もしかして、婿候補登場ですか!?
どうやら我が家である牧場は、山の中腹辺りにあるらしい。
その牧場から山を登って、温泉の手前の大岩までは約十分。
そこから約二十分登ると、たけのこや食べられる野草の群生地があって、更に約三十分ほど登ると小さな湖と滝があり、その滝の裏に鉱石場があった。
頂上までは、そこから約一時間である。
これが、あの後の散策でわかった事。
全部に"約"がつくのは、野性動物を発見して眺めたり、たけのこや野草を採ったりしてた時間を除いて考えているせいである。
それらを加えると、もっと時間は長くなる。
ちなみに、子供達の話によると、王都から牧場までは約二時間くらいで、途中に綺麗な花畑があったらしい。
王都は勿論、その花畑にも近いうちに行ってみたいと思う。
でもとりあえずは、GETしたたけのこや野草で今日の食事を作らなきゃね。
食材がこれだけだから、ちょっと品数が寂しいけど……。
「……あれ、トゥーハ様。牧場に、誰かいますよ?」
「えっ?」
山から牧場に帰ってくると、ティアラちゃんが正面を見ながらそう言った。
その視線を辿ってみると、確かに、家の前に人がいるのが見える。
茶色の髪の……男性だろうか?
背が高い。
「ああ、お戻りですね。良かった、お留守だったのでどうしようかと。お帰りなさいませ、神子様」
こちらに気づいた男性は、にこやかに笑って近づいてきた。
神子様。
その呼び方をするという事は、神殿の関係者なんだろうか?
でもピカンシルさんは、まだ誰かが訪ねてくるような事は言ってなかったし……。
「……あの……どなた、ですか?」
一歩前に出て、子供達を背後に隠しながらも私は意識して笑顔を作り、そう尋ねた。
すると男性は慌てたように再び口を開く。
「あ、いえ、俺、いや自分は怪しい者ではございません! そんなに警戒なさらないで下さい。自分は王都で神殿騎士を務める、ソーヤ・デシマンと申します」
「……神殿騎士、様? 神殿からは先刻、大神官のピカンシル様方がいらっしゃいましたが……?」
「あ、はい。そのピカンシル様からの命を受けて参りました。神子様のお住まいは、どうやら牧場らしいという事が先刻の来訪で知れたので、ならば収穫物を受け取りそれらを商店に卸す者が必要だろうと、実家が商家であり商売に明るい自分が選ばれましたので、まずは、ご挨拶にと思いまして」
「えっ?」
収穫物を受け取り商店に卸す?
それって、あのゲームでいうと、出荷業者?
「し、神殿騎士様が、そんな事をなさるんですか……? 他に誰か、い、一般の業者さんは……?」
「いえ、ここは大切な神子様のお住まいですから、迂闊に一般人を入れる訳には参りません。女神様の懸念事項である子供達は別ですが」
「えっ、で、でも、神殿騎士様がそんな事……」
「はは、確かに自分は神殿騎士ですが、だからこそ、このお役目を命じられた事は光栄に思っておりますよ。何しろ神子様のお役に立てるのですから。他の者に羨ましがられました。実家が商家だった事をこれ程感謝した事はございません。ああ、他にも、生活面での困り事についても相談を受けるよう命じられていますので、何かあればどうぞご相談下さいませ」
「え……わ、わかり、ました。そういう事なら……はい。甘えさせて戴きます……」
「はい、是非どうぞ。……ところで、本日出荷なさる物はございますか?」
「あっ。えと、はい、じゃあ……!」
神殿騎士様、ソーヤ様の言葉にハッとすると、私は慌てて今採ってきたばかりのたけのこや野草のいくつかをソーヤ様に渡した。
ソーヤ様は『山の恵みですね、確かにお受け取り致しました。では、明日また同じ時間に参ります』と言って頭を下げると、帰って行った。
私はその後ろ姿を呆然と見送っていたけれど、彼の姿が見えなくなった頃、ふと我に返る。
……あれ、出荷業者兼相談役って、関わり深い人物って事だよね?
てことはソーヤ様って……もしかして、一人目の婿候補だったりする!?
うわぁ、きらきらエフェクトや会話画面の表示がないからうっかりしちゃったよ!
婿候補ならもっとそれなりの対応したかったのにぃ!
……やっぱり好感度上げには、毎日のプレゼントは欠かせないのかな……?
よし、明日はとりあえずたけのこをプレゼントしよう!
ああ、それと早く街にも行かなきゃ!
他の婿候補にも会って、ターゲットを決めないとね!




