第二話 午後の授業
お久しぶりです!思ったよりpv増えててびっくりしました
看病すると啖呵を切ったは良いのだが何か忘れている気がする。私のあげたパウチタイプの栄養補給食を壁にもたれつつ食べていた高平君にそう溢すと、
「そういえば午後の授業の単位ってもう単位貰える最低ラインまで出たのか?それなら余裕でサボれるのはわかるが」
意外だな、と言われて私は血の気が引くのを感じた。私は元々それ程頭が良い訳じゃない。なのでちゃんとほぼの授業に出てようやく赤点を余裕で越えるくらいだ。しかも家庭の事情で休むことも多くて今年の残りの授業はもう1日とかしか休むことができない。体調を崩してしまった時の為にとっておきたいというのが本音だ。
「えっと、今回休んだらもう後には引けない感じです…。でも約束した以上此処から離れたくないですし、どうしたら良いと思いますか?」
ぬぬぬと額に皺を刻んで考え始めた高平君を期待のこもった眼差しで見つめる事数十秒。
「それって何の科目だ?」
「えっと、数学と工学、あと古文です。でも古文だけはたまたま最低ラインは超えてます。だから5限と6限が問題な感じです」
不可解といった様子でちょっと前のめりになりつつ高平君が問いかけてくる。
「何で工学なんだ?花屋敷センセーは工学専攻してないだろ?」
「確かに工学は専攻していないですけど選択授業で工学か美術って選択肢があって工学を選んだんです。いつもはしっこにいるし面識がなかっんだと思いますよ」
ふぅんと言わんばかりの顔で頷いた高平君はそれなら話は早いと口を開いた。
「花屋敷…もうめんどくせぇから先生って呼ぶが、先生が授業に行けねぇ理由って俺だろ?じゃあ俺もその授業出れば終わる話じゃねぇか?俺のデスクトップPCにも同期されてるからコンテストも問題ねぇし」
おぉ、とパチパチと手を叩くと彼はいいってと手をヒラヒラさせた。タンッと軽快な音を立ててキーボードを叩く。シャットダウン処理が始まった。
「そういえば高平君は単位どんな感じなんですか?」
荷物をまとめつつ高平君はシニカルに笑った。
「ちゃんと計算して授業出てるし参加してれば違うこたぁしてても何も言われねぇからその辺上手くやってる。あとテストと提出物で評定4は取れる」
頭良い人は考えている事が違うな。あ、冷却シート貼り替えた方がいいかもしれない。軽く背伸びしてピッと取った。ペタと触れて熱が少し下がったことを確認してからもう一度新しいのを貼る。
ちょっと身構えているけど抵抗しない辺り平気な振りをしていてもだるいんだろう。彼の前髪を軽くいじってちょっと隠す。
「じゃ、行こうぜ。あと十五分ぐらいで始まるから今なら良い席取れるぜ」
ちょっとふらつきつつ立ち上がって高平君がギザに笑った。
校舎の端にあるPC室から授業のある選択教室20まではかなり遠い。校舎自体が広い上に回り道をしなければならないからだ。
普通のルートで行こうとした私の手をパシッと掴んで高平君が心の底から不思議そうに
「先生はどっから行こうとしてんだよ?近道なら機工(機械工学科の略称だ)の工場突っ切った方が早く着く」
「え、えぇっわ、私機工の生徒じゃないですよ?」
ちょっと狼狽えてしまった。機工の先生達はものすごく怖いことで有名なのだ。
しかし早く教室に行ってプログラムの続きがしたいのか高平君は私の手を握ったままずんずん歩いてしまった。
少し進むと生徒が利用するエリアに入った為周りの人達が私達の方を見てひそひそと話し始める。ちらほらと聞こえた情報から察するに高平君は本当に余り良い印象を持たれていないんだなと思った。
私の方はそもそも余り認知されていないようで「あれ誰だっけ?」というようなことを言われていた。
「あ!唯綺!探したよぉ!」
「保美っ、ごめんね。待ち合わせのこと忘れてた!」
小声で保美に返すと「本当にあんたは...」と呆れられてしまった。
「で、そこのイケメンは誰?高平洸?」
じっとりとした目で高平君を睨んだ保美に感情の見えない目で見つめ返した。
「名乗らせる前に自分から名乗るのが礼儀じゃねぇのか?俺は高平洸。花屋敷の知り合いか?
高平君はあくまで二人きりの時だけ『先生』と呼ぶことにしたようだ。というかそれよりも、
(みんなの目線が痛い!ここでなんか剣呑な空気出さないで保美っ!)
「うぇと、とりあえず教室入ろうよ!ここ邪魔になってるし!」
高平君は「ん」と同意して教室の中へ入ってくれた。そもそも論高平君はあくまで喧嘩を売られた側だからね。
保美は私の手を掴んで高平君から離れた席を選ぼうとしていたけどそれだと私が困る。ごちごちになりつつ高平君の隣の席に座る。
保美はわたしの隣の席だ。つまり2人に挟まれる形になっている。
(えっと、教科書とノートと筆箱と前回の課題と)
カツッ、という音がして高平君の机が私の机とくっつけられる。椅子を寄せてノートを開き話しかけてくる。
「教科書見せてくれないか?あと課題なんかあったか?あるなら問題見せて」
「教科書はここからここが多分今日やるところで、課題は二進法か16進法で問題を打ち込んでコンピュータで解く問題みたいです。私は苦手で余り理解できてないですけど」
ふむふむと頷きながらデスクトップPCを取り出した高平君は問題を私から受け取ると解説し始めた。
「この問題だと二進法で解こうとするのは馬鹿だ」
「え、なんでですか?16進法だと使う文字の種類増えるんじゃないんですか?」
だあぁと頭を抱えて高平君が引き笑いを浮かべる。
「何でそこまで分かってて分からないんだ?確かに二進法だと使う文字の種類は減る、だがそれで人間が楽できるったぁ小さい数の計算のときだけだ。大きい数になればなるほど桁が膨れ上がる。だから種類増えたとしても16進法で桁短くした方が慣れてない奴には確実だ」
ほうほうと頷きつつ私はポチッポチッとキーボードを叩いて課題をこなしていく。
パチパチパチパチッ!というキーボードを爆速で叩く音にびっくりして横を見るとドヤ顔の高平君がこっちを見ていた。つまり私の横にいる保美を。
(ここで揉めないでぇ!やめて、胃に穴空きそう)
保美はふいっとそっぽを向いてから私にひそひそと、
「何あいつよく見たら二進法であの問題を1分も掛けずに解きやがったんだけど」
「え、本当だ。凄い!」
呑気に称賛した私の脇を保美が小突く。ごめんってと謝る私の机にノートが置かれる。
「16進法のポイントまとめたヤツだ、貸してやる。花屋敷とそこの、誰だっけか」
「岩永保美っ!医療福祉科地域創生部所属、唯綺とは中学からの友達!唯綺とどんな関係か教えなさいっ!襲ったとかだったら許さないわよ」
「襲う訳ないだろ。俺がそんな見境なしに女襲うヤツに見えてるのか?唯のもやし根暗コミュ症だぞ、襲う前に捕まえられないし反撃されるだろ」
高平君が突然能面のような無表情でぶつぶつ呟き始め、保美は顔を引き攣らせながら「分かったから!」と静止をかけた。一体高平君はどんな過去があったんだろうと思わざるを得ない豹変っぷりだ。普通に怖い。
ーキーンコーンカーンコーン
始業のチャイムが鳴り教師が教室に入ってきた。ここからが今日の鬼門だ。これさえ乗り越えれば今日は特に何もない。
気を引き締めて行こう。
ブクマいいねお待ちしてます!
他作品のウォッチもよろしくお願いします




