執事
「ちょうどいいわ。わたくしの元で働かないかしら? 」
手を差し伸べてにっこり微笑む。
「なに? タダ働き? 」
「もぅ…。これでもうちは、使用人たちへの待遇が良いって評判なんですのよ。タダ働きなんてさせるはずありませんわ」
「ふーん。で、さっきも聞いたんだけど、君、誰? 見たところこの御屋敷のお嬢様ってとこだけど」
そういえばさっき答えてなかった気がする。申し訳ない。
「申し訳ございませんわ。わたくし、フィオラレーヌ・ステュアートと申します。あなたの推測の通り、このステュアート公爵家の長女ですの」
「そんなご立派なご令嬢様が僕なんかを雇うの? せいぜいお掃除係かな? 」
「いいえ。お掃除では御座いませんわ。あなたには…そうね、わたくしの執事をやっていただきたいの」
「は? ちょっと……執事って普通に考えて僕なんかがなれるものじゃないよ? 基本的に、代々使えている執事の家系でしょ? 公爵家なんだから、優秀な執事の一人や二人くらいは居ると思うけど 」
「あら。詳しいのね。でも、例外があってもいいと思わなくって? それに、丁度わたくしの専属執事を探していたところよ。」
「ふーん。で、僕にそれをやれと? もっといい人材はいくらでも居るでしょ? 」
「あなたでいいのよ。いいえ、違うわね。あなたがいいのよ。何でかは分からないのだけれど、あなたを見た時に思ったの。あなたがいいわ。」
本当になぜかは分からない。けれど、この子の瞳を見ていたらそう思えた。沢山傷ついた瞳。それでも立ち上がってきた瞳だ。
私の、゛みゆ゛のよく知る瞳だ。
「……別にいいよ。きみの執事、やればいいんでしょ」
「まぁ! 本当に!? 嬉しいわ。ありがとう」
「うん…」
心無しか顔が赤い気がする。
「細かいことは後で説明するわね。その前に、とりあえず綺麗にしましょう。レリア、ニコラの所へ伝達を」
「かしこまりました。お嬢様」
レリアに頼んで、男湯の湯守の元へ伝達を向かわせる。
「さぁ、行きましょう? 」
灰色の子に手を差し伸べて微笑む。
「……うん」
灰色の子が私の手を取って立ち上がる。
「さぁお嬢様、こちらにお乗り下さい」
……そうだった! 私今お部屋まで歩けるほど体力ないんだったぁぁ!
恥ずかしい。恥ずかしすぎる。手を差し伸べたくせに歩けないとか……。
「…」
笑いを堪えられた。恥ずかしい。穴を掘って入ろうかしら。
「さ、さぁ。早く行きましょう」
もう何事も無かったかのように御屋敷の中へ向かう事にする。
「わたくしはお部屋で待っていますけれど、この子の面倒を見る人が必要ね。それに、今後の教育係も……モルガンに頼みたいのだけれど…今は大丈夫かしら」
ちなみにモルガンは、この御屋敷のとても優秀な執事長である。ダンディーで優しそうな、いかにも な執事だ。
「そうですね…聞いて参りましょう」
レリアが指示を飛ばして、メイドが呼びに行く。レリアも優秀だ。
モルガンは優秀な執事なので忙しい。多分無理だろう。そもそも見つけられるかどうかすら怪しい。
「お呼びでしょうか。フィオラレーヌお嬢様」
とか思ってたら目の前に現れた。優秀な執事は、見付けられないどころかすぐに飛んできてくれるらしい。
「モルガン、お願いがありますの。この子なんだけれど、わたくしの専属執事にしようと思って。教育係をお願いしたいわ。よろしいかしら」
「なるほど……もちろんですとも。フィオラレーヌお嬢様のお願いとあらば、このモルガン、精一杯努めさせていただきましょう」
「まぁ。頼もしいわ。ありがとう」
「それでお嬢様、早速ですがこの子をお借りしても? 汚れを落として傷の手当をしたいのですが」
「流石モルガンね。丁度それを頼もうとしていたところよ。お願いできるかしら? 」
「もちろんでございます。それでは坊やをお借りいたしますね。さ、坊や。綺麗になってから、フィオラレーヌお嬢様にお顔を見せましょう」
「…うん」
「わたくしはお部屋で待っておりますので。行ってらっしゃいませ」
微笑みながらひらひらと手を振ると、灰色の子も手を振り返してくれた。なんだか嬉しい。
「さぁお嬢様、お部屋に戻りましょう。お熱が長引きますよ」
熱が出る事前提だ。いいけど。事実だからいいけど。
車椅子の中で、ほんの少しだけ頬をふくらませた。
めりぃぃぃぃぃーくりすまぁすっ!
メリクリです!
まだ小説が進んでないので番外編が書けません。悲しいわ……(哀愁)
毎回お読みいただいている方、本当にありがとうございます!
また反応頂けますと、明日もケーキを作ります(作者得)
いつも本当にありがとうございます。




