ファイナル・アイドル・オーバーキル!Part3
⑮
「ィイィィィヤッハァー!」
それは、〝あっちこっちランチ〟というランチタイムの生放送プログラムにおいて、初っ端から響き渡った叫び。
オシャレOLに人気の小洒落たランチメニューを紹介する番組だったが、映像が始まってすぐさま、酒瓶片手に勝手に盛り上がる女が登場し、景気よく酒を煽り、この上ない愉快さで、聞き取り不能な言葉を早口で捲くし立て、お茶の間に不快感を拡散した。映像が乱れてからは。ひたすらその女の笑い声が響くだけ。
ほぼ同時刻。昼休みの小学校に、少女聖歌隊と銘打ったヒロインクラスの年少メンバーたちがサプライズ訪問して、パフォーマンスを披露するというイベントがあったのだが、その時が訪れて現れたのは、黒いビキニ姿の羊頭。
正にサプライズであり、それは聖歌隊の垂れ幕やポスターを黒く塗り潰した後、小学校に呪詛を撒き散らし、子どもたちが泣き叫ぶのを背に、煙幕の中消えていった。尚、少女聖歌隊とやらは待機室に閉じ込められていた模様。
昼下がりになり、街角のイベントスペースで、アフタヌーン美熟女コンテストなる、どうでもいい催しが開催されており、自身の美貌を信じて疑わないフォーティオーバーやフィフティオーバー中年女性が、年甲斐も無く脚を出したりヘソを出したりなど無理をして競い合っている。
そんな彼女らに、「どいつもこいつもただのババア」と評価を下した、サーティオーバーの若作りの女。一体いつから審査員席に紛れ込んだのか、あまりにも堂々と居座っていたため、関係者もしばらく気が付かなかった。
彼女は出演者たちをひとしきり罵り終えて、セキュリティが呼ばれたのに気が付くと、軽快な足取りで去って行った。
そして夜。路上に突如ノイズが湧き上がった。四人の女が、叫んだり唸ったり。突然湧いた彼女らに、夜の平穏を乱された通行人たちはもちろん不愉快になり、罵声と怒声を上げ、そんな声もまた混ざり合って、より一層のノイズになった。
このところ、連日そのような事態が所々で勃発している。ニュースでも取り上げられ、アイドル・テロルなる名称で呼ばれるようになっていた。ランコ、ハデス、ライム、モモヨの顔もしっかりと放送され、人々はその顔を引き裂いてやりたいと思うようになる。
あの腐った連中を吊し上げろ!
そんな雰囲気が滲み始めた、管制都市東京。
連日の非常事態を受けて、アイラは天上の我真エイリの許へ足を運んでいた。お決まりの暗室で、独り言を呟く体での報告。
「新世代会館でのイベント時に、衣装の盗難十五点。スピーカー等機材の盗難五点。その後、生放送の乱入は八件。イベント乱入が五件。夜中にゲリラパフォーマンスが十件。怒った通行人による器物破損は無数。あと、前回イベント時に放逐されたネズミやコウモリが上層で繁殖し始めてますね……」
(……)
報告は終わるも返事は無い。アイラはただエイリの言葉を待ち続ける。
「ふふ……」
「!」
いつもスピーカー越しに聞こえていたエイリの声が、背後からダイレクトに届き、アイラは驚愕して振り返った。
「エイリ……さん?」
やはり暗がりで、我真エイリの全身は見えていない。だが、そこに立っていることは確実に分かる。暗闇の中でも一際な存在感。
「してやられている……というわけね」
「はい」
驚きはひとまず抑え、冷静さを取り戻す。
「対応はどうしてるの?」
「現在、彼女らを一斉に駆逐する計画を進めています。しかし、リアルタイムでの対応はこれといってしていません」
「好きにされてるというわけ?」
「いえ、好きにさせています」
アイラに負い目は無かった。ランコたちに現在進行形で好きにさせている事も、後の計画の一部であると態度で語る。その意はエイリにも伝わった。
「純恋ランコ……。レーコの娘。私たちの唯一の隙間をストレートに狙ってきたわね」
「怒りの発散による快感。自らを怒りの対象にして、人々にそれを広めているという事ですね。実際、彼女たちの活動を嗅ぎ付けて、あえてその場に向かう者たちも増えてきているとの事です。そこで怒声を上げながらも、それを楽しんでいる。そういった具合ですね」
「そう……。二十年かけてすっかり骨抜きにした連中が、今再び気骨を震わせようとしている、か。ンフフッ」
笑った。エイリは、オニユリの活動とその効果に対し、怒りは見せず笑ったのだ。
「この事態もエイリさんの計画の内、という事だと私は思っていますが、いかがでしょうか?」
「え?残念ながら違うわ。私の計画は、とっくの昔に終了してるもの。この管制都市と、分裂国家の形成の時点でね。ただ、こうなることは、分かっていたけどさ」
「というと?」
「抑圧があれば反発がある。ごく当たり前の話よね。むしろちょっと遅かったくらいよ。でも、それを扇動してるのがレーコの娘ってのが、とっても運命を感じてしまう。久しぶりにあの子に会いたくなるわ……いや、子って歳でもないかな」
「だから、今こうして姿を現そうとしているのですね。しかし、それはさせません」
最上の敬意を持ちながらも、アイラは強気にエイリが眼前に姿を見せようとしたのを制止した。
「へぇ?それはアイラ、あなたの私に対する抑圧?それとも反発?」
「どちらでもありません。エイリさんを含め、ヒロインクラスという存在のプライドです」
空間が張りつめる。この緊張感を感じ取る第三者は居ないが、恐るべき静寂である。そんな静寂は、エイリの軽い笑い声で終わる。
「アハッ。いいね。清風アイラ。私ともレーコとも、きっとランコって子とも違う、強い意志。あなたにセンターを授けたのは正解だったわ。いいわ。反発をあなたたちで抑えてみなさい」
その言葉を受けて、アイラは深々と頭を下げた。そして、その頭が上がる前に、「そうそう」とエイリは続ける。
「ZONEの使用も許可するわ。今日はこの承認を得る為に来たんでしょ?」
「……はい。恐れ入ります」
「ってなわけで、抑圧を楽しみなよ」
言い終えて、暗闇の中からエイリの気配は消えた。残されたアイラは、しばらくその場に立ったまま動かずに、微かに残ったエイリの存在感、そのオーラを感じつつ、決していた意を更に固めるのだった。
⑯
『おやおやおや、またまた今夜も、暇を持て余してる間抜け面が勢揃いしちゃってるわね』
やはり今夜も街角で発生したゲリラライブ。通りすがりに足を止めた者や、オニユリの存在を感じ取って駆けつけた者たちを、ランコが涼しい顔して煽りに煽る。
『日常生活で怒ることができずに、今夜この場であたしらを罵ることでの鬱憤晴らし。みんなー!超カッコイイよ!』
「うるせぇ!お前らが俺らを怒らせてるんじゃねぇか!」
『もっちろん。あたしらがみんなを怒らせてあげてるんだから、感謝しなさいよねっ』
愛嬌たっぷりな口調でそう言い放ち、間髪入れずに曲がスタート。
ライヴとはいえ、ゲリラなのでそこにステージなどあるはずもなく、ただの路上。目線は観衆と同じであり、その間に柵などは一切無い。
なので、頭に血が上りすぎた者が、勢いよくランコたちに突進をかます場面も多々あるが、そんな時こそアキラの出番。
今まさに、怒声を上げた男がランコに突っかかろうと踏み出したが、「えぇいままよ」と、それをいち早く察したアキラの突進の方が早く、その男の取り押さえに大成功。
しかし、そんな真似をしたアキラが怒りの観衆の攻撃対象になるのは必然で、蹴りや拳が次々と襲い掛かり、まぁボロクソというもの。
間もなく、ハデスの口から煙幕が張られて、アキラを連れてオニユリは撤収。毎晩そのようなパフォーマンスを繰り広げている。
「あぁ……くっそ。なぁおい、日に日に煙幕を張るタイミングが遅くなってないか?今日なんて三発殴られて、五発は蹴りを入れられたぞ」
BAR・ピュアラヴに戻り、アキラは怪我の治療を受けながらもそうぼやく。
「まーまー。今夜も結局無事だったし、いーってことじゃない?ほーら、アルコール消毒よん」
そう言ってライムはウィスキーをアキラの顔の擦り傷にしたらせようとしたが、上手くいかずに頭からかけ流してしまう。
「ぶわっ……くそぅ。お前ら俺の扱いが雑すぎやしないかよ?俺は文字通り、体を張ってお前らを守ってんのによ」
「もっちろん、感謝してるわよ。でも、アキラがもう三人くらいいたら、もっといいかも。そしたらアキラも一人で傷つかずに済むのに」
「無茶苦茶言いやがる……」
ランコたちの感謝の態度に関しては諦念を抱きながら、アキラはため息をついた。
「こら、ランコ。アキラくんには本当に感謝しなよ。アキラくんがいなきゃ、あんたらみんな、とっくに吊し上げられてるんだからね」
そう言って店の奥から出てきたレーコは、労うようにアキラの肩を軽く叩き、顔の傷に丁寧にガーゼをあてがい、腕に包帯を巻く。
「あぁ……レーコさん。ありがとうございます。うぅ、なんか涙が出そうっすよ」
アキラにしてみれば、憧れのアイドルに介抱してもらうという状況。感激のあまりに、ランコたちに対する呆れは失せていた。ちょろかった。
「で、どうなのランコ?あんたの計画は上手くいってるの?」
アキラの治療を終えて一息ついたレーコは、オニユリの面々と向かい合う。
「うん。手応えはあるわ。だんだん固定客?っていうのかな、一応。リピーターが増えてる。怒りたい人たちがさ」
「でも、その人たちはあんたらを吊し上げたいと思ってるんでしょ?今のところアキラくんが頑張ってくれるけど、手違いでアキラくんが再起不能になったらどうすんのよ?」
そんな不穏な事言うものだから、アキラは密かに身を震わせた。
「うん。そうなんだよね。そこが問題」
「おいおい。そこは何か対策を練ってくれてんじゃないのか?」
それは大丈夫、と即答するのかと思いきや、ランコが首を傾げるので、アキラは思わず声を上げてしまう。
「でも大丈夫。これをいつまでも続けるわけじゃないし。あと数回よ。その後は……」
ランコはレーコの目をじっと見つめて、言葉を続けた。
「ヒロインクラスが黙ってないわ。あの清風アイラがね」
「うん、ま、アイラの性格を考えればねぇ」
モモヨが頷きながら、アイラを語り始める。
「あの子はくそ真面目なのよ。大先輩である私が、何度あの子に説教されたことやら。それにエイリ姐さんに最も近しい存在で、現行のヒロインクラスの中核だから、そりゃあ私たちみたいな存在を、いつまでも許しておくはずがないわ」
「そーだよね。あの子って、メメやらメイとかと違って、決して高圧的じゃないんだけど、それ以上に芯が強いっぽいしさ」
ランコもまた、以前オーディションで接した際の印象を語った。
二人が語る清風アイラという少女に関して、レーコは興味深げだった。
「清風アイラ……か。もちろん存在は知ってるけど、直接は知らないのよね。ねぇ、モモヨ。その子ってやっぱりエイリに気に入られてんの?」
「そりゃもう、ね。この十年、私はエイリ姐さんと会ったことなくて、ヒロインクラスの他の子たちも同様よ。あの人は映像で姿を見せることをはあっても、生ではお目に掛かれないし、会話もできない。唯一、アイラだけが、あの人と接する事ができるのよ。メッセンジャーとして、それにきっと後継者として」
「エイリの……後継者ねぇ」
レーコは何やら首を傾げながら、娘のランコを見るのだった。
「さ、あんたらこんな所で油売ってないで、来る日の為にもっと曲やパフォーマンスを練ってなよ」
そう言ってランコたちを払い出したレーコは、グラスにウィスキーを入れて、やれやれといった感じで、一口飲んだ。
「……もう大丈夫よ。出てきても」
そんな、呟くような声に呼ばれて、部屋の隅のクローゼットから、男が一人現れた。
スキンヘッドに近い坊主頭。薄汚れた作業服で身を包んだ、猫背で惨めな感じの中年男。
「はぁ……。大の男がクローゼットに隠れて息を潜めてるなんて、惨めなもんよね」
「いや、お前が俺をあそこに押し込んだんだろ?」
二時間ほど前だった。その男は、昼下がりにふらふらとよろめきながら現れて、ぐったりと店内の椅子に座り込み、レーコと弾まない会話を交わしていたところ、外からアキラやランコたちの声が聴こえた瞬間、無理矢理にクローゼットに押し込まれた次第。
「私に隠されるような身分でしょ、あんたは。っていうか、どの面下げてあの子に会うつもりなのよ?」
男は苦々しい表情で、口を噤む。
「とはいえ、ランコはあんたの事は覚えてないでしょーけど。パパとの思い出なんてもんは無いんだし。ねぇ?荒城アラシさん」
「まぁ……よ。でも逞しく育ってんな、あいつも」
感慨深げに、遠い目をして、うっすらと笑うアラシを、レーコは冷めた目で見ていた。
「あんたも、逞しいっちゃ逞しいけどね。また懲りずに、収容所から脱走するとは……まぁ思ってたけどさ。で、どうすんの?これから」
「とりあえず地下に潜るさ。迷宮化してるアンダーグラウンドなら、上層の連中から逃げおおせることもできるだろうしよ……」
中年男の力無い言葉。さっきまでいたランコたちとはあまりに対照的な様子である。そんなアラシを見つめ終えて、レーコは少し目を閉じた。
その時、ドアが勢いよく開いた。
「レーコさん、すんませんっ」
アキラが息を切らして戻って来たのだ。
「音源データ置き忘れちまって……あ?」
アキラは固まった。見知らぬ男。それも薄汚れた怪しい風体の中年。まともな男でないことは明らか。
そんな男、アラシもまた固まった。油断しきった状態での来訪者。さて、今からどこに隠れようか、などと無意味な事を考える。
「あーらら。見つかっちゃったわね」
「ぐ……ぅ、いや、でもこいつ一人か。だったら別にいいか」
どうやらランコたちは戻っていないようなので、アラシは息を吐いて落ち着いた。
「この男は……誰っすか?」
アキラが警戒心たっぷりにレーコに問う。
「これ?これはね、ランコのパパ。つまり、私の元旦那」
「なっ⁉」
アキラの顔が驚いた後に強張り始める。そして、アラシにつかつかと歩み寄り、顔を向き合わせる。
「こ、これが……レーコさんの、レーコさんを……レーコさんと」
「お、おぉぅ」
何やら異様な迫力を帯びているアキラに、アラシは気圧される。
「レーコさんっ。この男とはどういう……その、どんな馴れ初めでお付き合いを?」
問われたレーコは、一瞬悪戯な笑みを浮かべた。
「うーん?無理矢理押し倒されて……ね」
「は?おい、何言って」
「ウォォッ!」
「へ?」
問答無用の、拳の一撃がアラシの顔面を襲った。正に、ぶん殴るという表現に相応しい殴りっぷり。アラシは身を崩して床に倒れ込んだ。
「あと、ついで言うと、そいつは荒城アラシっていって、アキラくんが所属しようとしてた事務所の代表よ。ほら、オフィス・アナアキってやつの」
「……よし、とどめを刺そう」
有言実行すべく、アキラはマウントポジションを取ろうとするが、虫の様にもがいてアラシは這いながらその場を脱し、壁伝いに立ち上がる。
「ち、ちょっと落ちつけ!押し倒したとかいうのは、レーコの冗談だ。なぁおいレーコ!」
「さーねー」
レーコは軽い調子で、アラシに助け舟を出すつもりは無いらしい。
「冗談だろうが何だろうが、あんたは許されざるよ。一千万歩譲って、結婚は許してやらないことも無い。レーコさんの幸せを願うのはファンとして当然だしよ。でも、てめぇ離婚したって事は、レーコさんを幸せにできなかったって事だろ?おいおい、そりゃ万死に値する。ファンを代表して、俺がそれを成す」
「えッ、あの……えと、それはその」
「しかも俺をど田舎の山奥から召喚しておいて、摘発されましただ?おかげで俺は文無しのスラム住まいよ。人の人生おちょくりやがってよぉ……」
「まぁまぁアキラくん。それに関しちゃ彼も悪気があったわけじゃないのよ。そこは許してやってよ」
レーコはゆっくりとアキラとアラシの間に割って入り、アキラの気持ちを落ち着けるべく、肩を揉み解す。
「彼とはかつて、一緒に音楽活動をやってたのよ。ヒロインクラスを辞めた後にね。一度くっついた理由はシンパシーってやつ。別れたのは……そうね、私が冷めたから。でしょ?」
ようやく出された助け舟に必死にしがみつくかの様に、アラシは何度も頷いた。それが功を奏し、アキラの表情が緩んだ。
「……そうっすか。すんませんね、取り乱して」
「いいのよ。実際ちょっとスカッともしたし。ほらっ、これ持って早くランコたちのところに行ってきなよ。あと、この男のことはみんなには内緒でね」
そう言って、置き忘れていた音源データ入りのメモリをアキラに手渡し、その背を押して、店から出すのだった。
「くっそ……痛ぇな。しかし、あいつがそうか、明川アキラか」
殴りつけられた頬を撫でながら、アキラが出て行った方を見るアラシ。
「ん?知ってんの?」
「まぁな。俺のオフィスが出した募集を受けたのは、あいつだけだったしな。書類もよく目を通したんだ。あんな遠方の田舎から遥々と……。収容所に連れていかれた後も気にはなってたよ。それが、お前やランコと知り合って、一緒に活動を始めるとはよ。運命って言葉はムカつくが」
「そうね……でも」
レーコは何か思い出し、そして今度は不敵にではなく、微笑んだ。
「あんたに唯一、感謝をしなきゃいけないのは。アキラくんをこっちへ呼び寄せたこと」
「あ?そりゃ一体?」
「ま、アキラくんにしてみればはた迷惑な話だし、私自身も複雑な心境ではあるけど、きっとランコは感謝してくれるわ。その点に関してはね。だから、私も感謝してあげる」
アラシは何に対する感謝なのかよく理解できていない。レーコも理解は求めていないようで、話を切り替えた。
「でさ、あんたこれから地下へ逃げるとか言ってたけど、その後は?ずっと逃げ続けるわけ?」
「いや。機を窺って、また反撃を……と」
反撃を口にするわりには語調が弱い。今はただ逃げる事だけを考えていることは明白だった。
「あんたも丸くなったよね。ま、歳も歳で、仕方のない事だし、それが悪いとは思わないけど。でももし、あんたが本気で反撃のチャンスを狙ってるのなら、それは今よ」
「今だ?」
「そーよ。その気があるのなら、ランコたちをフォローしてなよ。もちろん陰からね」
「……うん」
まだ語気は弱いし、意志も弱い。だが、逃避以外の選択肢が見えてきつつあり、アラシはしばらく黙ったまま考え込む。そしてレーコは、その様子をじっと見守っていた。




