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事務所兼休憩室になっている部屋で、初期配布されたアイテムにあった携帯食を食べながらステータスを確認する。
スキルを習得できる事を思い出したからだ。
何か、この作業に役立つスキルは無いかな?
スキルを習得するにはボーナスポイントを使用するらしい。
ボーナスポイントはレベルアップや依頼をこなせば貰える。
まだ僕はレベルアップしてないけど、初期ボーナスとして15ポイントは持ってる。
これで少しは作業がし易くなるスキルが取れればいいんだけど。
【木工】:3 New!
【ダッシュ】:1 New!
【跳躍】:2 New!
【情報記憶】:2
【探索】:3
【トレーニング】:2
【武具知識】:2
あれ?早速新しいスキルが増えてる?
確か、プレイヤーの行動によって習得できるスキルが増えるんだっけ?
【木工】は多分、今作業をしていたからだろう。
ダッシュと跳躍は?
ひょっとして、ログインしたばかりの時に走り回ったからかな?
そんなに走ってないし、飛び跳ねたりしたわけではないんだけどな。
まぁ、いくつかスキルを確認して、習得してみようかな?
【木工】New!
必要ボーナスポイント:3
発動条件:常時
効果:種別が『アイテム:素材・木材』であるアイテムを加工する際に、スキルのレベルに応じてボーナスが加算される。
【トレーニング】
必要ボーナスポイント:2
発動条件:常時
効果:ステータス値を使用する行動を行った際、その回数に応じて各ステータスを使用する行動にボーナスが加算される。
うん。これで良いかな?
とりあえず、これでボーナスポイントは5ポイント使用した。
残りは10ポイント。
他にも取ろうかとも思ったけど、他に取れるスキルが出た時ポイントが足りないのは嫌だ。
とりあえずはこれでやってみよう。
確認すると、休憩を取り始めて約1時間になっていた。
これはいけない!
急いで作業場に戻って作業を再開しよう!
≪【木工】のスキルレベルが上昇しました!≫
≪【トレーニング】の効果により器用値を使用する行動にボーナスが加算されます!≫
作業に戻って、二本目の杖を完成させると、インフォが表示される。
早速レベルアップってのはうれしいね!
それに、【木工】は早速効果があった。
最初に作り始めた時の様な違和感を感じなくなったのだ。
これで結構時間が短縮されてる気がする。
更にこれでレベルアップまでしてるのだ。
どこまで早くなったか楽しみだ。
≪【木工】のスキルレベルが上昇しました!≫
≪【トレーニング】の効果により器用値を使用する行動にボーナスが加算されます!≫
≪【トレーニング】の効果により精神値を使用する行動にボーナスが加算されます!≫
む?もう次のレベルアップ?
インフォの表示を確認しながらちょっと体を伸ばす。
パキパキっと背骨が伸びる音が心地いい。
横にちょっと目を向ければ六本ほど新たに作った杖が置いてある。
時間を確認すると、明らかに最初と比べれば短い時間で出来ている!
効果がはっきりわかると遣り甲斐があるよね!
問題があるとしたら…。
「ほぉう…。やるねぇ、嬢ちゃん。」
「思ってたより上達がはえぇな。」
「うちにスカウトしちまうか?」
後ろでいつの間にか見学していた職人さんの目線が気になることだけだ。
「え、えっとー…。どうかしましたか?」
おずおずと後ろの皆さんに声を掛ける。
すると、皆さん一瞬キョトンとした後、笑い始めた。
「嬢ちゃん、今日の今日の業務時間はおしまいだよ。」
…え?
言われて周りをよく見れば、光源はいつの間にか日光からランタンに変わっていた。
空は赤くなっており、太陽は半分以上山裾に引っ込んでいる。
「本当はもっと早くに言うつもりだったんだがねぇ。」
「あんまり集中してるし、見事な手際だったんでな。」
がははっと豪快に笑いながら職人さん達は言う。
えー…。
確かに調子良く出来てたから集中してやってはいたんだけど…。
「お、えーと、ステラちゃんだったね。ご苦労様。」
事務所からローダさんが出てきながら、会話に加わる。
「お、思ってたより結構出来てるね。」
「そうなんだよ。見事な手際でさ。」
「いっそ、ココで雇ってもらいたいくらいだよ。」
笑いながら、僕のやった作業を確認している。
僕としてはちょっと釈然としない気持ちがある。
まだ渡された半分も作業は出来てない。
それでもローダさんは『思ってたより結構出来てる。』と言った。
つまり、出来なくても当たり前と思われてた訳だ。
むぅ、コレはちょっと悔しい。
「そうだ、ステラちゃん。晩御飯は何か予定はあるのかい?」
ローダさんが何かに気づいたように声を掛けてくれる。
「いえ、特にはないですが?」
「そっか、じゃあよかったら、皆と一緒に食べに行かないかい?」
「心配せんでも今日はワシらが奢ってやろう。」
職人さん達はさっきまでの鬼気迫る顔がウソのように、笑顔を浮かべている。
ふむ、ゲームの世界の食事は気になる。
さっきの携帯食はあんまり美味しくなかったし、マトモな食事はしておきたい。
「そうですね。じゃあ、よろしくお願いします。」
「おぅ、そうこなくちゃな!」
笑い合いながら、加工所から出て行こうとする皆に、「1つだけ訂正を」と声をかける。
「僕は女の子じゃなくて、男です。」
「いやぁ、すまないねぇ。てっきり、女の子かと…。」
苦笑を浮かべながら、皆が口々に謝罪してくる。
まぁ、怒ってはいないんだけど、やっぱり気分は良くない。
場所は木材加工所の近くにあった酒場のような店だ。
酒場と言うか、飲み屋と言った方がいいかも知れない。
店自体の広さはソコソコあり、2、30人くらいなら客は入れそうな作りになっている。
奥の方にはカウンター席があり、それを取り囲むようにテーブル席が幾つかあるような作りだ。
僕たちはそのテーブル席の2つに別れて座って、注文を店員さんに伝える。
僕が頼んだのは親子丼だ。
どんな味なのか今から楽しみだ。
少し雑談をしていたら早速皆に食事が届く。
僕の親子丼も届いたのだが、もう少しボリュームが欲しかったかも。
まぁ、美味しかったから問題ないけど。
食べながら皆の雑談に耳を傾ける。
給料がもっと欲しいとか、今の忙しさがちょっと落ち着けばどっかに出掛けたいとか。
普通の、人間らしい会話だ。
本当にゲームの中とは思えない出来だと思う。
そんな中、ふとローダさんが「そういえば」と何かを差し出してくる。
渡されたのは書類だ。
「こいつをギルドに出せば今回の報酬金がもらえるよ。」
あぁ、コレはギルドへの報告書なのか。
内容を見てみると、ちょっと報酬が上乗せされてる?
「あぁ、思ってたより頑張ってくれたからな。ちょっと上乗せさせてもらってるよ。」
「良かったらまた来てくれや。嬢ちゃん…じゃなかった、お前さんみたいな若いのが居ると、活気が出ていい。」
ローダさんの言葉に、職人さんが次いで言ってくれる。
僕は「是非そうさせてもらいます」と答える。
あんまり出来てないのに報酬まで上乗せしてもらってるのだ。
次は渡された材料全部仕上げてみせる!
その後、皆さんと礼を交わし、ギルドに顔を出す。
報酬もだが、宿もココなのだ。
ログアウトも一度しておかないと、看護婦さん達に心配をかけてしまうかもしれないからな。
ギルドの窓口にいた受付嬢に報告書を渡す。
渡された報酬は150G。
追加で30G手に入ったわけだ。
うん、こういうの嬉しいな。
安定して収入があるのもいいけど、頑張れば頑張っただけ報酬があるってのは気分もいい。
そのまま、宿のチェックインを済ます。
冒険者はギルドの宿は無料で使える。
まぁ、その分部屋はカプセルホテルみたいなもんだったけど。
まぁ、とりあえずはログアウトさえ出来れば問題ないんだ。
まだ1日目だけど、中々充実していたと思う。
明日はどんな事をしようかな。
メニューバーからログアウトを選択しながら、そんな事を考えていた。
ログインしたのは翌日の6時だ。
もう少し早くログインしたかったのだが、検査が思ったより長引いてしまったのだ。
流石に1日で劇的に変わるわけではないが、結構いい結果だったらしい。
こっちの方も今後が楽しみだ。
さて、今日は何をしようかな。
とりあえず、朝食を食べないとな。
ギルドの販売所でオニギリを発見し、購入する。
料金は5G。昨日の稼ぎに対して、ちょっとお高く感じてしまう。
まぁ、最初の依頼じゃ、こんなもんなんだろうけど。
早速、近くのソファーに座って、食べてしまう。
量は少ないが、朝食ならこんなもんだろう。
ふと、隣の装備の販売所を見てみる。
昨日自分が作っていた【オークの杖】の値段が気になったのだ。
一本80G?
…高い!
在庫が少ないとは言え、この値段はあまりに高いと思う。
むぅ、これ位なら自分で作ったほうが安上がりに…。
…そうだ。それがいい。
せっかく、木工所でお世話になって、【木工】のスキルも取ったんだ。
80Gも払うくらいなら自作しよう。
それに、自作なら自分用にカスタマイズしちゃおう。
この【オークの杖】じゃ、僕にはちょっと短い。
どうせならちょっと長くして、使いやすくしちゃおう。
そうと決まれば、まずは木材調達だな。
森で採ってきてもいいけど、せっかくだし、専門の人にも話を聞きたい。
木工所に行って、木材を売ってもらえないか聞いてこよう。
早速、木工所に来たわけだが…。
昨日の帰りは皆ニコニコしてたので失念していた。
今は皆、鬼気迫る様相で仕事に打ち込んでいる。
むぅ、声を掛けにくい。
「…おや?早速今日も来てくれたのかい?」
ふと顔を上げたローダさんが、こちらに気付く。
その声に、職人さん達が顔を上げる。
鬼気迫る様相は変わらないが、心なしか表情が和らぐ。
「あ、いえ。すいません、今回は依頼じゃないんですが…。」
そう言うと、「おや、それは残念」と、ローダさんは肩をすくめる。
他の職人さんもちょっと残念そうな表情で、仕事に戻っていく。
なんか申し訳ないので、明日はココに手伝いに来るようにしよう。
「今回は、木材を良かったら少し買い取りたいのと、ちょっと相談があって来ました。」
「相談?」
僕は簡潔にココに来た理由を説明する。
ローダさんは、在庫が少ない、という話は聞いていたが、そこまで値段が跳ね上がっているとは思っていなかったらしい。
普段なら、【オークの杖】一本が20Gくらいの値段なんだそうだ。
それがそこまで値が上がるほど在庫不足。
「もっと作って卸さなきゃダメか…。」
難しい顔をして呟くその言葉に、近くの職人さんがビクッと体を震わせていた。
「まぁ、自分で杖を作りたいのは分かったが、どんな形にしたいんだい?長さとか、形状とか。それによっちゃ、木材も大きさを変えなきゃいかんが。」
ローダさんは木材の在庫を確認しながら尋ねてくる。
そこは僕も悩んでいる。
長くはしたい。出来れば1メートル50センチほどあれば完璧だろう。
短いと小回りは効くが、僕の筋力値では打撃力に不安が残る。
それを補うために、打撃部を長く取って、遠心力で威力を増そうと考えてるのだ。
しかし、後のことはあんまり考えてない。
どうにかして、足りないステータスを補う形にしたい所だ。
とりあえずという事で、大きめの木材を3本譲ってもらった。
コレで他のと同じ杖を作れば6本くらい作れるだろうか。
でもコレで45Gしか掛かってないのだ。
加工前の木材とは言え、安上がりに済んだのは有難い。
但し、コレで同じ【オークの杖】を作って売らないように念を押されてしまった。
市場に出す場合、市場価格として適正な値段を付けなければいけない。
木材を安く得て、それを安く売ればその場は儲けるかもしれない。
しかし、そうなると既に売っている販売所はその分赤字になる。
それに伴って、木材や加工品を買い取ってもらえなくなれば、木工所は赤字になってしまう。
…まぁ、要は、適正価格が分からないうちは個人で売買しない方がよいって事だ。
まぁ、元より売るつもりはない。
自身の武器を作りたいだけなのだから。
加工するのに、昨日使わせてもらった作業場を借りれる事になったので、早速始めていこう。
さて、どんな形にしようかな?
≪【木工】のスキルレベルが上昇しました!≫
≪【トレーニング】の効果により器用値を使用する行動にボーナスが加算されます!≫
よし、一応形にはなったかな?
出来はどんな感じになったかな?
アイテム:【オーク・スタッフ+】
種別:【武器:長杖・斧槍】
重量:4
効果:攻撃力+5 魔法適正+1
備考:樫の木を使った長杖。相応に硬く、武器としても優秀である。先端部分を改良してあり、斧槍としても使用できる。また、魔法発動に適性がある。
うん、ちょっと重たいけど、使えそうな感じに仕上がったかな。
基本は杖を長くした作りにしてあるが、先端部分をちょっと改良した。
説明文では斧槍となっているが、イメージ的には薙刀に近いかもしれない。
幅広の板を加工して、先端全体をカバーするような形でブレード部分を作っている。
勿論、木製であるので切れ味は望むべくもないが、その重量で打突するには十分だろう。
先の部分は更に加工して、結構鋭くしてあるので、突きにも対応可能。
その分、先端が重くなるので、扱いやすくするため、杖の中間あたりを握りやすく加工してある。
「ほぅ、こりゃ、変わった形に仕上げたね。」
後ろを見ると、ローダさんが様子を見にきていた。
僕が仕上げた杖がどんな風になるのか気になってたみたいだ。
暫く杖の様子を確認してたが、「ちょっと待ってな」と、奥に杖を持っていく。
どうしたんだろうか?
少しすると、杖を持ってローダさんが戻ってくる。
「お待たせ。ちょっと仕上げを手伝ってみたが、どうかな?」
戻ってきた杖はちょっと色合いが変わっていた。
ニスを塗ったような照りが見られ、色合いも元々の木材の色より濃くなっている。
でもニスにしては既に乾いているようだし、触った感じもサラサラしている。
持ち手の所にはサラシの様な布を巻いており、滑りにくくしてある。
「本来、木刀なんかにする加工なんだがね。知り合いの錬金術士から譲ってもらった、木材の強度を増す触媒に漬けてみたよ。コレで、かなり強度はあがってるはずだ。」
流石に鉄には負けるだろうがね、と、ローダさんは付け加える。
渡された杖を再び【鑑定】してみる。
アイテム:【オーク・スタッフ++】
種別:【武器:長杖・斧槍】
重量:4
効果:攻撃力+6 魔法適正+1
備考:樫の木を使った長杖。錬金術の触媒により硬く加工されている。武器としても使用でき、先端部分を改良してあり、斧槍としても使用できる。また、魔法発動に適性がある。
ちょっとだけだが、攻撃力も増している!
これは有難い。
しかし、加工をしてもらってなんだが、この加工にいくらかかるんだろう。
値段が高くなったら、安く仕上げるために自作した意味がなくなってしまう。
「いや、この加工のお代は要らないよ。代わりと言っちゃなんだが、この杖と同じデザインの杖を幾つか作らせてもらえないかな?コレは結構面白そうだから、売れると思うんだ。」
ローダさんはいつになく饒舌に、この杖の面白さを語っている。
まぁ、加工がタダになるなら有難いし、問題ない。
後は実戦でどれくらい使えるかだ。
時間は昼過ぎ。昼ご飯を食べたら、早速森に試し切りに行ってみよう。




