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その四十二
日本酒二升と高級缶詰の詰め合わせと三原さんがつくったエリマキトカゲの焼物を渡すと、
「これはこれは。ご丁寧に、すみません」
と用七翁はわれわれにおいしいお茶を淹れてくれた。
民吾氏は、
「これなんです」
とさっそく「マーシシマイ」のスケッチをみせる。
「いいね、いいねぇ!」
と翁はニヤニヤしていた。
「しかしな倉間さん。その火野きよしくんていう人に、しっかり情報を流すようにさせないといけないよ。ぜったいに小巻さんの耳に入るようにね」
「わかりました」
民吾氏が、
「倉間さんが監督で、わたしが、これをかぶって――」
とこの作戦の配役を用七老人に発表すると、老人は、
「いや待った。この〝マーシシマイ〟は、三原さんがやらないほうがいい」
とここではじめて仕掛け人としての明白な意見を述べた。
「あの極め食いの兄ちゃんにやらせよう」
なるほどたしかに、デミグラスソースをマーシシマイ役にすると、躍動感は民吾氏が演じるより増すはずだ。
ぼくも民吾氏もこれには、
「そうかぁ。勉強になるなぁ」
とただただ感心していたのだった。
「だけど、ちょっとお色気が足りないね。こういう探険ものでも、そういうのはぜったい必要なんだよ」
おでこに手を当ててかんがえこんでいた用七老人に、酒が入るとたいてい、
「わたし変態だもん」
と主張してくる川上さんのことを紹介すると、仕掛け人は、
「しかしその娘さんだと、倫理的な方面から攻撃されたさいの抜け道を確保するのはよりむずかしくなってしまうだろうし、編集するのも手間がかかるだろう……」
と意外にも川上さんの変態性には興味をしめさなかった。
「ほかに、だれかいないかい?」
ぼくは交流のある女性を思いつくかぎりあげてみる。
「ああ、その人だ! その人、気に入った!」
仕掛け人がかじりついてきたのは、お隣のさおりさんである。
「キャスティングは可能かい?」
「交わりのスケジュールと、あと喪服の折り合いがつけば、まずだいじょうぶだと思います」
三原さんが、
「さおりさんをどのように使うんですか?」
と仕掛人にきく。翁は立ち上がって話しだした。
「――な。で、もしCM用のナレーションなんかが必要になったらさぁ、その人にやってもらえば、意外性があって、いいじゃん。あっ、本編のナレーションでもいいのか」
用七老人の案は沼口探険隊が作戦会議等をしているときに、となりの部屋でさおりさんに降りてきたご主人と交わってもらう、というもので、これだと幽霊関係のテイストも同時に出せるらしいから、
「作品の質が深まる!」
といよいよ老人は部屋中を歩き回っていた。
「しかし倉間監督のこだわりを考慮すると、『三原ホテルの近くの森林にマーシシマイを探しに行く』という構成じゃ、固定カメラやローアングルのよさが出しにくいね」
「そうですかね……」
「よし! じゃあ、三原さんのそのはなれの工房と、ローアングルが生かせる海辺を撮影現場の中心として、そこから筋を組み立てていこう!」
そしてわれわれにもどんどんアイデアを出すよう、うながしてくる。
「クロスピンクの変身セット、フル装備で持ってますよね? 倉間さん」
「あれはスタントの方から、ずっと借りたままなんですよ」
「倉間さん、その『あさりちゃん』っていうのは、キャスティングできるかい?」
「それはむずかしいですよ」
「お玉さんは赤いパンティーを何枚か購入したそうなんです。ですから、それを一枚お借りして、マーシシマイをおびき寄せることにしますか?」
「ねえ民吾さん、ということは、このマーシシマイは闘牛みたいな感じなんですか?」
「三原さんの〝おびき寄せる〟っていうアイデアは生かそうよ、倉間さん。しかしパンティーにすると、信憑性を問われるから……あっ! なにか特殊な好物でもでっち上げればいいんだ!」




