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魔王との戦闘

剣が交わり、甲高い音を立てる。


「あれれー?思ったよりも、弱い?調子こいてかかってきた癖に、雑魚なの?」


ニヤニヤと笑う男。

怠そうに片手に引っさげている真っ黒な剣。


というか、早い。

茜より早いなんて、異常だ…。


僕は初っ端から、奥義を使う決意をする。


ふらりと僕の身体がブレる。

それでも異常な早さで迫る剣を避けて、僕の刀を振るが、届かない。


「あり?身体がブレた?早くないし、なんかの技術かな?」


怠そうに下げていたはずの剣が一瞬ブレる。

同時にパンッと空気を叩く音がする。

まさか、剣を振ったの?


突進してきた身体を何とか避けようとするが、僕の肌を剣が舐めていった。


ウソ…だろ?

歯が立たないとはこのコトだ。

勝てない。

勝てっこない。


「なんか、震え始めたし。てかさー、ホントに勝てると思ったのー?お前さ、勇者じゃないじゃん。異世界転移による身体強化もなしに、俺に勝てるわけなくね?」


異世界転移による身体強化?

僕も異世界を転移してきたはずだ。


再度の突進をなんとか刀で防ぐ。


「気付いてなかったの?俺たちはさ、遊び道具なんだよ?神様が見ていて楽しいように、お前は召喚されたし、俺も生まれた。最初から決まってたんだよ?お前が死んで、勇者の聖剣がここに刺される。それは俺には抜けない。勇者が君を殺されたコトを怒り、僕の元へ来て聖剣を抜く。そして、俺は殺される。そういう物語。神様は、君を騙したんだ。君が死ななくてもあの勇者は僕を倒せるし、誰も死なない。」


ぎゃははーと笑う男。


「アイツラは見たいのさ。あの女の子達を守れず、勇者を守れずに死んでいく絶望に染まった君の姿を。」


確かに、僕なんかに勝てる訳がない。

茜なら倒し方でも思いつくのだろうが、僕には思いつかない。

ただただ、倒される未来しか想像できない。


「そうだねー。君を縛り上げて、あの女の子達でも犯してあげようか?自殺出来ないように栄養も与えてさ。一人一人、犯されて衰弱して死んで行くのさ。それを見ながら、君は死ねない。最後には殺してくれとだけ呟く人形になる。どうかな?」


僕は、初めて突進した。

必死に刀を振る。


「ムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリムリ。」


僕の必死の剣を簡単に防いで笑っている。

悔しくても、傷一つつけるコトが出来ないだろう。


「必死だね!バカみたいに必死に聖剣振ってさ。本当に、バカみたいだね。」


地面に躓いて、僕は地面へと倒れる。


「わかってるよ…。わかってたんだよ!僕が勇者になんてなれないってコトはさ!それでも!アイツを守れんだったらって!」


左手を地面に叩きつけた。

痛みが走るが、僕は気になんてしてられない。

立たなければ、ただやられる。


「わかってたんだ。ならー、わかるよね?俺を殺した後に勇者がどうなるか。わかんないとは言わせないよ。」


そう、わかっていた。

元の世界には帰れない。

世界中で、勇者を仲間にする方法を探す。

で、勇者の国が戦争をはじめる。

人を何人も殺して、勇者は壊れてしまう。


「だから、どうしろって言うんだよ!僕には、何も出来ないままじゃないか!」


ただ、魔王の前で地面に這いつくばるコトしか出来ないのは、変わらない。


「ねぇ、偽勇者君、俺に力を貸してよ。そしたら、勇者を助けてあげる。」


魔王は僕に手を差し伸べた。

残酷な選択だ。


「僕は、僕の仲間はどうなる?」


死にたくなんてない。

僕の命で茜が、仲間達が助かるならって思っていた。


「そうだね、仲間の子達は殺したフリして、地下にでも入れておこう。そうそう、外の子達はもう負けた後だよ。」


その言葉を聞いた瞬間、僕は元来た道を引き返していた。

そこには、言われた通り、イリス、フェリティア、エリカの三人が倒れていた。


「…アスカ。ごめん。でも、魔王は倒したんだよね…?」


僕はフェリティアの言葉に、固まる。


「違うよー?彼は君たちが倒されて、人質にされて、僕の傀儡になるの。君達さえやられなければ、僕を倒してたかもしれないのにねー?」


魔王が笑いながら歩いてくる。


「ねぇ、偽勇者。手を貸してよ。じゃないとその子達、殺すよ?」


僕は刀を落とした。

そのまま、土下座して頭を擦り付ける。


「力でも何でも貸します。だから、お願いします。助けてあげて下さい。あの子達の首に突きつけられてる、剣を避けてあげて下さい。」

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