お手伝いと散策と……岩
「じゃあ私は畑を耕さなきゃならないから、作業に戻るね。皆は遊んできて? あ、でも遠くには行かないでね?」
「「「「 えっ? 」」」」
「ん? どうかした?」
「い、いえ、あの……トゥーハ様、俺達は、何をすれば……?」
「え? 何を、って? 遊んでおいでよ、四人で。山があるから、散歩とかどう? きっと虫とか、可愛い動物とかがいるよ?」
「え……」
「行ってらっしゃい。気をつけてね?」
そう言うと、私はクワを手に取り、作業に意識を集中させた。
うぅ、クワ重い……これは想像以上に大変だなぁ。
よたよたとクワを振り上げては振り下ろして、ゆっくりながらも畑を耕していく。
そして、なんとか所持している種の数だけ畑を耕し終えるとクワを地面に刺し、ふぅ、と息を吐きながら腕で額の汗を拭った。
その時、ふと視線を感じて顔を上げると、何故か四人がまだ立ち尽くしていた。
その位置から察するに、あれから一歩も動いていない。
「み、皆……? どうかした?」
刺したクワをそのままに、私は四人の元へと近づいて、声をかける。
「……あ、あの……。……俺達、何を、したら……」
「へっ!?」
な、何を、したら?
え、何でさっきと同じ質問を……って、え?
も、もしかして、遊びに行くって選択は、四人の中にはないの?
この世界の……貧困者の子供って、親の手伝いか、もしくはアルバイト的な仕事をやってて、遊ぶなんて事はないとか?
だから遊び方を知らず、困ってただ立ち尽くしてるとか……!?
「え、えっと……う~ん。……な、なら、あの、そこの種、手分けして畑に蒔いて貰ってもいいかな? かぶとじゃがいもときゅうりとキャベツで、ちょうど四種類あるし。私は、水やりをするから」
「あ……! は、はい!」
「これですね? わかりました……!」
「じゃあ、私、この種蒔きます……」
「……俺は、これ」
「ん、じゃあ、よろしくね? ありがとう、四人とも。助かるよ」
種が入った袋をそれぞれ持ち、四人は畑へと移動を開始した。
う~ん……遊んでおいでと言っても動かなかったのに、お手伝いを頼めば動く子供、かぁ……。
暇を見て、少しずつ遊びを教えよう……。
お手伝いをしてくれるのは嬉しいけど、子供は子供らしく、無邪気に遊んで貰いたいしね。
とりあえずはこの後皆で山へ行って、食材をGETしながら動物とか虫とか花とかを愛でようかな。
あ、温泉も見つけないと。
それと、きっと鉱石場もあるはずだから、それも。
牧場が軌道に乗るまでは、鉱石類は重要な収入源だもんね。
☆ ★ ☆ ★ ☆
「え……? な、何、これ……」
嘘でしょう?
ねえ、誰か、嘘だと言って。
現在、私の目に映るのは、空へと立ち上る真っ白な湯気と、その湯気のもとへと延びる道の上にど~んと鎮座し、その存在を主張する、大岩。
はい、その大岩に道が塞がれていて、通れません。
あの湯気から察するに、この先に温泉があるはずなのに!
そう思い憎々しげに大岩を睨み付けると、大岩の表面に何やら文字らしきものが刻んである事に気づく。
それは見たことのないものだったけど、私は何故か読む事ができた。
大岩にはこう書かれてある。
"汝が引き取った子供が累計で十人に達した時、我はここから立ち退かん"。
「なっ……こ、これは、何? 子供があと六人増えないと温泉に入れないって事……? ……何よそれ……冗っ談でしょお!?」
子供があと六人。
一体それは、いつになるのか。
子供が四人いるだけでも狭いあの家に、あと六人も住むなど不可能だ。
累計で、とは書いてあるが、この四人が独立して我が家から巣立つにはあと数年はかかる。
つまり、家の増築をしなければとても六人も引き取れないし、かかる食費などの問題もある。
それらを全て解決するまでお風呂に入れない……!?
ふ……ふふ、さすが、あの牧場経営ゲームそのままの生活。
確かにあのゲームには、道が岩で塞がれてて、物語を進めないと通れないという場所はあったよ。
あった、けど……っ!!
「温泉はっ、温泉はやめてよぉぉぉ…………っ!!!」
「……あ、あの……トゥーハ様……? どうしたん……ですか……?」
「どうしたもこうしたも! って、え……あっ……!」
ふいにかけられた声に勢いで返事をしながら振り返ると、そこにはあまりのショックに一瞬その存在を忘れていた子供達の姿があった。
い、いけないいけない。
子供達からしたら、今の私は岩を前に突然大声を出して嘆きだした変な人だ。
こういうのは、これから信頼関係を築くにはマイナス要素だ、自重しよう。
「な、何でもないの! ごめんねっ。さあ、山の散策を続けようか!」
私は慌てて取り繕うと、子供達を促してその場を後にした。
……増築だ、急いでお金貯めてお風呂を増築しよう。
家を大きくするとかは二の次でいい、とにかく急ぎお風呂だけつけよう。
当面の目標をそう定めながら、私は子供達と共に散策という名の食材探しを進めていったのだった。




