洗礼準備
愛らしい鳥のさえずりで目を覚ます。
「おはようございます、お嬢様」
「ん…おはようございます、レリア」
「お嬢様、洗礼式の準備をいたしますよ。少しお忙しいと思いますが我慢してくださいませ」
目覚めの白湯を渡されて飲む。
外はまだ暗かった。
「ねぇレリア、先程鳥のさえずりで目が覚めたのだけれど、この時間に鳥は泣いていないのではなくて? 」
「ええ、本日は早いので、録音の魔術具をご用意させて頂きました。事前に鳥のさえずりを録音しておいたのですよ」
本で読んだのだが、確か録音の魔術具は魔術具の中でも高級で、扱いが難しかったはずだ。
そんなものを目覚めように使うとか……さすが公爵令嬢と言ったところか。
「さぁ、お嬢さま。まずは洗礼式の準備に取り掛かりますよ」
「昨日のドレスを着るのかしら? 」
「いいえ、お嬢さま、それは洗礼式後のパーティーでお召になりますよ。洗礼式できるのはこちらです」
そう言ってレリアが手にしたのは、うっすらと桜色を帯びたような白色のドレスだ。
プリンセスラインよりは膨らみが少ないAラインドレスで、デザインも清楚だ。
しかし、布や所々に飾られた花々が、清楚さの中にも愛らしさや気品を添えている。
「貴族の女の子の洗礼式は、皆が同じ型のドレスを着るのです。色も白色と決まっておりますが、ほんの少しならアレンジは自由ですので、許される範囲でどこまで家柄に相応しい気品を出せるかが大事になってくるのですよ」
「だから所々にお花が付いているし、色もよくよく見ると薄いピンク色のような白なのね」
「えぇ。お嬢さまに似合うよう、できるだけピンク色に近い白色のシルク生地を用意させて頂きました」
「このお花はレースフラワーかしら? 花言葉は゛可憐な心゛や、゛繊細゛だから神様の御前に赴くのにピッタリね」
「えぇ。こちらはレースで編まれたものですのによく分かりましたね。温室で育てた本物は髪飾りに使いますよ」
「まぁ! 楽しみね」
会話をしながら、部屋に備え付けてあるバスタブで、いつもより短い湯浴みをする。
昨日のドレスに合わせた香りの香油でマッサージをしてもらう。清楚なドレスにも充分似合う香りだ。
湯浴みを終えると、先に朝食だ。
フレンチトーストと紅茶を食べたり飲んだりしてる後ろでは、レリアによって髪が編まれていた。
ノエルは他の準備をしているらしい
朝食を終えたらドレスを着替える。
洗礼式用の白いコルセットを締めてもらい、ドレスを着る。パフスリーブのレースと、スカート部分のレースは同じ柄で、驚くほど繊細で薄い。
髪型はいつもの、編み込みのハーフツインだ。編み込みにレースフラワーを少しづつ差し込み、結び目にはブーケのように差している。
どうなっているのかは分からないが、下ろしてある髪型の所々にもレースフラワーが指してあった。
レースフラワーを模したイヤリングとネックレス、ブローチを付け、ドレスとお揃いのレースのパンプスを履けば完成だ。
メイクをすると派手すぎる顔になってしまうため、うっすらとチークだけを入れると、人形めいた顔が、大分人間らしくなった気がする。
血色の重要さを身に染みて感じた。
「さぁ、お嬢さま。準備は完了致しました」
「ありがとう。アンジィはもう準備できているのかしら」
「どうでしょう…先に広間に行っていらっしゃるかもしれませんね」
「それではわたくし達も向かいましょう」
広間に着くと、家族全員が既に待ってくれていた。
「フィオっ! なんて美しいんだろう!! まるで地上に迷い込んだ天使のようだね」
兄に抱き抱えられ、くるりと一回転回る。高い高いの進化版だ。歳は2つしか違わないのにもうこんなことが出来るとは見上げたものだ。
まぁ私が小さいのもあるんだけど。
「まぁ。お兄様ったら! そんなの天使様に失礼ですわ。それにほら、アンジィだって私よりももっともっと天使のようでしてよ」
「フィオ!? 何を言いますの!? あたくしよりもフィオの方が天使のよう…いいえ天使以上ですわ! 」
拳を握って力説するアンジィは、私と対に美しいストレートロングヘアで、色違いの様になるドレスを着ていた。
うっすらと水色がかって見えるような白色のドレスは、やはりレースフラワーで飾られている。ドレスも靴もアクセサリーも、全て色違いのお揃いだ。
髪型は特結ったりはせずに下ろしていて、蒼色のストレートロングヘアの美しさがよくわかる。
私と似たような位置に、やはりどう固定したのか、レースフラワーが付いていて、まるで夜空に浮かぶ星々のようだ。
「まぁまぁ!! 2人とも間違いなく天使のように可愛いわ! きっと神々も驚かれる事でしょうね」
感極まった様な母の隣では、父が優しく微笑んでいた。
「そうだな。2人ともとても美しい。誰もが一目で今日の主役だとわかる事だろう」
「まぁ…お母様もお父様もお上手なんですから」
クスッと微笑んでそういえば、少し方の力が抜けた気がした。
「お嬢様方、旦那様、奥様、お坊ちゃま、まもなく洗礼式のお時間です。」
モルガンの声に、全員の顔を見回した。
「さぁ、行きましょう」
確認するかのように頷き合うと、私達は足を踏み出した。
( ´ཫ`)




