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悪役令嬢の双子姫  作者: 雨月 桜姫
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ドレス選び

 

 目の前に広がるドレスの海に呑まれそうだ。


「ただいま戻りました」


 冷静なリリーの声を聞いて我に返る。

 思わず思考が停止していたようだ。


「お帰りなさいませ、お嬢様。さぁ、ドレスを選びましょう」


 レリアに言われてドレスの海へと近付く。

 普段から良く着るような暖色系、特に薄ピンクが多い。


 うーん…普段から来ているようなフリルとレースが沢山あしらわれたようなのも可愛いんだけど…せっかくのパーティーだし、少し普段とは変えたい感もある。


 ただ、水色等の寒色系ははアンジィが着るだろうから出来るだけ色は変えたくない。ピンク好きだし。


「お嬢様のお好きそうなものは手前に出してありますよ」


「まぁ、ありがとう。道理でどれも可愛すぎて選べないと思ったわ」


 ドレスの海の中を進みながら四方を眺める。

 ふと、視界の端に淡いピンク色がとまった。


「まぁ…これは……」


「ふふふっ。お気付きになられたのですね。こちらは以前、お嬢様が描いていらしたお花をモチーフにしているドレスでございます。素敵なお花でしたので、デザイナーに見せておいたのです。」


「桜…? 」


「さくら? とおっしゃいましたか?」


「え、ええ。その、本で読んだのよ。素敵なお花だから…」


「道理で見たことの無いお花だと思いましたわ! どこか異国にあるのでしょうね」


 桜のドレスの前に進む。

 白色と、どこまでも淡く優しい桜色をしたドレスだ。


 ふわりと広がるプリンセスラインは、淡い桜色のシルクの上に、薄い桜模様のレースが春を描いているよう。胸元とウエストライン、それからドレスの所々に、うっすらと透けるような桜が散りばめられている。フレンチスリーブの袖も、桜を集めたように作ってあり、桜の中央ではダイヤモンドが輝いていた。

 シースルーに加工されたシルクの上に桜のレースを重ねた、ドレスとお揃いのストールも着いている。


 この世界では、まだ桜の花を見たことが無い。けれども大好きだった花を、ふと思い出して絵に描いたことがあったのだ。

 それをレリアがデザイナーに見せたらしい。


 日本で作られたゲームだから、もしかすれば探せばあるのだろうか。


「これに決めたわ」


「まぁ! 素敵な判断だと思います! このお花、見たことはございませんけれど、お嬢様にとっても似合っていらっしゃるんですもの! 」


「うん。お嬢様にはそのドレスが似合いますね。この花も、まるでお嬢様のためにあるかのようです」


「もう…レリアもノエルも……そう言って貰えるのは嬉しいわ。ありがとう」


 大好きな花を似合うと褒められて喜ばないわけが無い。


「それではお嬢様、アクセサリーやお靴も専用のものがございます。そちらを持ってきて、1度全て合わせてしまいましょう」


 レリアがそう言うと、メイドたちが一斉にドレスを片付ける。


「それではノエル、アクセサリーや靴の準備を。ドレスルームに戻ってきたら、誰かに取りに行かせますので、中には入らないようにしてください」


「かしこまりました」


 ノエルがドレスルームから出ていったのを確認すると、レリアやリリーを筆頭とするメイドたちに囲まれて、あれよあれよという間に来ていたドレスを脱がされ、新しいドレスを着せられる。


「リリー、ノエルからアクセサリーと靴を受け取ってきてちょうだい」


 ノエルの指示で、リリーがアクセサリーと靴を取りに行く。

 裸足で男性の前に出るのははしたないとされているからだ。


 真ん中に大きな桜の花があり、左右に小さな桜の花がついたハイヒールだ。真ん中の花には大粒のダイヤモンド、左右の花には真ん中よりも小粒のピンクダイヤモンドが輝いている。

 足首には、バレエシューズのように、シースルーのシルクと桜模様のレースが巻かれる。

 足首はドレスで隠れるが、見えないところまで気を使うのがおしゃれというものだろう。

 ヒールは高すぎず、履きやすい。


「さて、次はアクセサリーですね」


 いつもよりも豪華に見えるように、髪を編み込んでハーフアップを作る。

 普段は編み込みのハーフツインだが、今回はひとつ結びらしい。

 編み込んだ先端から、小さな桜を飾って行き、1番後ろに1番大きな桜が来るように飾ってゆく。

 後ろから見れば花冠の様に見える。

 両端の小さな桜と、真ん中の大きな桜の中心がダイヤモンド、他は淡いピンクダイヤモンドだ。

 朝露のようにダイヤモンドを桜の周りに散りばめるように配置する。


 布ではなく宝石で作られた、桜のペンダントをすれば、ほんの少しだけ寂しかった胸元に華が咲く。


 ペンダントと同じ宝石で作られた、少し大きめな桜の下に、花びらがいくつも連なって揺れるイヤリングを付け、そっとストールを羽織ればお姫様の完成だ。


「まぁ……」


 メイドたちの息を飲む声が聞こえる。


「なんて…なんてお美しいのでしょう……」


 髪や瞳の色も、全体的にピンク傾向だから、カラーバランスが悪くなっていないか不安だったが大丈夫らしい。


「うふふっ! このドレスとっても素敵だわ。明日が楽しみね。さぁ、明日にとっておかなければならないから脱がせてちょうだい。確認は終わったでしょう? 今そんなに見たら明日の輝きが減ってしまうわ」


 呆けているメイドたちに声をかけると、弾かれたようにネグリジェに着替えさせてくれる。


 明日に備えて早く寝なければならない。


「お嬢様、明日は早いのでお休みになりましょう。アロマを炊いておきますね」


 レリアがアロマを炊いてくれる。オロールが先程のドレスに合わせて急いで選んでくれたものだ。

 いつものラズベリーティーにほんのりとバニラが混ざった香りに、春のような優しい香りが加わっている。


 ここの人達は桜の香りを知らないから、桜の香りではないけれど、スイーツやお茶と一緒にお花見をする時の香りを思い出した。


「お嬢様、睡眠前のハーブティーでございます」


「ありがとう、ノエル」


「明日の晴れ舞台、楽しみにしております。それに僕、お嬢様のドレス姿を見ていないのです。そちらも合わせて楽しみにしておりますね」


「ふふっ。そんなに期待されたら緊張しちゃうわ。でも、明日はきっといい日になるわ。なぜだかそんな予感がするの」


「お嬢様のお誕生日ですからね。僕が意地でもいい日にいたしますよ」


「ふふふっ。頼もしいわね」


 優しいハーブティーの香りが口に広がった。

何を隠そう著者は大の桜好きです。

桜が似合う主人公にしたかったのです。作者もこんなドレス着たいです……。

いつも反応下さる皆様、本当に励みになっております。ありがとうございます!

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