初めての名づけと挨拶
一団の姿が見えなくなると、私は固い表情で佇んでいる四人へと向き直った。
「さて。初めまして皆。私は、えっと、ソウカ・ヒビノよ。なんと十五歳! よろしくねっ?」
「は、初めまして、チョーカ・フィフィノ様。私は」
「えっ! ま、待って? チョーカ・フィフィノじゃなくて、ソウカ・ヒビノだよ」
「フォ、フォーカ・フィピニョ様」
「ちょっと違うかな、ソウカ・ヒビノだよ」
「ト、トゥーカ・ピピノ様……」
「う~ん、惜しい。ソウカ・ヒビノね」
「……ツィ、ツィーハ・フェキチョさ……。……み、神子様」
「えっ?」
「神子様……」
「…………」
数回の訂正のあと、女の子は神子様と呼んで俯き、沈黙してしまった。
わ、私自身は正直、神子のつもりはないから、これから一緒に生活する子までその呼び方で呼ぶのはやめて欲しいんだけど……。
う~ん、私の名前、この世界の人には発音しづらいのかな?
これから子供達を引き取る度、このやり取りをして、結局呼べずに困らせるのは可哀想だよね……。
………………。
……ええい、いいや!
どうせ私は一度ぽっくり逝ってこの世界に来たんだから、生まれ直したつもりで改名しちゃえ!!
う~んと、さっきまでのやり取りで、この子達が呼べそうな名前、呼べそうな名前……。
「……よし! 私はトゥーハ・フィピーノ! ね、呼んでみて?」
「……え……トゥ、トゥーハ・フィピーノ様?」
「……!! うん、そう! 私はトゥーハ・フィピーノ! よろしくねっ!」
「は、はい。……えっと、あの、私は、ラヴィーリです。十歳です。よろしくお願いします」
「ラヴィーリちゃん、だね? 可愛い名前だね!」
自己紹介をしてペコリと頭を下げたラヴィーリちゃんは、ふんわりしたピンクブロンドの髪に紫の瞳の、可愛い女の子だ。
そんなラヴィーリちゃんが下げていた頭を上げるのとほぼ同時、隣にいた女の子が軽く身じろぎして、背筋を伸ばした。
「トゥ、トゥーハ・フィピーノ様。私はティアラ、十一歳です。よろしくお願いします」
「うん、ティアラちゃんだね! よろしくね!」
ラヴィーリちゃんと同じく、名前と歳を告げてペコリと頭を下げたティアラちゃんは、さらさらの金髪に青い瞳の美人さんだ。
けれど二人のどちらも髪に艶などなく、頬にも丸みがなく痩せこけている。
そしてそれは男の子二人も同様で…………。
こんなに痩せた子供、日本では見たことがない。
闇市にいたって事だったし、きっと売られる寸前だったんだろうな……。
……これからは、一日三食しっかり食べさせてあげなきゃね。
そして、何の心配もない、穏やかな生活をさせてあげるんだ。
今は固い表情をしたこの子達が、ちゃんと子供らしく、無邪気に笑ってくれるように、頑張らないと。
それが、あの女性、女神のお願いを聞くことにした私の責任であり、役目なんだから。
「……さて。それじゃ、貴方達の名前、決めなきゃね。ないと不便だし」
私は決意を新たに、一度深呼吸をすると、そういいながら男の子二人に向き直った。
男の子は、一人がくせのある鮮やかな赤髪に翠の瞳で、もう一人が、柔らかそうな銀髪に深い紺の瞳の子だ。
私は男の子達をじっと見て、真面目に名前を考える。
「……う~ん……う~ん…………うん、よし……決めた! 貴方がレードックで、貴方がシュロールス! で、どうかなっ?」
「レードック……?」
「シュロールス……」
「うん、そう。どうかな? 気に入らないなら、もう一度考えるけど……」
「……いえ、それでいいです。ありがとうございます」
「……俺も。いいです」
「そ、そう……良かった! じゃあ、これからよろしくね! レードック君! シュロールス君!」
一度で出されたOKに、私はホッと胸を撫で下ろした。
赤髪の子がレードック君、銀髪の子がシュロールス君。
そして、ラヴィーリちゃんとティアラちゃん。
この四人の子供達と共に、この世界での新しい生活が、スタートするんだ!
よぉーしっ、頑張るぞ~~!!




