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その二十三
バス停のベンチでは八十過ぎくらいのおじいさんがひとりでフレンチトーストを食べていた。
その食べ方は味わっているというよりも苦しげに口のなかに押し込んでいる感じであった。
コンビニのレジ袋からあわてて取り出した紙パックのその飲み物は「飲むヨーグルト」である。おじいさんはそれを飲んでさらに苦しそうな表情になる。
もしかしたらあれは、牛乳だか低脂肪乳だかとまちがえて買ってしまったのかもしれない。かわいそうである。
だがしかし、ぼくはそんなおじいさんを見ていても、やはりノーパン生活を送るお母さまやノーパン指導をせがんでくる香子ちゃんのことを想像していた。
「パンを見ただけで、こんなにもノーパンに想いをはせるなんて、いよいよいけないかもしれないぞ」
そんなわけで、終点までバスは降りないことにする。Kの森こども電話相談室の支部で先の問題をきいてもらおうと思ったのである。
Kの森こども電話相談室の支部にはこれまで三度ほどお世話になっている。
ちなみにその三度の相談相手は、すべて真っ赤な口紅を引いた川上さんという女性だった。
山城さんがいうには受付のさいに予約をすれば、とうぜん待ち時間が長くなるケースもあるけれど、希望する相手と相談できるらしい。
だから今回は運まかせにするのではなく、
「真っ赤な口紅の川上さんをおねがいします!」
ときっぱり宣言するつもりである。
支部に入ろうとすると、改善大学校の男の事務員さんが出入口までわざわざ出てきていた細身の相談相手さんに何度もお辞儀をしていた。
こういう場所でかち合うのはあちらさんも気まずいだろうから、事務員さんが通りすぎるまで、
「アナタ、カミヲ、シンジマスカ?」
と歩道を行く方々にたずねて、ぼくだと気づかれないようにする。
予約をしたのちに、
「しばらくですねぇ」
と向かい合うことになった川上さんは、ほんとうだったらきょうはもうあがりだったのにとくべつにお仕事を延長してくれたのだそうだ。
「それは、すみません」
「倉間さんが監督されたドキュメンタリー作品、観ましたよ」
ダイアンさんのお父さんとデミグラスソースが対決したあの極め食い勝負は、その後『極め食いの五月』というタイトルでDVDとして発売されていた。
吉野さんの相談相手にも定期的になっているらしい川上さんは例のネコジャラシのことも魔術的なもののように捉えていた。
あきらかにぼくの貫祿およびマコンドーナグループでの地位を買いかぶっている。
だからだろうか、
「じつはパンティーのことで悩んでるんです……」
うんぬんと相談してみると、
「だったら、これから選んであげますよ」
とこれを個人的な相談として受けてくれたのだった。
「じゃあ、駅前の本屋で時間つぶしてますね」
「ちょっと引き継ぎとかあるから、十五分くらいかかるかも」




