第十二話 天空の島とハーデスの最期
「ねえシン!起きてよ!」
ソロンがベッドで寝ているシンを揺すって起こそうとしている。
隣には包帯が巻かれたテレストが座っている。
「ん……ああ?」
シンがようやく目を覚ますと、ソロンは涙ながらに訴えた。
「起きた!もう心配したんだよ!急に倒れて!」
シンは目をこすりながら思い出した。
「倒れた……あ!そうだハーデスと戦ってそれで……」
テレストが深刻な顔持ちで言った。
「ハーデスは……やったのか?」
シンの表情はくもり、それをテレストは察知したのか、続けて言った。
「どうするんだ?なにか手がかりがあるのか?」
「それが……気絶間際に聞こえたんだが、ハーデスは今天空の島で待つとか言ってたな……だから、天空の島へ行かないといけないかもしれない」
テレストは目を丸くして言った。
「天空の島だと……!そうか、そういうことか……!」
シンは一人で納得しているテレストに質問を投げかけた。
「おい、どういうことだ?」
「ああ、それが、俺の親父が死に際にハーデスと同じようなことを言ってな。
しかも、俺の兄がいるってことも……」
テレストは唐突に気になってソロンに尋ねた。
「ソロン、お前メイデンとか言ってたな、やつをやったのか?」
「うん倒したよ」
「一人でか?」
「うん倒したよ」
「本当に?」
「うん倒したよ」
テレストはソロンを信じ切ってないが、一旦話題を戻した。
「さすがに二人敵がいるのは厳しいな」
シンは悪夢を思い出すように言った。
「ハーデス……やつの力は今までとは桁違いだった。
攻撃力から、何もかもが……」
ソロンが怯えながら言った。
「シンがそこまでやられるほどの相手って……」
怪我がまだ痛ましいテレストが言った。
「ああ、これはかなり修業が必要そうだ。
シン、やるか?」
ソロンは驚きながら言った。
「えええ!?その体じゃまだ危ないってー!!」
テレストがこわばった表情で言った。
「やるしかないんだよ……今は」
ソロンはテレストの気持ちをくんで、傷だらけのシンの体を起こした。
「立てそう?シン」
「大丈夫じゃあないな。
でも、修業が必要だからな」
シンはそう言い、引きずった体を起こした。
「テレスト行くぞ」
「ああ」
二人の目は爛々と燃え盛っていた。
ソロンは二人の決意を邪魔せずに見届けた。
訓練場に行くと、二人はすぐに試合を始めた。
だが、シンを傷つけないためにも剣は使わず、生身の体だけで戦った。
「おいシン!傷ついた体じゃ厳しいか?」
「そんなことないぜ……俺はそこまで弱くない……」
息をはぁはぁと切らしながらもシンは踏ん張ってそう答えた。
二人は接戦だった。
「テレスト!剣を使わなくても強くなったな!」
「余計だよ。
剣を使っても強い、な?」
そんな会話をしながら修業は約2ヶ月を経とうとしていた。
シンとテレストの体は完全に治り、修業から戻ってきたシンは拳を握りながら言った。
「よし……戦えるな」
続けてテレストも言葉を発した。
「とうとうこの日がやってきたか」
ソロンは心配そうに言った。
「もう大丈夫?天空の島に向かうけどいい?」
ソロンはこの2ヶ月の間に二人とは違った場所で魔法の修行をしていた。
その中で身につけたのが瞬間移動だ。
この魔法でどこにでも行けるらしい。
「じゃあ手を掴んで」
テレストとシンはそれぞれソロンの手を掴んだ。
「これで俺達の冒険ももうじき終わる。
今まで長かったな」
「おいシン、まだ気を抜くなよ?お別れの挨拶はこの戦いが終わってからにしろ」
ソロンは二人の目を見て言った。
「じゃあいくからね!時空移動!」
三人の体からは光が放たれ、姿が段々と消えていった。
「うわ!」
シンは急に体が落ちたかと思うと、そこにはさっきまでとは違う景色が広がっていた。
「できたのか……ここが、天空の島……?」
横にいたテレストも言った。
「いかにも天空の島って名前に合ってるな」
そこには地面が雲でできていて、遠くには金色の神殿が見える景色が広がっていた。
ソロンは先導して言った。
「さあ!前に進もう!多分あの神殿にいるんだと思う!」
少し歩いた後、ソロンが顔面蒼白で気づいた。
「えっ……?嘘!!!!」
シンとテレストはすぐに気づきソロンのもとへ行った。
そこで見た光景は。
「はっ!!?嘘だろ……!!」
「おいおいマジかよ……!!」
そこに転がっていたのは、なんとも無惨に息絶えたハーデスの首であった……




