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その二十二
香子ちゃんは自室にさがっていたので、ぼくはけっきょく先の本についてたずねてしまった。キャミワンピースを着ていたお母さまをまえにして、素敵でありつづけることは困難だったのである。
とりあえず、
「やっぱりお肌がつるつるなのは――」
という方向からパンティーの有無を確認する。
「そんなにつるつるかしら?」
手鏡でご自身のお顔に見入っていたお母さまは、だがしかし肝心のパンティーのほうはというと、
「何日かやってみたんですけど、なんだか落ち着かなくて」
ということで、現在はふつうにおはきになられてしまわれているのだという。
「しかし……」
それをきいたぼくは、人格者としての評判に傷をつけぬままにノーパンへの再挑戦をうながさなければならないと切に感じていた。
「この項を読んでください――そうです、健康にも良いって、書いてありますね。お母さま、香子ちゃんには、まだまだ母親の助けが必要なんですよ。ですから専属講師として、お母さまにおねがいします。いつまでもお若くお元気でいただくために、ぜひともそのおパンティーのほどを、どうかどうか! どうかお脱ぎになってください」
目頭を熱くしながら文字通り全身全霊で土下座する。
胃薬を飲んで応接間に入ってきた香子ちゃんは、
「倉間さん、それほどにまでわたしのことを、心配してくれてたんですか」
とこの光景にお目目をうるうるさせていた。
「わたし、これまで自分に甘えてました。倉間先生、わたしを、もっともっと厳しく指導してください」
「わかってくれたかい」
人格者としてあたたかく抱擁する。
「それじゃあ、紙袋に入ってる『やさしい悪魔』の衣装をまず着なさい」
「はい、先生」
キャンディーズは昭和五十二年の『やさしい悪魔』のときにたぶんはじめてセクシーな衣装を取り入れている。こちらの衣装もやはりたいへんなスケールで先生にはたらきかけてきた。
「いや、ちがう! もっと開くんだ開くんだぁ!」
熱血指導である。大スペクタルである。
熱狂しすぎていた先生は中盤以降、アクロバティックなスーパーデビルポーズ(?)のほうも指導する。
「ねえ先生、キャンディーズって、こんなでんぐり返しの姿勢のまま歌をうたってたんですか?」
「そうだとも! そしてコンサートのときには四つん這いの姿勢でうたいつづけていたのさ!」
このままでは人格者としての評判に傷がつきそうであった。
スーパーデビルノーパンキャミワンピでんぐり返し教育をもほどこしてしまいそうだったのである。
ぼくはお暇して、もよりのバス停に向かった。




