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31日の夏物語  作者: Monty
13/28

8月12日

この日、俺は5日ぶりに花陽さんの元に行くことにした。


昨日、山で会ったときには、話しかけることすらできず、すぐに俺の横を花陽さんは走り去っていってしまった。


月明かりしかなかった山の中に、すぐに花陽さんの姿は消えてしまいあとを追うことすらも不可能であった。


ただ、歌っているときの彼女の姿は楽しそうに見えたが、彼女の瞳からは本当の楽しさを感じられなかった。


どこか悲しげで、それで本当に放って置けなくて美しすぎて見とれてしまう少女だった。


俺は、大きな目的はなかったが、ただ行かなければならない気がして仕方がなかった。


朝ごはんを食べ終わってすぐ、家から飛び出した。


なぜか、時間が経てば経つほど花陽さんの元に行かなければならないという気持ちが強くなっていったのだ。


「がんばってね、おにいちゃん」


玄関から何か聞こえた気がしたのだが、それを気にする心の余裕もなくただひたすらに坂を上り走った。


他人に比べ圧倒的に運動能力が低い俺だが、このときは誰にも負ける気がしなかった。


息を切らしながらも花陽さんの家の前に付いた俺は、深く考えずこう叫んだ。


「花陽ーーーーー!」


朝っぱらからこんな大声で大迷惑なのも百も承知の上である。


でも、そんな他人の迷惑や自分の恥ずかしさなんて今はどうでも良い。


しかし、この叫び声に誰も反応してくれることはなかった。


普通の俺なら待ったり諦めたりするが、今の俺にはそんな考えは一切ない。


玄関が開いていることを確認してからは一瞬だった。


家の中からは小さな泣き声が聞こえてくる。


俺は、一度だけ行ったあの部屋に、小さな泣き声が聞こえるあの部屋に向かって全力で駆けた。


「花陽!」


勢い良く部屋の扉を開けた俺に映りこんできたのは、部屋の隅で小さくうずくまる彼女の姿だった。


「あきら...くん...?」


俺の声を聞き、花陽はゆっくりと顔を上げる。


花陽の目からは、今も絶えず涙が流れ続けていた。


俺は、その姿を見て何も考えずに本能のままに花陽に抱きついた。


「ごめん...ごめんよ、花陽。あれを聞いた後から、俺は建前を作ってお前と正面から向き合うことをしなかった。俺を、許してくれ...」


「なんで、明くんが謝るの...。ほんの数日前までただの他人だったのに...いや、今でもほんの少ししか接点がないはずなのに...なのに、明くんは私と少しでもこうして向き合おうとしてくれている。ありがとう」


そのまま数分間、2人で抱きしめあっていた。


しかし、数分後に俺の意識は元に戻ってしまいこの状況を冷静に分析し始めてしまう。


(え?待って、なんで俺花陽さんと抱き合ってんの...やってしまった!)


俺はすぐさま離れて、土下座で謝りまくる。


「花陽さん!ごめんなさい!花陽なんて呼び捨てにしてごめんなさい!いきなり抱きついちゃってごめんなさい!無断で入っちゃってごめんなさい!...ってか、最後のはただの不法侵入でした!お願いします通報しないでください!」


俺の嵐のような謝罪文を聞いた反応は...


「はあー、せっかく良い感じだったのに、台無しだよ。もう、通報しようかなー」


「ちょっ!った!っ待って、マジで待って!」


「嘘だよ...ほら、顔...上げて」


俺はゆっくり顔を上げる。


腕を突いたまま見上げたその先には...


「本当に、ありがとう!明くん!」


さっきまでとは違う意味の涙を流した、最高の笑顔の花陽の姿があった。




今回もお読みいただき、ありがとうございます!

長さ的には、昨日の倍ぐらいにはなったので許してください...

重要な回でしたが、表現下手すぎですいません。

でも、明日期待してください!(毎回こんなこという)

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