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最終話 太陽が遺した欠片と絆による夜明け

「死んでる……だと!?」


 シンはハーデスを見ながら驚き、絶句した。


 テレストが冷や汗をかきながら言った。


「これは……絶対と言っていいほど、あいつだ……あいつの仕業だ……!」


 ソロンが驚いた顔をしながら言った。


「あいつって……?」


 テレストは大きな声で言った。


「アルテミス!」


 するとどこからともなく謎の人物が現れた。


「ご名答だよテレスト」


 続けてその人物は言った。


「我の名はアルテミス。アリト・アルテミスだ……」


 アルテミスは天空の島の玉座へと腰掛けた。


 天使の羽に薄暗い肌。神は金と白が混ぜ合わさったような色で輝き、手には巨大なやりを持っている。


 さらに指にはあの悪の指輪がかけられている。


 シンが気付いた。


「カコス・ダクティリオ…ついに…」


「この指輪のことかね?ああ、これは、あのハーデスを利用して手に入れただけに過ぎんよ」


 アルテミスは続けて言う。


「あいつはよく使えた……だが、もう用済みだ」


「とうとう、俺達の真の目的にたどり着けたな……」


 テレストが生唾を飲み込みそう言い、さらに話を遮るようにアルテミスが言った。


「愚かな人間よ……我が力に屈服し、その支配下においてやろう。光栄なことだろう?」


 ソロンが玉座の装飾を見て一言放った。


「これ金メッキじゃん!安物だねこれ!」


 アルテミスの心が揺らぐ。


 だがアルテミスは平然を保ち言う。


「愚かな人間にはそんな価値もわからないのだろう。神に愛されし神を愛すこの価値を!……理解したかね? 泥を這う君たちが、私の黄金の光に触れることすら、本来は許されぬ大罪なのだよ」


 興味なさそうにソロンは言う。


「へーもっと簡単に喋れないの?友達いなさそうだね」


 冷酷なアルテミスだったがとうとうソロンの態度に怒りの感情が出てしまった。


「黙れ……」


 ソロンは聞く。


「なんだって?」


「黙れ……黙れと、言ってるんだあああああ!!!この愚かな下等生物が図に乗りやがって!!神に敵わぬ愚かな生き物が!!」


 そこですかさずシンとテレストが同時に攻撃を入れる。


「グッ……!キサマら……ここから本当の地獄ってものを見せてやろう。魂の誘い(ソウルインターション)!」


「な、なんだ?」


 シンたちの体はこの世から一度消され、異空間へと飛ばされた。


 そこではそれぞれの人物にとって最も苦しい精神攻撃を受けた。


「ユーノー・ソロン。お前は宝ばかり、金ばかり目当てにして、本当は孤独なんじゃないのか?誰からも必要とされてないんじゃないか?」


「アリト・テレスト。お前は実の父を殺した。許されざる行為をお前はしたのだ」


「ヘリオス・シン・アポロン。お前が太陽の神として光り続ける限り、影も増えるのだ」


 シンとテレストは苦しまされるが、唯一神の力を受けないソロンが幻聴を遮って現実世界へ飛び出した。


「ねえシン!テレスト!目を覚まして!これは偽物だよ!」


 はっとしたシンとテレストはようやく現実世界へと戻った。


「クソッ……悪いものを見た……」


 シンは痛そうに頭を抑えながら言った。


 テレストはすぐさま攻撃を仕掛ける。


 剣でアルテミスを斬り、シンもそれに合わせるようにして拳を入れた。


 アルテミスは一方的に攻撃を喰らう。


「クっ……人間が図に乗りやがって!!!」


 更にソロンは、どこから持ち出してきたかわからない、少し小型のロケットランチャーをアルテミスの顔に直撃させた。


 爆風とともにアルテミスはまた姿を表す。


「キサマら!!!!人間が!!!」


 アルテミスは巨大なやりを構えた。


「調子に乗るなああああ!!!!!」


 やりからは黒い光が放たれ、それは空からも降ってきた。


裁きの光(ジャッジメントライト)!!!」


 シンたちは大量に降り注ぐ雷を避けようとしたが、シンだけは空から降ってくる雷を避けたと同時に、アルテミスのやりから雷が放たれ、直撃した。


「ハハハ!!所詮人間の力なんてものはそこまでなんだ!」


「これを見ても同じことが言えるかな?」


 シンの額には太陽の紋章が刻まれ、髪は銀髪になった。


 テレストも覚悟を決め言った。


「俺もやるしか無いか……」


 テレストの口と剣からは蒼い炎が放たれた。


「ふん!小賢しい細工をしても無駄だぞ?」


 ソロンの姿が見当たらないが、シンとテレストはそんな言葉も目にくれず攻撃を始めた。


 シンは一発殴り、同様にテレストも一回斬った。


 そして二人の攻撃が同時に放たれ、一つの光となった。


紫の拳(パープルフィスト)!!」


 蒼き炎と赤き太陽の光が混ざり、紫色の光となり、攻撃を与えた。


「グあああああ!!!……キサマら愚かな人間たちが……この悪の指輪の前では無力なのだ!!!(シン)・裁きの光(ジャッジメントライト)!!!」


 アルテミスが攻撃を放ったと思われ、シンとテレストは構えた。


 だが、何も放たれなかった。


「ハ……?」


 アルテミスは困惑している。


 テレストが後ろを見るとそこにはソロンが立っていた。


「神様?大事な大事な指輪はなくしたら危ないから預かっとくよ!」


 ソロンは片手に指輪を持ちそう言って挑発した。


「クっ……ここまで屈辱を感じたのは初めてだぞ!!!!絶対にキサマらを、大罪を犯した人間を許すわけにはいかん!!!」


「ああそうか神様……」


 アルテミスが振り返ると目の前にはシンがいた。


「神だの人間だの……お前はいちいちうるさいんだよ」


「黙れ!!!……キサマらは我を怒らせた……この地ごと消し去ってやる!!大地(アース)殲滅(デストラクション)!!!」


 この天空の島は巨大な揺れが起きた。


「ハハハ!!この地球ごと消し去り、今度こそ我の時代がやってくるのだ!!」


「これは……まずい!!!!」


 シンはいち早く危険を察知した。


 このままではこの地球ごとなってしまうと。


 シンの目は最期の覚悟を持った強い光で満ちていた。


「テレスト、ソロン……話を聞いてくれ……」


 圧倒的な力を持つアルテミスに対し、シンは自分の全存在を「光」に変えて突撃をした。


 天空の島全体が眩い白光に包まれる。


 さらには、光の中で、シンだけが二人の前に現れる。


 でも、その体は透き通っていて、今にも消えそうだ。


「テレスト……お前はもう、誰かの影じゃない。罪はもうない。自分の足で、この光の下を歩くんだ」


「ソロン……お宝はもう盗むなよ。……あーあ、お前にサイン、書けずじまいだったな」


 ソロンはいつも強気で生意気だったが、ここに来て、初めて涙を流した。


「シン……そんな最後みたいに言わないでよ…!」


 シンは表情を変えずに言った。


「ソロン。初めて少女らしい涙を流したな。……ごめんな……これしか方法はないんだ」


 テレストは言葉を発した。


「シン……やつを止めてやってくれ。ただそれだけだ……頼んだぞ……!」


「ソロン。最後にこのペンダントをやる。これは俺が生きた証として持っといてくれ」


 ソロンは太陽のかけらでできたペンダントをシンからもらった。


「テレスト、ソロン……行ってくる!未来へ進む道(ライトガイダンス)!!!!!」


 ソロンは泣きながら叫んだ。


「シンーーー!!!待って!!」


 テレストは今にも飛び出しそうなソロンを止めた。


「あいつの気持ちをくんでやれ!!俺達は今出る幕じゃない!!」


「でも……!」


 ソロンは悲しみの中で精一杯耐えようとする。


 光の中でアルテミスとシンが戦いを続けている。


 アルテミスは言葉を発した。


「人間の最後の抵抗か!!ハハハ!笑わせてくれるわ!」


 シンはアルテミスの言葉を気にせず戦い続けた。


 そして最後の一撃を放った。


最後の光(ラストライト)!!!」


 シンの手から最大の光が放たれ周り一面を眩しく照らした。


 そして光が収まり……


 いたのはアルテミスだけだった。


「クッ……やつめ!!」


 だが、アルテミスはもう動けないようだ。


 ソロンはアルテミスに近づいた。


「もうこんなことはやめて、また一からやり直そう」


 しかし、アルテミスは自分のプライドのため、救いの手をはらった。


「汚らわしい!!人間の救いなんぞいらん!」


「そうか……お前も昔は人間として生きていたのにな……残念だ」


 テレストは剣で斬った。


 これが最期の一撃だった。


 アルテミスからは月の光が消え去り、存在ごと消滅していった。


「クソッ……必ずお前ら汚らわしい人間をいつか消し去ってやる!!この……この手で……!!!」


 最後の断末魔はなんと愚かなものであろうか。





 エピローグ


 シンは世界を救った英雄だった。


 だが、神の力が消えたことで、世間からは「おとぎ話」として忘れられていく。


 だが、テレストとソロンの心の中にだけは、あの「お調子者の太陽」がずっと生き続けている。


 アルテミスもろとも「神の力」はこの世界から失われる。


 天空の島はゆっくりと崩壊し、地上にはこれまで見たこともないような、穏やかで美しい「本当の朝日」が昇る。


 ——数年後


 成人したソロンが、テレストと一緒に丘の上に立っている。


 ソロンの首元には、シンが残した「太陽の欠片」が光るペンダント。


 二人は太陽を見上げ、ソロンが笑いながら言った。


「あいつが残してくれた世界は、今日も眩しいね」


 テレストも微笑みながら言った。


「ああそうだな」 


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