2026年8月短歌まとめ
2026年8月短歌まとめです。
夏空に吹き飛ぶシャボン玉の行く入道雲は眩しく白い
栓を閉め踵を返す夏の夜枯れたトマトの零す水滴
地図を手に迷う人生朝の日が差し込む先に見えたなにかは
ささやきに惑わされればもう楽になれるでしょうか抱きつく先に
水滴のしたたる蛇口希望すら潰えた今を蔑むようで
立ち止まりふと考える閻魔ならこの生き方をどう見倣すのか
変わらない日常を見て過ごす夏外は暑くて出れやしないし
年末も気付けばすぐにやってきて迎える次の夏を見透かす
ふと浮かぶあなたの声を打ち消して罪悪感の心地よいこと
夜中でも気にせず鳴いている蝉も夏バテなのか氷を食べる
ボロボロになろうと気にも止めず着る誰も見ないし興味もないし
終点に降り立ち今日の行く先を考え歩く日曜のこと
日の暮れる時間も早くなっていく雲の形も次第に変わり
簡単に死ねやしないし生きたくもないけど今は貴方を握る
適当な答えを選び返されたテストは二度と開かれず朽ち
気疲れを打ち消し纏う偽物の顔はいつしか般若に変わる
良い子には声掛けをしているくせに悪い子は無視エスカレーター
雑巾を足蹴にしては水滴の散る床を拭く面倒なこと
サンダルを履いて駆け込む海の家滴る汗の眩さに目を
蒸し風呂と化した部屋から逃れても止まらぬ汗とくたばる頭
嫌悪から好意に変わるかわいいと思えるものを身に着けまわる
波風を浴びて座った石段の隣を見れば透明な君
遊び場と化したロビーを思い出す正反対の子どもと大人
頭にははてなばかりが飛び浮かぶショート寸前閉じる教科書
炭酸の抜けるグラスを透かしても心は見えず言葉は空虚
駆け上がり息を切らせば夕焼けに染まる道なき丘に惹かれて
楽になるイコール死ねば手に入るそんな思考をとどめて笑う
這い上がる過去の自分を蹴落として足手まといになれば未来も
潮騒は耳に焼き付き目を閉じる度に木霊す声なきなにか
食べ頃を待つ毎日もくだらない最後になぞるメロンの網目
夜を割くように走ったタクシーは街の向こうへ坂に踵を
ゆらゆらと炎は夜を焦がしゆく星を仰げば身は浮き上がり
旅をする切符とともにまだ知らぬ世界を目にし空を飛びたい
夏を知るには十分な雲の色枯れた葉っぱを手に取りかざす
おかえりと言ってもらえる環境に居るのになんで空虚なのかと
応援の響く夏空感情の動きも全て思い出となる
息をすることも苦しいこの夏の酷暑の中で鳴き喚くセミ
雨の降る夜を何度も生き延びて青の広がる明日を目にす
木立から降り注ぐ蝉時雨より得られる夏の煩わしさ手に
溺れさえすれば静かに消えられる崖を登ってくる波の花
絶え間なく誰かが倒れ人生を語る者など残りはしない
語られることもなければ無に還り踏みしめられるこの土の下
過ちを忘れて同じことをする淘汰されゆく言葉と記憶
受け取った知らせを聞いて目を落とす予感の先に待っている闇
舌を出し煽って逃げる君を追う果てなく続く砂浜の跡
もう誰も集まりはせず変わりゆく夏の形とラジオ体操
首を振ることを拒否する扇風機お前が回れ訴えながら
秋だとは思えぬ暑さ青空を覆う分厚い雲の行方に
大切なものに気付かず送る日々失うときがいつか来るまで
罪のない人が殺され罪のない人が兵士となる世の中に
会釈して通り過ぎればいいはずの貴方に声をかけられ惑う
八年は九年前に移ろっていくのに消えぬあの日の涙
躊躇わず飛び込み台を飛び立っていく姿から逸らすカナヅチ
野良猫の後ろ姿をふと見つけ姿を隠すまで窓際に
感じない暦の秋の宵のこと光を灯すいつもの部屋に
泣きじゃくり夏を恨んだ日のことを昨日のように感じる煙草
からっぽの金魚鉢にも生きていた命があって記憶もここに
夕凪を眺めてそこの地に座り馳せる思いは夜へと沈む
家に着きスーツケースを拭き上げる夢は終わった明日に項垂れ
ハグをして感じるものの幸せを言葉にできずひっついたまま
Tシャツは風になびいてベランダの柵を掃除す意には反して
大切な人も記憶も思い出も一瞬にして消え去る戦
憧れと言えば叶わぬものになるだから貴女は目標なんだ
枯れ枝で書いた落書き明日には自分も忘れまた生きていく
発熱の最中でさえも脳内を占める名前のぬくもりのなか
便箋を前にしながら文章の構成ばかり気にして更ける
連なっているのは雲と夏の山手の甲を焼く影なき坂に
信号を全速力で突っ走る野良猫に目を奪われ赤に
語られぬものは闇夜に葬られ美談となるか醜聞なのか
真実と嘘を見破ることもせず誰かが誘う暫時の言葉
言いつけを無視して思うままに行く苦言を漏らす大人を無視し
額縁に収めて壁に立てかける写真は二度と戻らぬ景色
遅刻する夢にうなされ目を覚ます雨の暗さにまた目を閉じて
踏みしめた地面で生きる雑草はきっと私を恨んでくれる
刈られてもすくすく伸びる雑草を横目に見つつ裏道を行く
ブランコを漕いで次第に近くなる空を飛べればなんて空想
奪われた一つの夏の思い出と新たに知った傷の欠片と
ひたすらに隠し続けた負の記憶檻から溢れ出すまではまだ
窓を開け頭を冷やす透明に近付く空へ木霊す虫の
佃煮と酒のタッグと共にする夜の時間の短さに酔う
やかんから溢れる水に取り戻す正気の沙汰と体の疲れ
押入れに隠れて遊ぶささやかな反抗をし紛らわす気を
なにかバレ空気が重くなっていることに気付いたときに目は向く
誰からも理解されない生き方を貫き通す見捨てられても
疑ってみることもせず正解と誰かが言った道へ踏み出す
昼顔と目線を合わし苦しみの中から救うその美しさ
ねえわたし私よ私メリーさん振り向かないでお金がほしい
窓枠に身体を委ね風を浴び深夜を過ぎるトラックの音
幽霊にならずに済んでよかったと安堵をすればどこか哀しく
波風は髪をなびかせ後押しをするように去る沈んだ瞳
ぼんやりと生きては眠り毎日の過ぎる速さに眩ました目を
エアコンの効かない部屋に寝転がり背けた夏の窓外の雲
一輪の花は夜道にひとり揺れ静かに夏の終わりへ歩く
灯籠に託す願いと裏腹に無惨に消える誰かの叫び
黙祷を捧げて祈る簡単に殺し殺されないことをただ
波々にコップへ注ぐあと少し残ったお茶の行方を決めて
終戦を迎えても尚終わらない戦争がある戻らぬ心
責任が一つの国にあるわけでなくても二度と繰り返さずに
勝ち負けの指標で語る偉い人消えるはずなき人命の数
待ち人の来ないテラスで飲むソーダ空に透かせばわたあめのよう
難問と言わざるを得ず選択を誤れば火の渦の中へと
日曜の終わりは目先まで迫りまる子のように地団駄を踏む
線香の匂いの満ちる町の中休みも終わる精霊送り
自販機の周りにたむろするハエと闇夜に放り出された大人
目の前に散る夜の花漂っていく煙すら掻き消していき
絶望の先にあるもの美化された死を光だと錯覚しだす
風鈴の奏でる曲は無防備な心をなでて一息をつく
手遊びをしながら過ごす授業中自由な鳥と曇りゆく空
燃え尽きるまでは一緒に生きましょう隣に並ぶ線香花火
日常が当たり前だと錯覚しいざ失えばなにも残らず
缶切りとパイナップルの缶詰と中断された家出と喧嘩
年月の過ぎる早さに目を剥いてシンクに落ちるにんじんの皮
関係を切りたいならばお早めに感謝を伝えハッピーエンド
放浪に暮れる私を探す者おらず飲み込む忘れ水かな
ぼんやりと箸を手にしたまま止まる庭の蜻蛉は気にも止めずに
怪談を聞いて背筋を走る霊祖父母の家の階段を行く
懐かしい声がした気がするだけで背後を向いてみても畦道
約束は破るものだと笑う君手に閉じ込めた受験番号
わからない息の仕方がいつまでも過去に縛られ背負う十字架
泣くことも許さないならこの腕のなかで眠ってくれていいから
早退しテレビをつけるお昼間の特別感と背徳感と
寝不足のまま玄関をくぐり抜け朝の空気が肌に染み込む
擦りむいた膝に滲む血勢いに任せて剥がす絆創膏を
机にはいくつも空を切り取ったカメラが置かれきみは映らず
愛すから愛してほしい百パーの命をかけて守りたいもの
待ち人に帰る場所すら火の渦にのまれて消えた向ける銃口
消えていく意味も言葉も声形なにも残らず冷たい墓場
竹林に響く虫の音この夏の終わりの見える風に酔いしれ
一冊の本を抱えて歩く道肌身離さず言葉と生きる
感情はせめぎ傷付け合う夜の防波堤には一羽のかもめ
関係は電波ありきで成り立っていることを身に染みる現代
似顔絵を書けば人かも分からないものが白紙に踊って転ける
成長と言えるだろうかかけられた言葉はやっと胸に溶け込む
一人では生きていけぬと理解していても真逆の反応をとる
踏切の音の聞こえる通学路向こうに行けばなにかこの手に
補習する意味はあるのか解答を見れどもなにも分からないまま
日曜の半導体のCMを見ながら思う月に行きたい
血の色に染まる野原を焼き付ける命もなにも残らない地に
恨めしいほどに眩しい観覧車いつか必ずあの日を迎え
ありがとうそしてごめんね息をすることさえ向いていない私を
海底の色を知らない滴って零れる雨の煩わしさに
麦わらの帽子は青へ旅をする誰も知らない景色に焦がれ
銃剣に野花をくくる怪物にならぬと勝てぬ世界に背く
失った言葉を摘んでいく秋の始まりに吹く風をみつめる
冬になるまでこの目には映らない朝日の昇る外の隔たり
レポートの期限は迫りパンクする夢だと気付くまでの心臓
苦しみの海に溺れていく夜の鈴虫の音は心をゆらし
思い出と共に死ねたら奪えない場所にあるもの震えなき声
漂って眠りについた小瓶たち星空まではあまりに遠く
錆びついたペダルを漕いで走る夏あとどれほどの日常を手に
絵葉書を手に取りゆるむ口角とほどける心今日も暑いね
眠れずに寝返りを打つ秒針が止まったままの時刻を眺め
ちらついて埃は落ちる煽りつつ飛び交うハエの方に苛立ち
幸せを感じる心まだここに確かにあったことを知る今日
読みながら知らず知らずに微笑んでしまうほどには美しい百合
残される者の気持ちも考えた上であなたは戦場へ行く
顔色をうかがい探すいい言葉最近あった笑いの種は
煙だけ交わすばかりの喫煙所名前も知らぬあなたの横で
混ぜ込んで握るおにぎり部屋中に広がる夏とミョウガの香り
私だけでは足りないと言うのかと叫ぶレタスにかける青じそ
分かり合うこともないのになにを言い伝えろと云う私は私
死を嫌い見たくもないと考えていたのになぜか舞台の上に
憐憫の情を浴びたいわけがなく隠して生きる人生の意味
今日もまた生き延びたこと目を閉じる度に死ねると思っていても
即席のラーメンすらも面倒で疎かになる食事の興味
永遠と回り続ける観覧車顔まで被る毛布は濡れて
過ぎてゆく海の向こうの雲の峰絵画のような快速の窓
諦めた夢を漁って流す汗明日を生きる口実づくり
仮眠だと自分自身に言い聞かせ夕暮れ色に染まる窓外
貞子にもなれるほどには長い髪夏風の吹く消えた面影
刑務所と囃し立ててはあの空の自由を願う児相の中身
教科書を詰めて何度も確認し朝も同じく時間割との
考える以上に生きている場所は小さな世界塹壕の土
抗えど勝てない悔いとその怒り目盛りを合わす着弾地点
どこまでも生きてほしいよあの星に手が届くならあげたい命
大丈夫言い聞かせればそのうちに裏に隠した満身創痍
寝る前のラジオの時間この夜が明けないのなら純粋なのに
スーパーのお菓子売り場は秋色に移ろい芋と栗につられる
跳ね上がる心臓を止めノックする職員室の前のひととき
無意識にあっちの道を目指し行く帰らなくてもいい気に満ちて
ぬるま湯にいつまで浸かる脱ぎ捨てた辛さは花を枯らして冬を
玄関に置き去りにした傘の色雨に濡れては笑って走る
ぼんやりと息だけをして過ぎる時目減りしていく日めくりの紙
何年も行けてはいない墓参り夏の景色の微かな記憶
あまりにも差がありすぎて仕舞い込む想いも知らずきみは微笑む
ダーリンと言いながら行く町の人横目に見てはそそくさと去る
親密な仲でも時が来ればまた他人となって違う岐路へと
眠たさのあまり頭はうごかない今日も今日とて生から逃げる
終末のように光っている空を見上げて過ごすお風呂上がりを
推察が当たらなければよかったと思うほどには変わる世の中
過ぎていく季節を目にし嫌悪する己の足は竦んだままで
ヤドカリもこだわりを持ち引っ越しを考えているそれに比べて
もういっそ逃避行してしまえたら目の前を行く貨物列車に
落ち着きを取り戻すため抱きついたまま離れずに明かしたい夜
焼肉を食らった後の片付けの虚無さ加減の人情のなさ
白状し薄情者と糾弾を食らうのならば嘘の土台を
目が覚めた瞳に映る曇り空まだ生きていることをあらわし
いつまでも受け身で生きていくのかと問われて仰ぐ入道雲は
新宿に憧れたのもいつの日か流行りは刹那電球ソーダ
挟まったままのテニスのボールから物悲しさが伝ってきても
立ち止まりふと考える帰らずにどこかに行って後は知らない
解かれた結び目をまたきつく締めどこにも行けぬ心を檻に
失ってから気付くこと枯れていく花を突っ込むポケットの中
燃やすのは全てあなたのためだから傷付かぬよう摘んだたんぽぽ
現実をこの目にすれば簡単に玉砕できるほど未経験
動けずに震えるばかり生きたまま屍になるなんてあまりに
先を読む力もなしに闇雲に食らうテトリス自分に呆れ
ぱくぱくと金魚は話す指先で答えてみれば背びれを向けて
愛してよ冷たくなった手を取ってせめぐ心の限界を知る
指先に光る祈りを目に焼いて帰りを待ってくれるあなたの
八月の終わりの暑さ枯れ枝と化したトマトの歪な形
戦いに挑むあなたを抱きしめて渡す言葉と無力な祈り
現実は優しくないと知りながら送り出したの手のひらを振り
満月を見上げて想うあといくつ夜を越えれば逢えるだろうか
2026年8月計220首
2026年計1725首
自選
夏空に吹き飛ぶシャボン玉の行く入道雲は眩しく白い
からっぽの金魚鉢にも生きていた命があって記憶もここに
消えていく意味も言葉も声形なにも残らず冷たい墓場
燃え尽きるまでは一緒に生きましょう隣に並ぶ線香花火
銃剣に野花をくくる怪物にならぬと勝てぬ世界に背く
こんにちは、雨宮雨霧です。
8月ももう終わり。今年ももう終わる。
百均に行ったらハロウィン仕様になっていて季節感がバグったり。
残暑が続きますがご自愛ください。




