誕生前夜
どんどん明日が近づいてくる。まぁ当たり前である。
「お嬢様、緊張してます? 」
「よくわかったわね、ノエル。しっかり緊張しているわ」
「お嬢様って、気を許せる場所では以外と顔に出るんですよ」
「まぁ。そうかしら」
冷静に分析されていた。なんか恥ずかしい。
「そうですわね。初対面の人の前でしたり、大事なお話の時や、家庭教師の先生に習っている時等は貴族令嬢の鏡のようですけれど…気が許せる場所では表情が緩んでいたり、変わっていたりしますものね」
「レリアまで…。いいじゃない。家でくらい、ほんの少しでも気を許せる場所があっても」
「わたくしもノエルも悪いなんて言っておりませんよ。逆に可愛らしいではありませんか」
「そうですよ、お嬢様。逆に、このお屋敷や、僕達には気を許してくれている証拠でしょう? 」
少し得意げに、ニヤリと笑うノエルの顔が憎たらし……くて可愛い。
美少年と言うだけで、なんでも許されてしまう感じが羨ましい。
「…しょうがないじゃない。2人が大好きなんですもの」
ちょっと不貞腐れて言うと、お茶を淹れていたノエルがビクッと背中を動かした。
何をこんなに驚いているのかはよく分からないか、こんな時にもお茶をこぼしていないのはさすがとしか言いようがない。
「ノノノノノエル、動揺しすぎですよ」
かく言うレリアも、平然とした顔をしているが、ノ が多かった気がする。
2人ともお顔が赤いし…本当にどうしたのだろう?
「はぁ、お嬢様。いいから明日の準備をしてしまいますよ」
顔を赤くしたノエルにはぐらかされた気もするが、明日の準備をしなければならないのは本当だ。
「まずは湯浴みを済ませてしまいましょうか」
「リリー、オロールに伝言を」
部屋を整えたり、明日の衣装などの準備をしていたメイドの1人に指示を飛ばす。
「かしこまりました。失礼いたします」
リリーと呼ばれたメイドが凄まじい速さで部屋を出て行く。確か幼い頃から公爵家に使えている子だ。
うーん。あんなに早い動きなのに優雅なのよね。見習わなくちゃ。
「お嬢様、オロールの方の準備は整っているそうです。今から移動なさいますか? 」
5分も経たずに戻ってきたリリーは、息切れひとつしていない。
…体力が凄すぎない? 私ではなくとも、普通に歩けば大浴場まで5分かかる。行きも切らさずにそれを往復して、しかもそのうちの1分くらいはオロールと話していたと考えると……騎士の方が向いているのではなかろうか。
「そうですわね。今から入ってしまうわ。レリア、ノエル、後でドレスの最終選考をしたいわ。その準備をしておいてくれるかしら? わたくしはこちらのリリーと移動することにするわ。」
「かしこまりました。リリー、頼んだわよ」
「はい。それではお嬢様、失礼いたします」
リリーが私をふわりと抱き上げると、車椅子にそっと座らせる。
…なんか最近お姫様抱っこにも慣れてきた。
「それでは行ってまいりますね」
私がそう言うと、着替えなどを持ったリリーが車椅子を押して移動する。
「お嬢様ぁぁーっ! 」
大浴場に着くなり、オロールの熱烈な歓迎を受ける。
「お待ちしておりましたのよぉ。とうとう明日だなんて…このオロール、いつもに増してお嬢様を少しでもお綺麗にいたしますわぁ」
「えぇ、オロール。ありがとう」
「さぁさぁ、リリーも手伝って頂戴。お嬢様ぁ、ドレスを脱ぎますわよぉ」
オロールにドレスを脱がされ、リリーに髪を解かれる。
脱ぎにくいドレスも恐るべき速さで脱ぎ終わり、大浴場へ入る。
ゆっくりと優しく体を洗ってもらうと、やっと浴槽に浸かれる。
「お嬢様ももう5歳になるのですねぇ。アンジェリーヌお嬢様もそうでございますけれど……月日が過ぎるのはなんと早いのでしょう。明日の晴れ舞台、楽しみにしておりますわよぉ」
「ふふっ。ありがとう。オロールが私のために作ってくれた香りに包まれているのですもの。洗礼式をきっと成功させてみせますわ」
「まぁ……なんて嬉しいことを仰ってくださりますのぉ。さらにやる気が湧いてきましたわぁ」
雑談をしながら湯浴みとマッサージを済ませ、リリーに車椅子を押してもらいながらオロールも一緒に部屋へ戻る。
明日の最終ドレス選びをするのだが、似合う香りのアロマや香水をオロールに選んでもらうのだ。
「ただいま戻りました」
ドアを開けると、目の前にはドレスの海があった。
なんかおかしいと思っていたら、1話飛ばして投稿していたので編集し直しました。申し訳ございません……。誕生前昼の前に、誕生前朝 という話が入ります。大変申し訳ございませんでしたっ!




