2026年7月短歌まとめ
2026年7月短歌まとめです。
満月は雲にかくれて人間の目から逃れる夏のしつこさ
見下ろした水平線の向こう側霧に隠れる橋の灯火
一年の半分が過ぎ去ったとき根付く命のわずかな鼓動
晩酌につきあう月のおぼろげな光を浴びる白猫の君
一息をつけば枕を片手にし膝に乗っかる我が子を抱いて
海開き報に接するばかりでは今年の夏も音速で過ぎ
夏の夜に響く音色を聞きながら声にならない不安を纏う
スーパーに入れば夏が飛び込んでどこか寂しく心はゆれて
雨の降る海に運ばれ微睡んで陸との縁にハサミを入れる
つま先を踏みつけ耐えるあまりにも時間の過ぎるはやさが遅い
無意識に視線をそらし空仰ぐすずめは自由そのものを手に
たこ焼きを回すだけならお手のものその他料理は想像通り
悔しさは恨みに変わり死を企図し何度目だろうまだ生きている
雨の日の散歩の帰り名も知らぬ黄色い花は横髪につき
白亜紀に生まれていても生き延びるほどの強さはなかっただろう
消耗に気付きながらも充電を後回しにしバッテリーゼロ
履歴書を埋めながらこの人生に以上と終止符を打ちたがる
幾分とやつれたぬいは老犬に値するかと彼に問う宵
零れ落つ涙は雨と比べても物語らずに地表に消える
夏らしい風に吹かれて過ごす朝すずめの歩く藤棚の下
考えるあと何回で会える日も終わるのだろう木漏れ日のなか
贅沢もたまにはしてもいいだろう牡蠣グラタンの蒸気を浴びる
表では決して語ることのない話をしよう雨の降るうち
社名すらジョジョにしようと企んで徐々に彼から距離を置き出す
ずっしりと重たい本を持ち上げて手に入れるのは知識と力
独りでも生きられるなら本当に意味も理由も失くなるでしょう
中間が存在しない最初だけ頑張るくせに締切間近
気が付けば違う分岐点に立ち正解のない道を彷徨う
増えていく秘密を隠し息をする悟られぬよう置き出す距離は
回らない頭でお湯を注ぎ入れ葛根湯と間違え昆布
想像と違うのだろう山ばかり見てきた人の思う都会と
覗いても見えない心猛獣のような目つきに惹かれる私
心まで守れるのかは分からないそれでも君を生かしたいだけ
霧がかる道を歩いていく雨の降る日に潜む白い紫陽花
年月を重ねても尚この曲は心を乱し未来に誘う
ラムネ瓶飲み干すまでの道のりは硝子と夏を鳴らすビー玉
転がって倒れるキャップ指先で拾えばそこになにかがあると
DSを走るマリオに見入る夏子どもであれる時の短さ
弾けたならどんな言葉も語らずに済んだのだろう雨の降る夏
ため息を吐けば道行く黒猫と目が合い歩く足を引っ込む
委ねても縮まらぬ距離それでいい明日も今日となにも変わらず
想像を遥かに越えて生きているおまけにしては長いけれども
ライブから得られるものの言語化は更に難問コールを叫ぶ
カメラ手に切り取る花は物語る補填もできずなにを記憶す
のんびりと生きすぎたんだ素数すら忘れてなにも覚えていない
夜ふかしをしても埋まらぬ心あり片手に持ったビールと外に
何年も離れ離れで生きている笹に願いを委ねる吐息
死を祈る夜の静けさ七夕も関係なしに変わらぬ心
裏側に秘める感情貼り付けた仮面を無理に取ろうとするの
消費性ばかり抜群である僕は蚕になれず今日も布団に
会いたくて会いたくなくて矛盾するこの想いこそ真実である
風鈴の音色の響くゴミ捨て場裏と表の世界の狭間
挫けても自分を赦すはずもなく足掻いてもがき珊瑚と沈む
蒸し風呂のような十字路手を振って火照った頬を包み込む夢
茹だる日も近いのだろう鼻につく夏に混じった塩素の匂い
梅雨明けと聞いて仰いだ天井はいつもとなにも変わらぬ白さ
特別に見えたケーキの保冷剤いちごの甘い香りを纏い
嵐とはこのことだろう待合ではしゃぐ子どもの笑顔はふたつ
何度目のシミュレーションかどう転び擦りむいたとて満身創痍
引き出しにしまったままの年賀状あっさり糸は切れておしまい
泣きません勝つその日まで青空は夏をうたって日差しを直に
満たされることもなければ貰っても綺麗そのまま流れて消える
人間は完全じゃないほらここの工事現場も週休二日
考える頭もなしに飲み込んだ芋焼酎にむせて眠って
冷凍をした豚肉でぶん殴ることもできるか花瓶の代わり
起き上がることもできずにただ恨む体温計の示す数字を
ねばりたいセット商品納豆とオクラの並ぶ今日の食卓
つま先で歩いてみせる発泡酒のようにはじける笑顔の先に
切り取った雲は暑さを謳歌して夏を思わす鮮やかな白
やり遂げた途端に芽吹く死にたさは一秒ごとに花を開いて
移ろっていく山々の色どりの緑の濃さに感じる夏の
炭酸の抜けるグラスを透かす青汗を拭ったその指先に
純粋な白ではないにしてもこの雪だるまから得られる理由
蒸し暑いバス停に立ち睨むのはこのご時世の時刻表でも
大盛りに盛られた野菜ラーメンに辿り着くのはいつになるやら
削除する過去の私の意思表示誇りに思うものを手にして
今はある意味も理由もあの日々の思いが消えることはないけど
途中から背中を追ってばかり居る事実が嫌に並びたい肩
クーラーの効いた部屋から出るときの膜を纏ったような心地に
肉じゃがを食べる機会も減っていきたまにはやめる大人の仮面
幼さの残る笑顔を向けられてがんじがらめの糸をひっぱる
息を止め湯船に沈む苦しみが飽和するとは限らないのに
雨空を忘れるほどに屋上の向こうに昇る入道雲の
本当のことを語ればあの過去が変わるのですか消えるのですか
雑草の集まる場所に紛れ込む雑踏のない今世の夢
振ろうとも出てこぬ胡椒お互いにしびれを切らすときが潮時
改札を抜けて花屋を通り過ぎ目の端につくベゴニアの花
家を出る十分前の慌てもの剥いたバナナを手から滑らせ
冷え切った部屋から出れば蒸し暑い空気が肌を迎えて纏う
記憶から逃れるように眠る日の頬を伝ったものも知らない
解答のない質問に逡巡しあれやこれやと答えを探す
生きたいと叫んだとして意味もなく排除されては生身の野生
寝坊する夢を見ていた目が覚めて時計を見れば思考は止まる
目の前に月が現れ背丈より大きな祖父の望遠鏡と
蝉の鳴く季節もすぐに来るでしょう既読のつかぬ五回目の夏
生きていることすら否定されるなら眠れず零す普通の希望
ロボットになれたとしたら悔しさも恨みも全て忘れられるか
夕暮れの色に染まっていく町を行く降車ボタンのもたらす灯り
潮風を浴びてもそびえ立っている錆び切るカーブミラーにもたれ
あの頃の茶碗をなぜか思い出す夢を語っていられたときの
キョンシーの御札をわざと取るようなものだよ君のその言動は
感謝することもできずに目の前で散った花々焼け付く赤さ
定時でも夜遅くてもおかえりと返す貴方はどこにも居ない
消えていく言葉も傷も感情もあの日を思うこともなくなり
守るべきものも忘れたこの世から逃れるように小瓶は底に
近道を選ばず回り道を行く摘まれた花は足元で泣き
立ち上がり宛なく歩く夏の夜水平線も見えない道を
ドパガキになる危機感を覚えれば寝て起きて食うだけの生活
ゴミ捨てとともに歩いたこの草履現世に夢を抱くことなく
水やりに勤しむワケは僕だけの虹をつくって渡りたいから
エアコンの匂いの残る寝室を出れば暑さが身体をつつむ
本を読む知らぬ世界を落とし込む明日を語る者などおらず
日を浴びて枯れたトマトの葉を千切る汗は背中を這って流れて
牛乳のような白さを反射する団地の壁を遮るように
水槽を横切る金魚涼しさをもたらす前に茹だる人間
通り雨過ぎれば空は人知れず苦しみなんてないような夕
東京に行けば私もアリンコのように踏まれて潰える命
望んでも潰えるだろうそれならば最初から死をこの胸に刺す
別れすら言えずに散ったきみのこと空虚な夜に輝くものを
世界から私一人が消えたって君の見上げる空には居ない
寝転がりタオルを顔の上に置く眠気を誘う冷房の風
問題の用紙の隅の落書きを見返しながら人生を問う
沈黙の続く会話を放棄して蝉の鳴き出す夏空を見る
毒を盛るように言葉を重ねては崩れるときをただ待っている
もらっても返せないのに優しさを与えてくれる貴方の瞳
夕焼けの空を映したこの窓が結露するのももうすぐだろう
眠気から逃れられずに捕まって意識を飛ばすこの夏の宵
雨の降る夏を裸足で踏みしめる割れた栄養剤の瓶より
御朱印を集める意味を問いてみる理由もなにもないとわらって
頂をいきなり目指すバカが居る過程もなしになにを遂げると
夕暮れの空を閉ざしていく雲の正体を知る夏の嵐を
正解のない質問に逡巡し冬も忘れるほどに手に汗
分かち合うことができれば楽ですか痛みもなしになにができるの
句を詠んで歌を描いているだけの人生でした意味は自分に
久々に港を歩く宝石を沈めたように光る波風
家々を飲み込むようにのびてゆく入道雲の白さに焼かれ
海に行く気も失せるほど熱されて蒸された外で干からびる葉を
店先に並ぶラムネに気を取られまんまと買った後のビー玉
破れても隠せば同じオムライス似顔絵だけはうまく書きたい
夢を見ることなく朝はやってくる睨む空には罪もないのに
画角から名残の残る写真たちおかえりなさい画面の向こう
化石と化した頓服を捨てながら埃の山を建設しだす
坂道を挟む林で鳴き喚く蝉に苛立つ買い物帰り
目薬に滲む視界は夢心地ぼんやり映る背表紙の色
上辺だけ祝っていても結婚を理解するにはまだ程遠い
最初から出来損ないでよかったと言い聞かせては涙の滲む
夏バテに太刀打ちできず寝転んだ床の硬さに思考を閉ざす
毎日の暑さに勝てず減っていく麦茶をつくりまた一気飲み
一人切り夜を彷徨い虫たちの声の聞こえるベンチに座る
落ちていくものは涙か苦しみか街灯のない道にしゃがんで
過ぎていく時間の速さなにをして生きていたのか皆目つかず
天ぷらを食べては酒を嗜んでそんな妄想仰ぐ天井
目に見えるものが正しく目に見えぬものは悪魔のような扱い
居るはずもないのに探す無意識に視界の昇るエスカレーター
日焼けした肌を伝って落ちていく汗の光に魅せられている
本来の用途を無視し遊ぶ子で定規バトルに明け暮れていた
ポロシャツの裾を握って止めたって君は優しい目を向けるだけ
いつまでも続く暑さにショートする思考回路は異常を保つ
騒がしく低音ボイスで鳴くセミと暑さに茹だる人の命と
変わらないように映っている部屋も年を重ねるごとに移ろう
日の暮れる時間も早くなっていくもうすぐ冬と思えば汗も
足跡の残る砂浜墓要らずそんな馬鹿げた言葉の先に
打ち水も秒で蒸発するような太陽の下逃げゆく鳩と
お守りを縫って刻んだ願い事きみにとっては呪いに化ける
枯野抄読んで命を考える死というものがもたらすものを
一番の裏切り者は僕である神様どうか罪をこの身に
のうのうと生きては食って眠る日々夏空はもう闇に呑まれた
嫌われてなんぼだと言うこの口を縫って千切ってやりたいくらい
温めた昨日のおかずたちを食う月の見えない暗い一室
約束はこの身と捨てていつまでも罪を背負って海底の旅
ちいかわもなにも流行りに乗ることもなく人生を模索している
叶うならこの夜に咲いては散る花をあなたと見たい孤独を消して
手をそえただけで氷は水になり希望は泡になってはじける
人として生物として要るものをゆるやかに捨てそのときを待つ
なにをしてなにを考え生きているのか分からない終わる七月
夏草を刈った匂いの残る夜うさぎがついた草餅ならば
手を振ってくれるあなたに緩む頬飛びつきたいよ廊下の向こう
水につけブロッコリーを洗う夜森と称したサラダを前に
夏休みそうは言っても公園に子どもはおらず町の静けさ
幽霊になれたら君を見守っていても文句を言われないのか
死ぬ前の言葉みたいなことを言い眠る深夜は明けたセミの鳴き声
あといくつ夏を迎えて生きるのか君のおかげかそれとも所為か
山の色季節をともに歩む日々緑に触れる夏も終わりに
半分は寝たまま直す寝癖から得られるもののなさを覚える
立ち並ぶスイカに夏を感じても心はなぜか満ちることなく
なにもかも気合いで治す荒療治長引く風邪が表に出れば
からっぽになったみたいな感覚は空も飛べると錯覚させる
念頭に諦めを置き何事が起きても惑うことなき者へ
この先もあなたに合わす顔はないなにも望まぬ偶然なんて
ねえ海に出ましょう二人きりだけで月明かり差すのどかな時を
いつまでも更新せずに放置してネットの海に眠ったブログ
雨予報それを晴れ間に導いて別れのときの優しい風は
どれだけの時間が経てば焦るのか朝にまとめる自由研究
完成もせずに日にちは過ぎていき春は夏へと減るカレンダー
体調の悪いときさえ離れない名前の巡る茹だる全身
回らない頭だろうと関係はないと笑いもしない自分に
帰宅部の名残だろうか終業の時刻になればそそくさと逃げ
出て行って本音と違うものばかりペラペラ話す天邪鬼でも
憂鬱を越えていきたくなくなって泣いても進む日曜の夜
帆のなびく湖を見て過ごす夏底に沈んだものも知らずに
一粒をゆっくり食べるデラウェア明日から逃げる夜のひととき
ないものをねだってばかりあの人の視線を浴びて眠りたいだけ
夏風邪のせいか痛んだ腹筋が割れるのならばそれはそれでも
秒針の止まった時計小刻みにゆれる緑の葉の命より
はちみつの行列のよう買い置きに足された甘い誘惑の声
大正を知らない僕が今生きて踏んでいる地の見てきたものは
額面と現実の差を焼き付ける夜の虚しさ励ましの飴
大福の粉を散らして食べる子は大人になってからも同じで
あの頃の私と同じことを云う人を見かけた夏の砂浜
見たくないものを目にして澄ます耳その中にある真意はどこに
矛盾した言葉は悪か正義だと思うか君はどの道に居る
蝉の鳴く季節にひとり座り込む苦しみのない自由な空は
姑と百合になる気はないのです何処かへ去ってくださいますと
海岸に消えゆく白いワンピース日差しに眩むその瞬間に
青空に連なり昇る雲仰ぎ掴めない手に苛立ちさえも
隠れても無駄だよ君のいる場所は大抵狭く仄暗いもの
時ばかり過ぎて私はいつまでも変わらないまま過去に居座る
この広い海の何処かで眠れたら月も誰にも邪魔はされない
玄関に置いてきた靴最期ならふさわしく在れ裸足で走る
一緒には沈んでくれず差し伸べた手は星空を向いてさよなら
2026年7月計220首
2026年計1505首
自選
晩酌につきあう月のおぼろげな光を浴びる白猫の君
風鈴の音色の響くゴミ捨て場裏と表の世界の狭間
潮風を浴びてもそびえ立っている錆び切るカーブミラーにもたれ
死ぬ前の言葉みたいなことを言い眠る深夜は明けたセミの鳴き声
一緒には沈んでくれず差し伸べた手は星空を向いてさよなら
こんにちは、雨宮雨霧です。
7月存在してた?ってくらいに7月が過ぎ去るのが早い。
こうやって今年も終わるんだ……。




