記憶
『ねぇねぇ、みゆ、聞いて聞いて! 』
『なぁに? れな。またゲームのお話? 』
『ゲームについてお話したいことももちろん沢山あるんだけどね、今日は違うの! 』
『そうなの? 珍しい』
『もーぉ。私がいつも乙女ゲームの話しかしないと思ったら大間違いなんだから! 』
『ごめんって。で、どうしたの? 』
パァンッ
突然の音と、舞い散る紙吹雪に驚く。
『みゆ〜!! お誕生日おめでとうっ! 』
『……』
『今日はみゆのお誕生日でしょ? でねでね! じゃっじゃーん!! サプライズ〜。お誕生日プレゼント用意したの! ほら! みゆってよく本読んでるでしょ? 押し花の栞と、それから手縫いのブックカバー』
『……』
『どうどう? 気に入ってくれた!? 一応私も入院中で病院から出にくいから、こんな不器用な感じのものになっちゃったんだけど。でも、出来るだけ私が関わったものをプレゼントしたくて……ってみゆ!? ど、どうしたの!? なんで泣いてるの!? 』
『嘘……私、泣いて……? 』
『ご、ごめん! こんな歪なプレゼントじゃやだったかな。す、すぐ新しいプレゼント用意するね! 』
『……がう』
『え? 』
『……違うの』
『何が? 』
『……嬉しいの。お誕生日を……こんな風に…精一杯……心から祝ってもらったのって、久しぶりで……』
『……みゆ』
『れなっ! ありがとう…。プレゼントも大切にする。 本当に…本当にありがとう』
『みゆ、ありがとうはこっちのセリフ! いつも私の話聞いてくれてありがとね。くだらないことも一緒に笑ってくれて、何かあったら一緒に悩んでくれて、辛い時は何も聞かずにそばに居てくれて、そんなみゆだから私はお祝いしたくなったの! 生まれてきて来てくれてありがとう。私と出会ってくれてありがとう』
『…っ。れな……』
『お誕生日のおめでとうにはね、ありがとうって意味が込められてるんだよ。生まれてきて来てくれてありがとうって、そう思うからお祝いするんだよ』
ずっとお誕生日は辛い日だった。
どんなに豪華なプレゼントが届いても。
どんなに高級な食事が用意されても。
1人でいるなら意味がなかった。
たった1人で、豪華なプレゼントに囲まれて、どこかの三星シェフに作らせた料理を食べて。
まるで普段の穴を埋めようとするかのように豪華な誕生日は、しかし寂しさを際立たたせるだけだった。
高級マンションの最上階から1人見下ろした夜景は、きらきらと煌めいて、私を嘲笑っているように見えた。
歪なプレゼント。時間をかけて、思いを込めて作られたのがよくわかる。
ああ。私はやっぱり寂しかったんだ。
知らないフリをして、強いフリをして、その気持ちに蓋をしてきたけれど。
胸の奥からあたたかいものが込み上げて来る。
拭うことすらせずに、ただただ涙が流れるままにれなに微笑む。
『ありがとう。こんなに幸せなお誕生日…いつぶりかしら』
『喜んでもらえて良かったぁ…』
『……れな。 れなも…れなもありがとう! 生まれてきて来てくれて……私と出逢ってくれて』
泣きながら微笑んだからきっと歪な笑みだろう。れながくれたプレゼントみたいに。でも、歪でもありったけの想いが詰まっている。
『ふふっ。こちらこそだよっ! みゆ! 』
この子が居れば、きっと来年のお誕生日も輝く物になるのだろう。
私もこの子のお誕生日を輝く物にできるようにしないと。
もうお誕生日は辛い日じゃない。
ーーーー
「ま……様! ……お嬢様!! 」
はっと瞳を開く。
夢を見ていた。
「お嬢様! 大丈夫で御座いますか!? うなされておいででしたよ。」
「…大丈夫よ。少し…夢を見ていたの」
「夢……でございますか」
「ええ。汗をかいたみたいだわ。着替えたいのだけれど、お着替えを持って来てくださるかしら」
「もちろんでございます。少々お待ち下さいませ」
前世の夢だ。最後のお誕生日の夢。
あの時、久しぶりにお誕生日を幸せだと思えた。お誕生日の意味を知った。
「もうすぐ……お誕生日だわ」
「そうですね。もうすぐお嬢様も五歳…。貴族の子女として認められるのですね」
私のこぼした呟きに、体を拭いてくれていたメイドが応える。
「あと1ヶ月…。わたくし、もう5歳になるのね。」
「ええ。楽しみでございますね」
「……楽しみ? 」
「ええ! もちろんでございます! お嬢様がまた一年成長出来たという証拠でございます。私達メイドにとって、これ以上嬉しいことはございません」
「そう……ありがとう」
不覚にも瞳が潤んだ。メイドからは見えない位置で良かったと思いながら、体を大人しく拭かれ、ネグリジェを着替えてまた眠った。
ブクマ100件ありがとうございますっ!!
モチベが大変上がります。 今回は反応頂けますとベッドの上でほふく前進致します。
これからも是非よろしくお願い致します。




