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悪役令嬢の双子姫  作者: 雨月 桜姫
13/25

記憶

 

『ねぇねぇ、みゆ、聞いて聞いて! 』


『なぁに? れな。またゲームのお話? 』


『ゲームについてお話したいことももちろん沢山あるんだけどね、今日は違うの! 』


『そうなの? 珍しい』


『もーぉ。私がいつも乙女ゲームの話しかしないと思ったら大間違いなんだから! 』


『ごめんって。で、どうしたの? 』


 パァンッ


 突然の音と、舞い散る紙吹雪に驚く。


『みゆ〜!! お誕生日おめでとうっ! 』


『……』


『今日はみゆのお誕生日でしょ? でねでね! じゃっじゃーん!! サプライズ〜。お誕生日プレゼント用意したの! ほら! みゆってよく本読んでるでしょ? 押し花の栞と、それから手縫いのブックカバー』


『……』


『どうどう? 気に入ってくれた!? 一応私も入院中で病院から出にくいから、こんな不器用な感じのものになっちゃったんだけど。でも、出来るだけ私が関わったものをプレゼントしたくて……ってみゆ!? ど、どうしたの!? なんで泣いてるの!? 』


『嘘……私、泣いて……? 』


『ご、ごめん! こんな歪なプレゼントじゃやだったかな。す、すぐ新しいプレゼント用意するね! 』


『……がう』


『え? 』


『……違うの』


『何が? 』


『……嬉しいの。お誕生日を……こんな風に…精一杯……心から祝ってもらったのって、久しぶりで……』


『……みゆ』


『れなっ! ありがとう…。プレゼントも大切にする。 本当に…本当にありがとう』


『みゆ、ありがとうはこっちのセリフ! いつも私の話聞いてくれてありがとね。くだらないことも一緒に笑ってくれて、何かあったら一緒に悩んでくれて、辛い時は何も聞かずにそばに居てくれて、そんなみゆだから私はお祝いしたくなったの! 生まれてきて来てくれてありがとう。私と出会ってくれてありがとう』


『…っ。れな……』


『お誕生日のおめでとうにはね、ありがとうって意味が込められてるんだよ。生まれてきて来てくれてありがとうって、そう思うからお祝いするんだよ』


 ずっとお誕生日は辛い日だった。

 どんなに豪華なプレゼントが届いても。

 どんなに高級な食事が用意されても。

 1人でいるなら意味がなかった。

 たった1人で、豪華なプレゼントに囲まれて、どこかの三星シェフに作らせた料理を食べて。

 まるで普段の穴を埋めようとするかのように豪華な誕生日は、しかし寂しさを際立たたせるだけだった。


 高級マンションの最上階から1人見下ろした夜景は、きらきらと煌めいて、私を嘲笑っているように見えた。


 歪なプレゼント。時間をかけて、思いを込めて作られたのがよくわかる。

 

 ああ。私はやっぱり寂しかったんだ。

 知らないフリをして、強いフリをして、その気持ちに蓋をしてきたけれど。

胸の奥からあたたかいものが込み上げて来る。


 拭うことすらせずに、ただただ涙が流れるままにれなに微笑む。


『ありがとう。こんなに幸せなお誕生日…いつぶりかしら』


『喜んでもらえて良かったぁ…』


『……れな。 れなも…れなもありがとう! 生まれてきて来てくれて……私と出逢ってくれて』


 泣きながら微笑んだからきっと歪な笑みだろう。れながくれたプレゼントみたいに。でも、歪でもありったけの想いが詰まっている。


『ふふっ。こちらこそだよっ! みゆ! 』


 この子が居れば、きっと来年のお誕生日も輝く物になるのだろう。

 私もこの子のお誕生日を輝く物にできるようにしないと。

 

 もうお誕生日は辛い日じゃない。




 ーーーー


「ま……様! ……お嬢様!! 」


 はっと瞳を開く。

 夢を見ていた。


「お嬢様! 大丈夫で御座いますか!? うなされておいででしたよ。」


「…大丈夫よ。少し…夢を見ていたの」


「夢……でございますか」


「ええ。汗をかいたみたいだわ。着替えたいのだけれど、お着替えを持って来てくださるかしら」


「もちろんでございます。少々お待ち下さいませ」


 前世の夢だ。最後のお誕生日の夢。

 あの時、久しぶりにお誕生日を幸せだと思えた。お誕生日の意味を知った。


「もうすぐ……お誕生日だわ」

 

「そうですね。もうすぐお嬢様も五歳…。貴族の子女として認められるのですね」


 私のこぼした呟きに、体を拭いてくれていたメイドが応える。

 

「あと1ヶ月…。わたくし、もう5歳になるのね。」


「ええ。楽しみでございますね」


「……楽しみ? 」


「ええ! もちろんでございます! お嬢様がまた一年成長出来たという証拠でございます。私達メイドにとって、これ以上嬉しいことはございません」


「そう……ありがとう」


 不覚にも瞳が潤んだ。メイドからは見えない位置で良かったと思いながら、体を大人しく拭かれ、ネグリジェを着替えてまた眠った。

ブクマ100件ありがとうございますっ!!

モチベが大変上がります。 今回は反応頂けますとベッドの上でほふく前進致します。

これからも是非よろしくお願い致します。

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