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「俺は王様になる男だ!」という勘違い男と結婚させられました。なれるわけないんです。だって彼は…。  作者: 佐古鳥 うの


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1/4

1、俺が選んだ俺の理想に合う女が妻なんだ。貴様じゃない

よろしくお願いします。

屑が元気に喋ります。ご注意ください。



「誰が呪われた貴様などと同衾するものか!私の子種は優秀で聡明な者に与えられるべきだ!決して貴様のような肩書きだけの醜女ではない!!」

「…左様でございますか。でしたらこのまま下がらせていただきます」


形式通りに整えられた夫婦の部屋には先程簡易的だが婚姻を交わした男女が向き合っていた。

男は渋々仕方なく初夜用の寝間着を纏い仕方なくやって来たが相手を見てやる気がなかった気持ちが益々なくなり、見れば見るほど女にバカにされている気がしてきて女の言葉を聞く前に罵声を浴びせた。


女の格好と言えば使用人のお仕着せのような色合いのドレスをかっちり着込んでいて色気も何もなく媚びる表情も一切ない。その可愛げのなさが男の小さなプライドを傷つけた。


しかし女は謝罪もなく立ち上がると隣の部屋と繋がっている内扉を開け、軽く挨拶して扉を閉めた。

しっかり鍵をかける音まで鳴らして。


男はふざけるな!と激昂し初夜用に用意されていたワインのグラスをその内扉に投げつけた。



「(おーこわ。短気にもほどがあるわね。片付けさせられる使用人がかわいそう)」


ワインのシミってなかなか落ちないのに。などと思いながら女は嘆息を吐いた。この部屋に使用人はいない。下がらせたわけではなく元々いないのだ。


輿入れの際についてきた者達は国王の命令で全て引き返しているし婚家の使用人には

『我々ではあなた様をお世話できません。是非ともご自分が連れてきた使用人をお使いください』

と目の前で全員帰って行ったのを見ていたのにそう言われた。素敵なほどの拒絶である。そして白い結婚宣言(これ)


お陰で結婚生活は初日から詰んだのだけどそれも長くは続かないだろう。


小さいが用意されていた鏡台の前でボタンを外すとデコルテ部分に紋様が傷のように赤く浮かび上がっている。見た目は痛々しいが痛みはない。


「……なんで今頃浮かび上がったのかしらね」

紋様を指でなぞりながら息を吐いた。




新郎であるシンプリント・ホジャマカルタ大公令息は大変憤っていた。

彼が欲しかったのは母のように愛嬌があり聡明で美しい女性だった。王女というから娶ってやったのに愛想もなければ夫に尽くそうとする態度も見えない。

たしかに父が引退すれば俺は公爵となるがいずれ程よいところで国王となる男だ。


我が国にはまだ成人した王子はいない。皆自分より劣る者達ばかりだ。ならばこの俺が国の頂点に立ち民の導き手になってやるのが自然の摂理というやつだろう。



「奥様はもしかしたら拗ねているのかもしれませんわね」


王宮内で開かれるパーティーでいつものように高位貴族のみが座れるソファを陣取り可愛い令嬢らを侍らせていれば、その中の可愛い小リスがそう囁いた。


「どうやら御国では王女として扱ってもらえなかったようですし」

「それはそうですわ。だってあの方第八王女ですのよ?上に七人も姉君がいらっしゃるとなれば名前すら覚えてもらえているかどうか……」


フフフ。クスクス。


「きっと嫁ぎ先を探すのも大変だったはずですわ。そんな中シンプリント様との政略結婚が成立したのはとても幸運なことだと思いますの」

「ええ。そうだと思いますわ。だってこの国で唯一の大公家であらされるのですもの!」

「羨ましいですわ。わたくしも王女の肩書きがあればシンプリント様に娶っていただけたでしょうに」

「フフッ愛いやつめ」


肩を抱き引き寄せれば令嬢はポッと頬を染め唇を奪えば周りから黄色い悲鳴が上がった。


「ですがシンプリント様の愛を頂けないとわかった彼の方が部屋に閉じ籠もってしまわれるなんて…少々子供じみているのではないですか?」

「わたしならシンプリント様に振り向いていただけるよう誠心誠意尽くしますのに」

「お前達に尽くされるのは悪い気はせんがアレに出迎えられただけで怖気が走る。いつ何時呪われたらと思うと気が気でないくらいだ」


「まぁ。ではあの噂は本当でしたのね」

「あの噂?」

噂を知らない令嬢が興味津々に前のめりになる。


「あの第八王女様は前の婚約者様を呪い殺したそうなのです」


そうなのだ。

これを初めて聞いた時、ルエッタルト王国はとんでもない不良品を寄越して来たなと憤ったものだ。


アレに興味ないから為人を噂で知ったが、それによれば自国にいた頃から婚約者を見下し己の務めをはたさなかったらしい。

その婚約は王妃自ら取り付けてくれたものでそれだけで国母の慈悲深さを感じる。あちらの王妃も我が母のように聡明で他者への愛も深いのだろう。


だがあの女はそんな気遣いを踏み躙った。生母ではない王妃に癇癪を起こし我儘し放題してそれでも婚約解消しない男に痺れを切らし呪い殺したのだ。

なんて愚かで視野の狭い不器量なのだろう。


王妃が組んだなのだから解消できなくて当然だ。相手の爵位は知らんがどれだけ優秀であろうと王妃の命令を覆せる臣下はいない。王妃なのだから。

そんな簡単なこともあの女は分からないのだ。王女としての質が悪いということは火を見るよりも明らかだろう。


こんな愚者がいずれ国王となる俺に相応しいわけがない。


こんなふざけた結婚は無効だとこの俺が訴えたのに叔父上は国同士で成った契約だから覆せないと言うし、大臣らに命令しても誰も俺に従わなかった。俺の父は大公だぞ?!


その父上に相談したら『契約だからとりあえず結婚するしかないが本物の伴侶は自分で選べばいい。私も妻もその結婚を後押ししよう』と言われたので仕方なく結婚したが。


母上からも『かわいそうな坊や。貴族だからと意にそぐわない相手と婚約させられるなんて。大丈夫よ。ザベル様も婚約しながらアタクシと出逢ったの。そしてあなたが生まれたわ。今は苦しいかもしれないけれどきっと運命の相手と出逢えるはずよ』と言ってもらえた。


だから俺は根気強く俺の伴侶に相応しく王妃の座に就いても見劣りしない素晴らしい女性を待つことにした。



既に結婚したあの女のことなど綺麗さっぱり忘れて。




「シンプリント様!」

「シャシャ!」


バッと両手を広げれば愛嬌たっぷりに微笑んだシャシャリデールが胸の中に飛び込んできた。

柔らかくいい匂いがするシャシャを思いきり抱き締めれば「ドレスが皺になってしまいますわ」と母上に窘められた。


「シャシャ。顔をよく見せておくれ」


少し離れシャシャリデールの姿を頭の天辺から爪先までよく見た。

素晴らしいの一言に限る。


出自は子爵家で出逢った頃は野暮ったい令嬢でしかなかったが磨けばこうも美しくなるのかと感嘆する。

王族として恥ずかしくないようにくすんだ茶色を色抜きし金色に染め上げた。瞳の色はどうしようもないがよく見れば青みがかってもいる。

多少焼けた肌も白くなり俺の色を誂えた最高級のドレスは王妃に見劣りしない出来栄えになっていた。これならば俺の婚約者として隣を歩かせても問題ないだろう。


「でもいいのかな。名ばかりでも妻がいるというのに」

「問題ありませんよ。出たくないと言ったのはアレですから。それにアレが並んではホジャマカルタ大公家の名に疵がつきます」


問題も何も初夜以降会っても話してもいないが。

あの陰湿そうな顔を見ただけで呪われそうだと思った俺は本邸(カントリーハウス)から十キロ離れた山の上にある、昔国境警備に使われていたという要塞に移るよう命令していた。


あそこは父上が婚姻の際賜ったもののひとつだが何をするにも不便だし、外観も無骨で、内装も防犯のため迷路のような作りになっているから普通に住むにはとても不便だった。

しかも現在の国境はもっと北にあり見張り台の役目にもならない。


父上もあんなゴミを貰ったところでなんの足しにもならないと言って管理すらしなかった場所だ。そこにあの醜女を送ってやった。


一応使用人に適当に世話をしておけと言っておいたがあんな場所に行って名ばかりの妻の世話をするヤツはいないだろう。

というか世話をして八つ当たりで呪われてしまうかもしれんからな。誰でも命は惜しいからアレはきっと一人で暮らしているのだろう。


俺はちゃんと使用人に命じていたから責任を問われない。悪いのは実行した使用人と不良品でしかないあの女だ。



「きっと気位が高いのでしょう。あの御方そっくりですわね。困ったものだわ。出たくないという方を無理やり連れてきても周りの方々のご迷惑になってしまいます。それならば朗らかなシャシャリデール嬢をエスコートしたほうが皆さんの御心も華やぐでしょう」


昔のアタクシにそっくりだわ、と微笑む母上に認められた気がしてシャシャリデールに微笑みかけると彼女も満面の笑みで微笑んだ。







全四話予定です。

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