-(仮)9-
先日の活動報告で書きましたとおり、書きかけです。暫定です。仮です。今後、改稿・加筆の予定ですが、いつ出来るかわかりません。また場合によっては内容が変わる可能性があります。以上ご了承ください。
ぶっちゃけ忙しかった。宿泊研修までの時間が少なすぎる。お陰で学園散策がまだ完了していないという残念無念。
飯盒炊爨やったことあるヤツをピックアップしてみたところ、各クラスに二、三人いた。
外部生の半分は使えないという結果だったがさもありなん。家族がアウトドア好きだとか、ボーイスカウト入ってたとかいうならいざ知らず、普通にしてたらあまり機会ないもんな。
学校の林間学校だって小、中で各一回ずつ。そこでやったとしても二回の経験じゃあ、先頭に立って積極的にやりましたってんじゃなきゃ無理。
第一この学校に進学出来るって事は今まで勉強重視できただろうし、アウトドアイメージはない。
だから外部生の半分が使えるというのがむしろ驚きかもしれない。と、後から思った。後からな!
本音? 聞く? 聞いちゃう? んなもん、もちろん。使えねー!! の一言だろJK。
ちなみに我がクラスの同士外部生は半分の二人出来るらしい。拍手。
俺のうちはなんだかんだ言って親父がそういった事が好きだ。まあ自然が好きっていう感じではあるけど。あと設計事務所で毎年バーベキューをする。それを家族総出で手伝うから慣れてる。
あれ、結構なんでもアリなのか我が家。……まあいいや。器用貧乏い……げふんげふん。
さておき。
やるべきことはやった。上條(推定)腹黒元副会長にも遭遇しなくてすんだし、めんどくせー鷹成様信者?の北園某との接触もなし! あとは野となれ山となれである。
最終的には俺(の班)の昼飯が確保されればいいのだよ。ふはははは。
「というわけで鷹成君。君にこのマニュアルを渡そう。熟読するがよい。そして脳内トレースして本番に備えるのだ。君になら出来る! 否、出来ない筈がないのだ。ヒーローに死角なし! ……多分」
「いきなり何を言ってるんだお前は」
用事済ませて教室に戻ってくれば暇そう、かつ無駄に偉そうな奴を発見。
適当な事を言いつつ鷹成に火のつけ方だの飯盒炊爨のやり方だの書いたお手製冊子をズビシッと手渡してみた。委員と経験者に配った冊子を一人分余分に作っておいたのだよ。
俺がまともに自分の班に戻って監視(!)出来るかどうか分からない為ちょっとした保険だ。
最初は奴を使う気はなかったが、背に腹は代えられんのだよ。一つ重大な事を忘れてたし余計にな!
疲れて戻ってきたら自分とこは壊滅的状況で昼飯食べれんでしたとか言ったら沈むだろう、俺が。三食のご飯は大事だ。一食でも抜くなんて考えられん……っ。
そこで俺様何様鷹成様の登場である。
鷹成に取り扱い説明書を読み込ませておけば、多分実践もイケル。なんと頼りになる幼馴染か!
ハイスペックなお前に俺は期待している。やれば出来る子! というか、出来ないことってねーよな。挫折を知らんてある意味恐ろしいが。
む、まさかその挫折ってのが後のちのキーワードに! なんてなー。
もしそうなったら頑張れまだ見ぬヒロインよ。俺は底辺を彷徨うのかもしれない鷹成の不死鳥のような復活を応援している。新生鷹成・爆誕 (キラッ)
そんとき俺は何やってんだって? いやだから応援してるって。画面の外から旗振って。
流石にほっぽりゃしないけど、ヒロイン様の仕事だからね? 多分ゲーム期間中はヒロイン以外に復活の呪文唱えても不発に終わるんじゃねーかと予想。
じゃなきゃ意味ねーじゃん。
「ヒロインの言動」だから「悩みが解決」されると思うんだよ。他人が同じ台詞を言ったとしてもダメなんじゃないかと。
多分な。
「わー、懇切丁寧だねぇ」
ちなみにいつの間にやらよってきて、ペラペラと捲る鷹成の手元をちゃっかり覗き込む羽柴よ、お前には期待しとらん。欠片もだ! むしろ興味持つな、頼むわ。
そう、忘れていた重要な事とはコイツの事である。
同じクラスになったことは無いが、中学で同じ生徒会役員やってた時に聞いていたのだ。羽柴の調理実習の腕前とかな。
包丁どころか食材に触らせることすらさせちゃならねぇらしいぜ。何なんだ悪魔の最終兵器って。何やったんだ一体。
どうしたらそんな結論になるのか謎だが、羽柴と同じクラスだったことのある奴らも皆同じ反応になっていたから、今回一切合切頼るつもりがない俺だ。
……なんだろう、同じく攻略対象だというのに鷹成との差は。このチャラ男、残念臭しかしないんだが!
ホントにこんなんで立派な攻略対象になれんのか。おっちゃん心配になってきた。
ヒロインちゃんががっかりしちゃったら可哀想だろう!
「お前はな、チャラ男らしく女子に『料理の出来る子っていいよね』とかなんとか言っておだてるのが役目だからな。絶対に手を出すなよ!」
「ん~? どっちに?」
「はぁーっ」
へらりと笑う羽柴よ。鷹成なんかその発言のアホさ加減に視線すら寄越さんぞ。
毎度まともに相手にされないのに寄ってくる羽柴はある意味偉大である。こいつのお陰で鷹成の人を寄せ付けないオーラが若干緩和されもしているのだ。羽柴に意図があるのかどうかは分からんが助かることは確かだ。
しかしそれとは話が別である。うぜぇ(正直者)。中学時代を知ってるだけに、そのエセチャラ男っぷりがうぜぇ!
そもそも女子に手を出すなとかってお前、出させてもらえるのかよ。一応イケメン扱いはされてるが、頭に「くすっ」と笑いが付いてるようにしか見えんのだがな!
「あー、まー、どっちも手ェ出さないようになー」
半目でおざなりに片手を振る。さらば! 今日はもう解散!
「鷹成帰るぞー」
「ああ。お前は今日も自転車だったか」
「もちろん。一旦帰ってからお前んち行くわ」
「わかった」
「ちょ、相変わらず君たちオレの扱いひどいよね!?」
「じゃなー、クラスメイト諸君!」
「芦沢おつかれー」
「またねー」
「だからー!!」
俺達のやりとりに、クラスメイトの弾けるような笑い声。そして羽柴の叫びは全面的にスルーである。
ま、それをネタに羽柴はまた女子と打ち解けおしゃべりという流れがここ最近出来上がってきているという。故に口で言うほど奴は憤慨などしていないと確信している。
ちなみに羽柴がここまで情けないのは俺と鷹成の前だけのようで、普段はちゃんとイケメンチャラ男として通っている。だから女子うけも全くもって悪くないし、確実にモテてきている。中にはわざわざ俺ら三人のやり取りを見に来る女子もいるとかいないとか。
ギャップがいいとか、解せぬ。
二度言おう。
全くもって俺には解せぬ。俺は全くもてねーのに!
結局の所、一クラス二、三人程度の飯盒炊爨経験者では全くもって足りない。ではどうするか。
なんて、実はそんなに心配はいらんかもしれない。
何故ならそもそもがバーベキューがメインだから。これがカレー作りましょうだったら焦るけどな。
バーベキューあればご飯は最低限で良くね?
と、いう訳で経験者とクラス委員が一ヶ所に集まって一斉にバーンとやればいいかなと。
一番の問題は火おこしだから。これが出来なきゃ飯盒炊爨はもとよりバーベキューが出来ない。これこそ死活問題!
というわけで、委員には一応レクチャーした。後は当日、できる連中が全体を見て回ると決まった。
......俺さぁ、昼飯食う暇あるのかなぁ。心配になってきたぜ!
あっという間に宿泊研修である。
快晴である。すがすがしくなるほど天晴れな晴天である。気温もこの時期にしては高めで過ごしやすい。
週間予報では曇りになるか雨になるかとか、はたから見れば些か不安になる予報だったが、俺は全く心配していなかった。
ただの経験則である。
無敵の俺様鷹成様が参加するんだぜ? 晴れないわけがない。過去、大きめの行事やらイベント等で雨など降ったことがない。大事な所では絶対外さない。
さすが(多分)メインヒーロー様である。天候さえ俺のものとはゲーム開始以前から完璧だぜ。
一方の俺は、鷹成がらみではない時といえば勝率七割といったところか。ギリギリセーフ曇天が結構ある。晴れ男ではないが、まあ悪くない数字ではなかろうかっ。
また小学生までは鷹成と行動を共にする事が多かったし、天候被害にあった経験はトータル的には少ないと!
「晴れてよかったね~。オレって行事で雨降られたことないけど~」
集合場所のグラウンドに着くと、羽柴が手をかざし空を見ながらやって来た。
そういえばコイツもいたんだった。
思い返してみれば中学での行事もほぼ百パーセント晴れだったような。そうか、こいつの恩恵だったか。
まてよ? と、するならば勝率七割じゃないぞ!? 羽柴がいない時を思い出してみると……五割じゃね?
うわ、なんだよ。こんなところでも平凡スペック炸裂かよ! 世は無情である。
「お前らが参加する時点で天気の心配しねぇ」
ぶっちゃけ心配するだけ無駄である。
特に大きなイベントごとは奴らにとって都合の良い天候になるんだから。なるようになぁれぇ~な心境である。
「百パーセント晴れって訳じゃないけど~?」
「特に考えた事もなかったが、俺も全て晴れという訳じゃないな」
そりゃそうだ。雨でさえ奴らにとって必要な事であり、必然である。必要不可欠な要素、即ち奴らの成長のためのイベントなのだ! どこまでも主人公待遇である。
あ、いや、攻略対象だけどメインだし、扱いは主人公と同じだよな!
ちなみに奴らが不参加なモノは結構雨率高い。例えば部活とかの大会とか、悪友たちとカラオケとかその他もろもろ。
無理やり晴れになった分の補正か知らんが、地域天候バランスは保たれるわけである。水不足も経験したことないしな!
後はもう平凡なモブ晴れ男どもと雨男どもの攻防戦である。同士よ頑張れ。
それはともかく今日も注目の的である。
不本意ながら東雲家の車で登校したから、降車場からずっと見られたのだ。
その上、羽柴とも合流してイケメン二人に挟まれてるわけで毎度の事ながら視線が痛いぜ。両手にイケメン。ムサイ最悪の出だしである。
本当はいつも通り自転車のつもりだったんだけど、荷物大きいのだからと押し切られた。
たがだか一泊二日で野郎の荷物なんて少ないもんのはずだが、いちいち制服で登校だわ、現地での活動はトレーニングウェアだからその辺の一式だの運動靴だのなんだの…。
それだけで終わればいいが、宿泊施設内は基本トレーニングウエア禁止とか言うし。んじゃ制服でと思ったら皆ある程度きちんとした私服だとか。物が増えるんだよ。
部屋着はトレーニングウエアだろ普通。男子高校生は黙ってトレパンにTシャツだ! スウェット上下でも可!
ジーンズも暗黙の了解で不可ってこの微妙なドレスコード勘弁。もういっその事制服でって言ってくれよ、ほんとに面倒くさい。
仕方ないからチノパンにコットンシャツ用意したよ! 念のためカーディガンもなっ。ネクタイ必要とか言われなくてヨカッタナー。クールビズ万歳。まだ春だけど。
憤然として鷹成と車降りて、ふと奴の荷物見てがくりとしたけど。ちなみに当然のように運転手様がトランクから出して恭しく鷹成に差し出してたけど。
お前…わざわざジャケット持って来たの。当然のドヤ顔つきですか、そーですか。スーツにネクタイ締めそうで怖いわお前。
「羽柴よ、お前もジャケット持参組か」
「そりゃまあね。うちのとこのブランドの新作新作。今なら社割価格でお安くしとくよ~」
「ざけんな。てめー所のそのブランドったら割引されたってバカ高くて買えるか! 庶民舐めんな」
海外の某高級有名ブランド程は高くはないが、デパートの高額ショップエリアにある位には高いんじゃ。アウトレットでも高くて手が出ないんじゃー!
そんでもって羽柴の足元のあるバッグを眺めれば鷹成と同じようにジャケット用のケースっていうの?カバンていうの?バッチリ。
くそう、庶民中学出身のくせに、こういう所はセレブな実家を主張しやがって。
「ばっちりキメて女子をエスコート!」
「それしかねーのかお前は」
「それ以前にエスコートする余地がどこにある。所詮宿泊研修だぞ」
聞いてないようで聞いている、俺様鷹成様の冷めた突込みが入る。
ほんとだよ、どうしてエスコートなんてトンチキな言葉が出てくるんだ。
「えっないの? ディナーとかディナーとかディナーとか!」
「しおりちゃんと読め。大体てめぇ誰をエスコート出来るんだよ。彼女いねぇだろが」
万人に愛想振りまいて固定の彼女はまだいないはずである。取り巻きは出来つつあるような気がしないでもないが、出来つつあるであって出来ているわけではないわけで。誰をエスコートすんだよ。
鷹成には呆れというより蔑みの目で見られてんぞチャラ男よ。本当に順調にしょーもないチャラ男への道を突き進んでやがる。
お前、おうちでなんかあったの?? おいちゃん相談乗らないよ? こっちは鷹成だけで手一杯だから。将来ヒロイン相手にやれよ?
おいちゃん知ってる。それって”とらうま”っていって”ふらぐへの道”とかっていうんだろ? ヒロインにドーン! と落ちる為の大事なココロノ暗黒面(笑)ってヤツなんだろ?
これで本当に家でなんか欝展開あるんなら殺されそうだけどな!
そもそもだ。夕飯はレストランでコース料理だそうだが、普通にクラスごとに纏まって座席指定され、普通に食事するだけだ。誰も男女ペアで入場せよなんて指示はされてねぇ。普通に友人同士や同室同士で集合時間までにやってきて席につくだろうよ。あほか。
あとはあれだ、カップルなら有かもしんないけどな。
ま、好きにすりゃいんじゃね? と、放置する俺と鷹成だった。
で、皆様のご期待通りバスもデラックスなんである。
広々ゆったり。なんだかシートの布も豪華に見える。クッションもええでー。匂いもなんだかオシャンティ。
夜行バスの豪華版をイメージすれば近いか?
そんなバスに揺られてやってきたお山の麓の湖畔。
都会の喧騒から離れた緑豊かなところへやってきたわけだが、現れた研修施設はパンフレット通りというよりそれ以上に”リゾート”。まばゆい緑のなかに白い近代的な綺麗な建物がどーん。
呆れた話である。
下車後の点呼の後、周囲はなーんの疑問も動揺もなくその建物内に入っていく。俺とか庶民派外部生はポカーンだけど。
うう、このあと昼のバーベキューの為にここの従業員な人と打ち合わせしないとあかんのやでぇ。きっとピシッと教育受けた上品な従業員が出てくるに違いない。
なし崩し的にバーベキュー担当になったのは自業自得って知ってる。面倒だなー。
そして部屋割りは当然のように鷹成との二人部屋である。新鮮味がなさすぎる。
俺にも他のクラスメイトと交流させろや。特に内部生と! 友達の輪を作らせろ。
鷹成なら気心知れてて楽といえばその通りだけど、ハジメテノドキドキワクワクだって欲しいんだっ。この時期特有の体験だろが。
俺は今生ではその年代でなきゃ出来ない体験はコンプリートしてやるって決めてるんだからね…!
よし、ほかの部屋に突撃を……って、しにくいな地味に。大部屋とかだと乱入しやすいけど、ホテル洋室タイプのツインって友人同士でないなら突入しにくい。
これでは大枕投げ大会が出来ないではないか。和風旅館キボンヌ!
本当は軽くクラスの交流イベントでもやってみたいところだが、今回は余裕ないから無理だな。次の機会を虎視眈々と狙おう。うん。
トレーニングウェアに着替えて施設専用グラウンドにいけば半数以上が既に集まっていた。これから団体行動の訓練である。
一番先頭って切ないが、実は一番楽な位置だよなと思う。常に起点だから動かなくていい。何列縦隊になろうとそのまんま。後ろはその時々で右往左往で、いくつか位置を覚えとかないとすぐに動けないし教師から叱責が飛んでくるからなー。
俺? 出席番号順に前から並ぶ為前から二番目だからそんなに複雑じゃない。ラッキーである。
これが背の順だったら面倒だったけど。お察しの通りここでも真ん中だからな! 相変わらずザ・平均、平凡万歳である。
……カミサマってすごいね。神業ってこういうことをいうんだな(呆)
流石に何事もなく終わる。こんなことで早々面白エピソードあってたまるか。
「ぅん、わかってた。わかってたよ、俺は!」
今回最大の山場。バーベキュー会場である。
やっぱり俺の知ってる焼き場じゃなかった……!
どしたらこんな風になるの。教えろください。
なんつーか、まず無駄に広い。
焼き場一つに対して椅子とテーブルセットが整えられ、ゆったりとした空間になっている。それなりに使い込まれているものの随分ときれいで、なんつーか、俺の知ってるキャンプ場の焼き場と違う!! どっかの屋敷のオシャンティなガーデンのバーベキュー用区画って感じ。
これが一学年揃ってだから敷地としても広い。
これを見て回るんだぜ。広すぎだろ。疲労しか予感させない。うはぁ。
どう考えてもハードだぜ。ありがとうごさいます。……泣かせるわ。
これを前にして飯盒炊爨やらせようという教師陣のノーミソがわからん。ミスマッチすぎ。ダッチオーブンなら似合ってるよな! やり方知らんけど、飯盒炊爨よりは簡単な気がする。
火起こしのハードル自体が高いんだからそっちにして欲しかった。やったことない事にチャレンジも出来たわけだし。今度の親父の事務所のバーベキューで頼んでみようかな~。
という逃避は置いておいて現実よコンニチワ。
周囲は華やいだ空気である。素敵空間に皆ワクワクしているようだ。
俺もそっちに混ざりたい……!
ハンカチ出してギリぃをやりたいくらいである。ここに東雲家勤務のシェフその他がいれば……!
奴の家のガーデンパーティでない事が悔やまれる。それなら喜んでお手伝いしつつ安心して飲み食い出来るのに!
傍らにいるのはおぼっちゃま鷹成と危険物チャラ男羽柴である。使えんっ。
「いいかてめぇら。くれぐれも、くれっぐれも面倒起こすなよ! 特に羽柴。食材に手を出すなよ。わかったな」
こくこくと他の班員は頷いてくれるが、肝心の鷹成は何言ってんだコイツ的なまで見てくるわ、羽柴はゆるーい笑顔を向けてくるあたり不安だ。不安しか感じない。
しかしここは班員と鷹成を信じるしかないわけで。何事もあきらめが肝心である。
「では逝ってくる……」
「いてら~」
まずはクラス委員長ズが前に集合し、全体に向かって一連のタイムスケジュールだの作業手順等の説明である。
今日も麗しいキューティクルロングヘアーですね代表! 皆のお姉さまは通常運転で注目を集めております。
委員長ズに妙に団結力が出来ている原因は彼女の存在感ゆえな気がする今日この頃。……ただのファン集団と化しているような気がしてならない。
女子の支持が高いというのもポイント高し。彼女と同じ委員になりたくて委員長になった他クラス奴もいたりしてーとかボソりと言ったら反応したのは斉藤さん。
「そういう人も実際いるよー」
「やっぱりか!」
柏木嬢の高すぎない落ち着いた声を聴きながらボソボソとしゃべる。具体的に誰がそうだとか知っているあたり、本当にただのモブ? 本当はヒロインの情報源なんじゃねーの? と問い詰めたい。
「誰でも知ってると思うけどなあ」
可愛く首をかしげるが、んなわけあるか。
もうね、班ごとにすると面倒しか感じないので一箇所に集めてどやーっ! とやっちまうことを選択したわけだよ。あっちこっち行くの大変だもんよ。ひとまとめも大概だがな……。
今回は一班につき一つの飯盒でいく。これがカレーというメニューなら倍は必要だろうが、バーベキューだからな。上手く炊きあがったとしてもたいして食わんだろう。せっかくのブランド米だが、育ち盛りの高校生なんて所詮肉肉星人である。
むしろなんでバーベキューなのにわざわざ飯盒炊爨なのか、しつこいようだが俺は声を大にして言いたい。焼きそばでいいじゃんよセンセー! わざわざハードル上げてくれなくても。俺さま涙目。
あ、でも焼きそばは焼きそばで、鉄板に麺が張り付いてガチガチになった挙げ句炭状態で、キャベツ生焼けになる気がする……。
歴代の教師どもの底意地の悪さを垣間見れる最大のイベントといえよう。教師どもは高みの見物で、ここのお抱えシェフに肉だの焼いてもらってうまうまなんである。
キーッ! 誰かレース付きハンカチ持って来い! ギリぃとやってやる。(本日二度目)
本来ならまず火をつけるところからなんだが、米を洗いに行ってもらう都合もある為それは俺ら数少ない経験者でやることにした。
もうね、コメを洗う時点でひと騒動だから。そっちにも一応炊事経験ありの比較的庶民派女子についてもらってる。ザルもあるっていうから多分大丈夫だと思いたい。洗剤で洗ったり、水流すついでに米の大半を流しちゃうなんて事がないと思いたい。
とにかく時間かけてらんねー。飯盒炊爨だけでなく、全体の火起こしが出来てるかどうかの見回りもする必要がある。とにかく忙しいんだよ。
いざとなったらバーナーだが。強力バーナーで強制的に火起こしだが。
それでもなんとか火起こしは完了して、飯盒も戻ってきたところで開始である。比較的ここまでは順調。後は各班への見回りである。
「バーナー持ったかー」
「おー」
「火バサミ持ったかー」
「あるぞー」
「じゃあ野郎ども、いくぞー」
「おー」
男子役員一名と女子役員を飯盒炊爨指導員(?)に残して、他は各班の火起こし状況を見に行くのである。今ひとつやる気ない掛け声だが許せ。ぶっちゃけ俺らだって自分の班に混じってわいわいやりたいんだから。
まあその為にもさっさと見回って来いよって話ではあるんだけどな。
その結果については何も言うまい。上手く火おこし出来てる班は少数派である。マニュアルに書いてあるとおりに炭を置いたり新聞紙おいたりしていても難しい。新聞紙から炭に火を移すのがなかなかだ。また、炭に火が付いたばかりの時は炎が大きくてまだ何も焼ける状態じゃないのだが、気の早いやつがいると、その時点で食材を焼きたがる。……焦げるから! 外真っ黒で中が生になっちゃうから!
所々で網からはみ出た炎にうろたえて、腰が引けたり阿鼻叫喚寸止めもあったり、ストップかけることも度々。遠赤外線で焼こうぜニク。焼きとうもろこしも好きだ。
で、なんとか手分けして各班をまわり最後に自分の班の所にたどり着けども合流せずなんだが(飯盒炊爨が終わってないからな)……。
女子の皆さんは慣れない包丁使いに頑張ってた。たどたどしい所がまた可愛い。
火起こしは羽柴が頑張ったらしく終了していたんだが……。(直接食材に触れるわけではないからセーフ)
「てめぇは予想通り過ぎて全俺が泣く」
「調理を進める女子に突撃しようとする羽柴を止めているだろう」
チェアに悠々と座る安定の俺様鷹成様である。
確かに調理に関わる部分の阻止はしているが、では誰が食材を、肉を! 焼くのか! 俺に! 教えてくれ!
それこそ羽柴にやらせる訳にはいかんと言ってるだろうが!
女子にやらせるのかお前は。正直俺は男女平等主義ではあるが、しかし。差別と区別と女子可愛い女子にモテたいは別!
それにバーベキューをやったことないお嬢サマ連中に大事な肉を! 俺のための高級和牛を! 焼かせて台無しにしたくない!
そもそもこの連中に俺の大事な肉を! 俺のための高級和牛を! 焼かせたくない! 俺に、俺に肉焼き用トングを持たせろォォォォ!
……ではなくてだな。お嬢様方より、何事もチートなハイスペック鷹成様ならばマニュアル一読してある以上、危なげなく高級和牛を美味しく焼ける筈なのだ。
俺に、俺に美味い高級和牛を食わせろぉぉぉぉ!
「いいか。羽柴には絶対焼かせるなよ。そして俺に肉を。俺の肉を絶対にとっておけよ。絶対に絶対だからな!」
「……お前のその肉への執着はなんだ。この程度の肉くらい食わせてやってるだろう」
「黙れセレブdeハイソ! 俺は一般庶民なんだ。お前の言うこの程度の肉でもご馳走なんだーっ。いいか、絶対に俺のための生肉を残しておけよ。お・れ・が、自分で焼いて食うからな」
思わず滾っちまうだろうが。ちなみに小声でやってるので他へは聞こえていない。周囲から引かれてなんてないんだからねッ。
ちなみに東雲家の食卓からすると本日の肉は日常レベルである。なにこの格差。
もうちゃっちゃと次行くぜ、次!
途中ちょいちょいと手こずる火おこしに助太刀して飯盒炊爨組に戻ると、いい感じに湯が吹き出していた。やり方を知らないと、ここでちょいと焦るかなと思う。だが実際には無問題。蓋が落ちないように鉄棒でトントン叩くトントン叩くおさえる。はじめチョロチョロ、なかパッパな火加減でよろしく!。
そして最重要なのが火から下ろしてからだ。普通に考えたら容器をひっくり返すなんて思いつきもしないような。小学生のキャンプで初めてやって実際驚いたし。蒸らすという過程も、今時の炊飯器じゃ炊き上りお知らせブザーが鳴る時点で終わっていてすぐに食べられるしな。
てなわけで、改めて作業している野郎どもに注意を促した。くれぐれも軍手必須で火傷するなよ!
「……なんとかなったな」
「熱いわ冷や汗かくわどうなるかと思った」
「これで終わり……っ」
概ね無事に炊き上がった。多少固めとか焦げが多いとかありはしたが上出来である。
残念顔してる教師どもザマァ。
もっとも失敗したらしたで、無邪気な笑顔の女子かキューティクルヘアー柏木嬢に「頑張って作りました。食べてくださーい!」と持って行ってもらおうかと思っていたが。無茶ぶりした以上は結果に責任もって向き合ってもらわんと……な? 道連れにしてやるぜ……!(唯一こちらを気にかけてくれていた鬼畜眼鏡風家庭科男性教師は除く)
本来なら食べ終わった後の片付けがまた大変面倒くさいはずなのだが、そのへんはものすごくありがたいことに、ここのスタッフがやってくれるらしい。
神か。
少し離れて俺達の様子を見守っているスタッフの顔つきも、物凄い心配顔から安堵顔に変化してるのを俺は知っている。ちゃんと飯盒を空にしたら水張っとくように言ってあるから! ちょっとでも作業が短縮(出来るかわからんが)出来るように言っといたから頑張ってくれ。
そんでもって俺達もほかほかご飯な飯盒片手に各班に戻るのであった。
待ってろ俺の肉。




