散策
「エルネスト様、お楽しみのところ申し訳ございませんが……。もうすぐ家庭教師がやって参ります」
「あぁ。もうそんな時間か。本当はもう少し長居したかったのだけれど…」
お兄様が、寂しそうな目でちらりとこちらを見てくる。
「お兄様、また今度ご一緒いたしましょう? お勉強は大事ですもの。わたくし、応援しておりますから行ってらっしゃいませ。」
にこやかに手を振って促す。
「うーん。そうだね。仕方がない。また今度ご一緒させてもらうよ、お姫様」
にこりと微笑んでそう言うと、お兄様は席を立つ。
「おーほほほほほ。お兄様は早くお勉強に行ってらっしゃいませ! その間あたくしはフィオと二人でお話しておりますから!! 」
笑い方がもう悪役令嬢だ。
この笑い方は初めて遭遇した。実際に見たら笑うだろうと思っていたが、アンジィはポーズも笑い方もしっかり馴染んでいる。
さすが悪役令嬢だわ。
お兄様は黒い微笑みを浮かべるとアンジィ付きのメイドに声をかける。
「確かアンジィの家庭教師は明日だろう? 座学だったと思うんだけど、宿題は終わっているのかい? 」
さぁーっとアンジィが青ざめる。
「そうですわ! お嬢様!! このお茶会が終わったら宿題をやると言っておりましたでしょう? そろそろ始めませんと、明日に間に合いませんわよ」
「……そうだわっ!! フィオ! フィオも明日は座学の家庭教師でしょう? フィオはあたくしよりも難しいところをやっていますけど、宿題は一緒にできますわ!! 一緒に宿題をやりませんこと? 」
名案を思いついて、目を輝かせながらお兄様にドヤ顔を向けるアンジィ。
「アンジェリーヌお嬢様、申し上げにくいのですが……実はフィオラレーヌお嬢様は宿題が終わっておいでです」
レリアが私の代わりに答える。
「そう……」
今度はお兄様がアンジィにドヤ顔をする番だった。
別にアンジィに付き合ってもいいのだが、せっかくお外に出られたので出来ればもう少しお庭に居たい。
「アンジィも頑張ってくださいませ」
微笑んで手を降ればアンジィも泣く泣くメイドに連れられて行く。
「賑やかでございましたね」
「ええ、そうね。2人がいると退屈しないわ」
「それではお嬢様、ここは片付けますので、ごゆっくり」
「ありがとう。助かるわ」
お庭に目をやる。とてつもなく広いお庭である。
ほんの少し歩いてみようかしら。
お庭の柵の方へ向かってみる。
うちの御屋敷の門は3つあり、今居るお庭のゾーンである『純白の光園』には3つのうち1つの門がある。
ちなみに、うちのお庭のゾーンは大きくわけて7つある。『純白の光園』、『宵闇の懐』、『清廉なる泉』、『燃ゆる楽園』、『妖精の戯れ場』、『命の芽吹き場』、『姫神の通り道』 である。
名前でわかると思うが、7つのうち6つはそれぞれの魔法の属性を表している。
『姫神の通り道』は、正門から御屋敷の入口までの、長いフラワーロードを指すめ。
北側を背にして建っているので、だいたい『姫神の通り道』は南に伸びており、東に『純白の光園』、それを囲うように南東には『清廉なる泉』、北東には『妖精の戯れ場』がある。 そして西に『宵闇の懐』、南西に『燃ゆる楽園』、北西に『命の芽吹き場』がある。
これは神話に出てくる神々の位置に忠実に造られている。
神話についてはうろ覚えだから、また今度本を読もうと思う。
そしてそれぞれの名前に似合ったお花が植えられ、名前に負けないお庭になっているのだ。
ちなみにこのお庭達は、我がステュアート公爵家の自慢のお庭であり、国家も誇るものなのである。
少し話を戻すが、今居る『純白の光園』と、『宵闇の懐』には、正門ではないが門が有るのだ。
せっかくだから敷地外が見てみたい。
敷地内から出ることは出来ないだろうが、ちらっと外を覗くくらいなら許されるだろう。
レリアと共に門の方へ近づいてみる。
なんだか少し騒がしい。
レリアと顔を見合わせてさらに近づく。
門番が慌てたように敬礼をした。
どうしたのかしら?
門の外を覗くと……灰色の何かが蹲っていた。
おはこんばんにちは。今日はちゃんと更新しました。ドヤ顔です(((
皆様のあたたかい反応に、毎回色々な反応をしております。今回は心を込めてフラダンス踊らせていただきます。いつも本当にありがとうございます。




