表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪神絶対殺す  作者: 逢魔ヶぽこぽこ
ケットシー編
PR
21/34

第21話 宝の山


 ケットシー村に帰ると、案の定、くぐり穴の前は大騒ぎになった。


「サンが帰ってきたにゃー!」

「なんか連れてきたにゃ!」

「でかいにゃ!」


 兄弟たちが真っ先に飛び出してきて、その後ろから村のケットシーたちもぞろぞろ集まってくる。

 皆の視線は、俺よりもむしろ後ろのロバに釘付けだった。


「紹介する。ロバのセレスだ」


 俺がそう言うと、セレスは耳をぴくぴく動かして、


「エッ!」


 と鳴いた。


「しゃべったにゃ!」

「かわいいにゃ~!」

「耳が長いにゃ」


 あっという間に囲まれている。

 セレスは少し迷惑そうに耳を伏せたが、暴れたりはしなかった。

 ロバっていうのは本当に気が長いらしい。

 ちゃんと馴染めそうで良かった。


 俺は荷車を広場まで引いていき、積荷を順番に下ろしていった。

 食料やこまごまとした生活用品が中心だ。

 村では手に入りにくいものばかりなので、荷を見ただけで皆の目が輝いている。


 今回もお土産を配る方式にしたので、広場はすぐにお祭り騒ぎになる。

 あっちで歓声、こっちで歓声。


「今日は、売れたやつにはちゃんと金もあるぞ」


 そう言って、託された商品が売れたケットシーたちには、直々に代金を渡していった。


 値付けをしてくれたのはベルナルドさんだ。

 木彫りのアクセサリーや小さい人形は、珍しくてかわいいということで、思ったより評判が良かった。

 押し花のしおり、ポーチや小物入れ、小さい服なんかも、子ども向けとして売れた。

 磨いた瓶が売れたのは、正直驚いた。


 ベルナルドさんは「程よく使用感があり、雰囲気がある」と言っていた。

 ただのジャンク品だと思うんだが。


 そして何より、今回一番儲かったのは――子どもたちの宝物だった。


「小石が、金貨三十五枚になった」


 広場が、しんと静まり返る。

 皆、指を折りながら「いくらにゃ……」と計算しようとしていた。


 急に大きい金額を言われても、ぴんと来ないか。


 俺は金貨の詰まった袋を取り出し、口を開いて見せた。

 陽の光を受けて、金貨がきらりと光る。


「ほら、これが代金だ」


「こ、これが金貨にゃ!?」

「小石が!?」

「川原の石にゃあ!?」


 大騒ぎである。

 当の子どもたちも、ぽかんとしていた。

 まあそうだろう。

 拾った石ころが大金になるなんて、想定外だろう。


 だが、さすがにそれをそのまま子どもに渡すわけにはいかない。


「相談なんだが、これは村の積立にしようと思う」


 俺がそう言うと、何人かが首を傾げた。


「つみたて?」

「みんなの金ってことだ」

「なんでにゃ?」

「もともと村の近くの川原で拾った石だろ? だったら、村のために使うのが一番いい。と俺は思うんだが、どうだろうか」


 村の大人たちが輪になって相談を始める。

 子どもたちは、緊張した面持ちでその周りをうろうろしていた。


 そしてしばらく話し合った結果、俺の案でまとまることとなった。

 子どもたちも、よく分かってはいない顔だったが、みんなの役に立つならいいにゃ、と納得していた。

 えらい。


 すると今度は、別のケットシーが聞いてきた。


「じゃあ、サンの商売はどうなるにゃ?」


 俺は少しだけ迷ったが、隠すことでもないので答えた。


「実は、この森を買い取るための資金にしている」


「森を……買う?」

「買えるのかにゃ?」

「なんのためにゃ?」


 反応は様々だった。

 基本、よく分かってないやつ。

 感動しているやつ。

 とりあえず驚いているやつ。


 お金のことについては、みんな少しずつ理解が進んでいる。

 だけど、土地の権利とか、許可とか、そのあたりはまだピンと来てないらしい。


 俺はできるだけ簡単に説明した。


「未来のためだよ」


 みんながこちらを見る。


「子どもや孫や、その孫の代まで、ここで平和に暮らせるようにするための方法だ」


 こんな言葉で全部は伝わらないだろう。

 でも、気持ちは分かってくれたらしい。


「おお……」

「すごいにゃ……」

「未来にゃ……」


 いや、やっぱり分かってないかもしれない。


 ◯


 そのあと、イチとニンとヨンと一緒に実家へ戻った。

 セレスから荷車を外したあと、庭に放しておく。


「父さんの畑は荒らすなよ」

「エッ!」


 返事だけはいいな。


 家に入ると、母が何やら布を広げていた。

 前に持ち帰った絹の布で、服を作っていたらしい。

 俺たちが入ってきたのを見ると、慌てて散らかった布を片付け始めた。


「おかえりにゃ」

「ただいま」


 俺は荷物の中から、今回持ち帰った新しい絹の布を取り出した。

 しかも今回は、染色済みのやつだ。

 鮮やかな色合いと、美しい光沢。結構お高いやつを選んできた。


「母さん、これ」


 母は布を見た瞬間、目を丸くした。


「にゃっ……!」


 色とりどりの布を見るや、顔を突っ込んで頬ずりし始めた。

 すごい勢いである。


「ふわぁぁ……」


 そんなにか。

 いや、まあ、絹の布って滑らかでひんやりしてて気持ちいいいもんな。


「これは夏ものにぴったりにゃ」


 さっそく頭の中で新作の構想が始まっているらしい。

 母は布を撫でながら、完全に職人の顔になっていた。


 父には、マタタビ酒はまだ売れてないと伝えた。

 すると少しだけ残念そうにひげを揺らしていた。


「そうかにゃ……」

「いや、悪い意味じゃない。凄すぎて買い手を探すのが大変らしい」

「ほう」


 それを聞くと、父はちょっとだけ胸を張った。

 単純だな。


 ◯


 それから俺は、しばらく仕事のことは忘れて、発明とか開発を始めることにした。


 霊魚釣りと干物作りは、イチとニンとヨンに任せてある。

 少し不安だが、まあ、ヨンがいるから大丈夫だろう。


 最初にやったのは、魔力鏡を使った精霊石探しだった。


 煙水晶のフィルターがついていることを確認し、俺は川原の石ころに魔力鏡を向ける。

 すると、ぽつぽつと光っている石が見えた。


「うそだろ」


 あれ全部、精霊石か?


 宝の山ってこういうことを言うんだな。

 もうそれだけでひと財産である。


 俺は特によく光っているものから、淡いものまで何種類か拾い集めた。


 たしか精霊石とは、強い魔力が込もっていて、魔道具製作に使われるとかなんとか。


 俺は魔道具については素人だ。

 俺の得意な魔法陣制作はいわば文系で、魔道具は理系みたいなもんだ。

 たぶん。

 とにかくジャンルが違う。


 なので、こういうときは実験していくしかない。


 試しに、遠くにおいた精霊石へ火の魔法を放ってみた。


「【ファイア】」


 小さい火の玉が飛んでいって石に当たった。


 しばらく見ていたが……変化なし。

 触ってみても熱くない。

 焦げ跡すらついていない。


 今度は直接魔力を流し込んでみる。

 だが、全然入っていかない。


 ……そうか。


 もともと魔力が入っているから、これ以上は受け付けないんだ。

 とすると、魔力を与える必要はない。

 逆に、内部の魔力を引き出す構造がいるんだな。


「とりあえず、穴でも開けてみるか」


 俺は家から工作道具を持ってきた。

 自作の弓錐だ。

 木と紐で作った手動のドリルである。


 これで、穴を開けたい石に冷却水を垂らしながら、少しずつ地道に削っていく。


 硬い石に少し手こずったが、小石の中ほどまで穴を開けることには成功した。

 内部は見た目には特に変わったところはない。

 だが、魔力鏡で見てみると、内側は外側の比ではないくらい光り輝いていた。


「へえ……」


 削っても魔力が漏れ出たりはしないらしい。

 次は、穴に魔力を入れてみる。


 がしかし、入っていかない。

 押し返されるような感覚がした。


 じゃあ属性を付けたらどうだ?


「【ファイア】」


 あれ?


 魔法が発動しなかった。

 というより、石にすんなり入った。


「……でも、これ、どうやって取り出すんだ?」


 そのファイア石を木に向かってぶん投げてみたが、かつんといって普通に跳ね返った。

 もう一発、魔法を入れてみるか。


「【ファイア】」


 変化なし。

 だが属性は――


「あ」


 大爆発した。


 革の水面に波紋が広がる。

 地面がえぐれ、土と石が降ってくる。

 俺は咄嗟に後方へ飛び、間一髪で助かった。


 人外の反射速度がなければ、上半身が吹き飛んでいたところだ。


「精霊石、危なっ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ