第十話 クロノス対テレスト
クロノスとテレストの二人は、建物の裏に飛ばされ、対峙することとなった。
「ふっ……まさかこの俺の手で親父をやっちまうとはな……」
テレストが少し笑いながらクロノスを煽るように言う。
クロノスは指を鳴らし、肩を回しながら言った。
「私は息子にやられるほど腕はなまってないと思っているがね」
クロノスとテレストは同じ剣士だ。
テレストの幼少時代はクロノスに剣術を教えてもらったことも多くあった。
クロノスが剣を腰から抜くと、テレストも背中から剣を抜いた。
「さあ、いくぞ!」
テレストが先制攻撃を仕掛ける。
テレストの剣がクロノスの剣と重なり、両者は手を伸ばせば触れるほどの距離を保っていた。
剣をはじく鋭い音だけが響き渡る。
「強くなったんだな……テレスト!」
「あの頃の俺とは違うんだ。もう負けない」
互いに一歩も譲らない戦いをしているが、そこでクロノスは手の平をテレストへ向けた。
「発泡波動!!」
次の瞬間テレストは壁へと吹き飛ばされた。
「グハ……!!」
そこへすかさずテレストの目の前に剣を持ったクロノスが現れた。
「爪が甘いぞテレスト」
そう言って思い切りクロノスはテレストへ思い切り剣を振り下ろしたが、テレストは弾き飛ばされた剣を瞬時に持ちギリギリで跳ね返した。
「クソ……剣術だけができるわけじゃないのか……」
「まだまだ強くなってないな!」
クロノスはもう一度剣を振り下ろした。
「うわあ!」
テレストの顔直前で剣が止まった。
そしてクロノスは持っていた剣を腰に差した。
「勝負アリだな……」
クロノスがそう言い、背を後ろにした歩き出した。
「なんでだ……!なぜ、殺さない!」
テレストは苦しみながらも声を振り絞った。
「……」
クロノスはそれ以上言わなかった。そして歩くのをやめなかった。
コツコツと歩く音だけが建物裏に響く。
「……舐めやがって!」
テレストはクロノスを追うように走り、剣を背中に突き刺そうとした。
剣が突き刺さる瞬間。テレストの目の前には誰もいなくなり、後ろに黒い影ができた。
「まだやるか……!」
「うっ!!」
クロノスはそう言い、足でテレストを蹴飛ばした。
テレストは衝突して壁が崩壊した。
だがクロノスは攻撃をやめずに、しかし、剣を使わずに拳を振りかざした。
「ぐっ……!!」
テレストが床に叩きつけられ、もう動けないほどだった。
クロノスがもう一度攻撃を仕掛けようとしたその時、テレストは言った。
「待ってくれ!!親父!」
唐突にクロノスは思い出した。
——あれは、約10年前、アリト村の領主の息子として生まれたテレストは13歳の誕生日を迎えた。
「テレスト様!ご誕生日おめでとうございます!」
クラッカーが多く鳴らされ、この村では一番のイベントであった。
住人たちはこの村にずっと笑顔が絶えずに暮らしていた。
テレストの誕生日パーティーが終わると、クロノスにテレストは訓練場に来るよう、呼び出された。
「親父!どうしたんだ用って!」
「テレスト、お前はこの村で13歳を今日迎えた。これが何を意味するかわかるか?」
この村での掟として、13歳からは大人として成人になるというものがあった。
テレストはそれを思い出した。
そしてクロノスは言った。
「成人したら武術を教えるとも言ったな」
「親父!とうとう教えてくれるのか!この日を待ってたんだ!」
テレストは成人という肩書とは無縁のキラキラの笑顔を振りかざしながら言った。
この日から武術の特訓は始まった。
ときには怒られる日もあった。
「おいテレスト!そんな剣の使い方はけしからん!!」
そしてときには、笑いあったときもあった。
「この飯うめえな!!」
「だろー?」
「はっはっはっ!」
そして、数々の仲間と出会い、別れがあり、20歳くらいになるまでずっとクロノスとテレストは一緒に特訓をしていた。
——あの日が来るまでは……
「逃げろ!!炎が回るぞ!」
街中は一晩にして業火に包まれた。
「ハハハ!我らウーラノス家の支配下においてくれるわ!」
クロノスはこの襲撃に兵士として戦いに出た。
「テレスト……もう戻れないのかも知れない。だが、私がいなくなってもどうか、諦めるな。」
クロノスは最後の生き残りの兵士だった。
そしてクロノスはウーラノス家の二番隊隊長と一番隊隊長のそれぞれケールとメイデンと同時に相手をした。
「お前ら若造に負けてたまるか!」
クロノスは着々とダメージを与えていき、メイデンは戦闘不能なほどにし、ケールの角を片方折った。
ケールが言った。
「ハーデスよ!このままではまずいぞ!」
「我が出るしか無いか……」
ハーデス直々にクロノスと戦った。
だが、クロノスの疲れ切った体では勝てるわけもなく、もう動けないほどに痛めつけられた。
「くそッ……!」
テレストは窓からその様子を見ていた。
「親父!!こうしちゃいられねえ!!」
家を飛び出したテレストはクロノスの下へ走った。
そこではクロノスは血まみれで死にそうになっていた。
「このやろう!!親父を!!」
殴りかかろうとしたテレストをクロノスが止めた。
「やめろ!!私に構うな!!逃げろーーーー!!!」
テレストはただ逃げるしか無かった。
——「くっ……!」クロノスは実の息子に手を出せず剣を落としてしまった。
テレストは一瞬のすきをつき、クロノスへ剣を振りかざした。
「ぐわあああ!テレストっ!」
だが、クロノスは抵抗しなかった。
こうなる未来がすでに見えていたからだ。
クロノスは死にかけの体でも笑いながら声を振り絞った。
「ふっ……テレストよあとは任せたぞ……あいつを、ここから上へずっと進むと天空の島がある。そこにお前の兄のアルテミスがい、いる……もう私は長くない。あいつを止めてやってくれ……頼む……テレストよ、後は託した……ぞ……」
とうとうクロノスは息絶えた。
だが、テレストは覚悟を決めていた。
「アルテミス。俺がお前を倒す。必ずな」
空に向かって今にも倒れそうなテレストはそう言った。
投稿が遅れてしまい申し訳ございませんでしたm(_ _)m




