僕が居た位置に飛来する何か。

これは…角?

先の一角兎の角の様な物が地面に多数刺さっている。

え?なにこれ?

視線を上へ向けると、巨大なモンスターが降りて来る瞬間だった。

重い地響きを立て地面に降り立ったそいつを一言で言えば、異様。

巨大な体は肉食獣の様だ。

しかし、頭部は角の様な物で埋め尽くされ、顔を伺い知ることは出来ない。

頭部以外を見るならネコ科の猛獣を彷彿とさせる。

辛うじて見える口腔内には多数の牙が並んでいる。

その姿は明らかに捕食者のそれだ。

その吐息は何かのガスを含んでいるのか、緑色に見える。

こいつは一体?


モンスター:【ミューテーション・ラビット】

レベル:8

種別:魔獣

備考:森に棲む兎型の野獣だった者。突然変異により魔獣化した種。兎の群れで稀に長として発見されることがある。主な攻撃方法は体毛を変質させて撃ちだす弾角と言われる特殊な角。


いやいやいや!これはウサギじゃないでしょ?!

これがウサギならライオンですら子猫と表記されてもおかしくない!

て言うか、この状況、かなり拙くないか?

明らかにこちらに対して敵対状態にしか見えない。

え?ひょっとして、今のウサギの群れの長でしたか?

え、えっと。どうしよう。

彼我の距離は15メートルほど。

僕の後方には巣穴があった土壁。

左右にはよく見れば他のウサギが集まり、逃げ道を塞いでいる。

こいつも今まで見たのとは違うが、まだウサギらしい見た目をしている。


モンスター:【ディグ・ラビット】

レベル:2

種別:野獣

備考:森に棲む兎型の野獣。穴を掘ることに特化した兎。メスのみがこの種に変じるという。大きな爪と前足は穴を掘る以外にも、狩りの際には武器にもなる。


レベル的にも見た目的にも、こちらはまだ何とかなりそうだ。

問題はこのウサギの名前を冠するバケモノだ。

今は威嚇なのか、唸るだけで何もしてきていないが…。

どうする?逃げるにも、他のウサギの相手をしている間にあの角で蜂の巣にされるのがオチだ。

かと言って、武器も壊れた状態であれに勝てるとも思えない。

八方塞がりだ。動くに動けない。

何か、何か手はないか?!

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