表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家族に家から追い出されたので、悪役令嬢を矯正します!  作者: 雲乃琳雨


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/40

39、子爵邸襲撃

 ソルビエは紙袋を持ってジャンの家に来ていた。髪をまとめて帽子をかぶり、黒いズボンにジャケットを着て、男の格好をしている。


 私は家に入ると、帽子を取った。


「目立つ格好では来れなくなったからね」

「エレのことは新聞で見たよ」


 やっぱり……来て良かった。私は紙袋からワインを取り出した。


「上手くいったから、これで、お互いに楽ができるわ。お祝いしましょ! クイーンはワインならたくさんあるわ」

「お! いいね。俺も住めるかな?」

「そのうちね」


 コップにワインを注いで、先に飲んだ。


「あ~、おいしい!」


 それを見て、ジャンも上機嫌で飲んだ。紙袋からケーキの箱を取り出した。


「うちのシェフに作ってもらったケーキよ。とってもおいしいの!」


 中には丸いクリームケーキが二つ入っている。上には粉砂糖がかかって、固めの生地の間にはクリームがたっぷり入っている。見るからにおいしそうだ。

 ジャンのほうにはクリームに、メホタスをたっぷりと振りかけてある。小皿に乗せて、ジャンに出した。


「うまそうだ!」


 酒に酔い始めたジャンは、疑いもせずに食べた。ジャンはすぐに気を失い、テーブルに倒れた。私はニヤリとした。上手くいった!

 

 食べかけのケーキを箱にしまい、ワインも栓をして紙袋に戻した。ジャンの口元と、手に付いたクリームを拭き取とり、使ったコップと皿を洗うと拭いて棚にしまった。

 食器カゴからマグカップを取り出して流し台の上に置き、コンロに火をつけて、空のヤカンを置いた。コンロの火元に、フキンを置いておく。

 ジャンはしばらくは目が覚めない。私は家から立ち去った。


 歩いて自分のアパートに戻ると、服を着替える。着ていた服をクローゼットにかけて、紙袋を持って部屋を出ると、馬車を待たせてあるところまで行き馬車に乗った。


「火事だ!」


 馬車の中でその声を聞いて、私は満足した。馬車でクイーンの屋敷に帰った。


 ソルビエの隣には、中デビルが細くなって座っていた。



 翌日、私は朝食を食べながら新聞を読んだ。モントルの平民居住区の火事の記事があった。住民の早期発見により火は消し止められたが、火元の部屋に住む、恋人と二人暮らしの男性が死亡したと書いてあった。

 私はニヤリとしてエレに言った。


「ジャンが死んだわ」

「そうなの!」


 エレも明るい表情をした。


(こうやって、邪魔者を消していけばいいのよね。

 ——それなら、第一王子を消せば、私が王妃になれるってことよね。素敵だわ!)



 ピニオンは執務室で新聞を見ていた。

「恋人と二人暮らしの男性は」ジャンのことだろう。間に合わなかったのね……。エビはとうとう恐ろしいことをしてしまった。ジャンを殺したのは、薬を使った計画を知っていたからだろう。

 証拠を消していってるのかもしれない。メアリーは警備署でも調書を取られているけれど、証言書がないと覆されることがあるかもしれない。私はマイクに聞いた。


「メアリーの証言書はどこに保管してあるの?」

「銀行の貸金庫でございます」

「そう」


 ここにないほうがいいわね。


「衛兵に、エラかソルビエ、もしくは不審人物に注意してと言ってちょうだい。他の使用人にも身の回りのことに注意してと伝えて」

「かしこまりました」


 屋敷はピリピリした雰囲気に包まれた。



 午後になって、仕事に身が入らなかった。ふー、気が散ってダメだわ。馬にでも乗ろうかしら?


 窓の外を見ていると、エラが馬車で来たのが見えた! エラは何のためらいもなく敷地を超えた。まずいわ! 

 衛兵がエラを槍で牽制すると、エラは手を前に出した。衛兵はその場に力なく膝を曲げて倒れた。その衛兵の襟をつかむと、引きずって屋敷に向かってきた。

 なんて力なの! 普通じゃないわ。サルティーが力を貸しているのね!


 私は慌てて部屋から出た。出くわしたメイドたちに声をかける。


「みんなに裏口から外に出るように言って! エラが悪魔に憑りつかれて、襲撃に来たわ!」

『!』 

「わ、分かりました!」


 メイドたちは慌てて炊事場の方へ向かった。


 玄関ホールでは、マイクとクラウディオ、コンラッドがエレオノーラと対峙していた。マイクが声を出す。


「エレオノーラ、やめるんだ!」

「黙りなさい」


 エレオノーラは引きずってきた衛兵を三人の前に軽々と投げた。手には炎を出している。


(魔法!? この屋敷を燃やす気なのか!?)


 マイクは驚愕した。エレオノーラが、手を出すと三人は意識を失って倒れた。


「きゃあー!!!」


 それを後ろで見ていた、メイドが悲鳴を上げて逃げる。


「逃がさないわよ。全員燃やすのだから」


 エレオノーラがメイドに向かって手を出すと、そのメイドも意識を失って倒れた。



 玄関のほうから悲鳴が聞こえた。ピニオンが到着する。


「エラ!」

「ピニオン、エラと呼ばないで!」


 エラの目は真っ赤で、瞳は黒だった。サルティーの色だわ。エラの頬はサルティーと同じように左右二つずつ赤く裂けていた。


「メアリーの証言書はどこなの?」

「こっちに来なさい」


 私は応接室に向かった。部屋に入れば、使用人がその間に逃げられるだろう。倒れているみんなからも離れられる。二人で部屋に入った。私は振り返って言った。


「証言書はここにはないわ」

「どこにあるの?」


 言えばそこを襲う気なの!? それなら言うわけにはいかない。


「こんなことをしたらもう、逃げられないわよ」

「大丈夫よ。みんな一人残らず消すから」

「そんなことできるわけないでしょ」

「じゃあ、あなたから殺すわ。その前に、証言書がどこにあるのか言いなさい」


 エラが私に迫って、炎を顔に近づけてきた。エラの顔の裂けめの中に、アーヴィンとサンディのような人影が、うろのような目から涙を流して叫んでいる姿が見えた。取り込まれた人たちが中にいるんだわ。——どうすればいいの!?


『あいつが来た』

「誰?」


 サルティーの声が話して、私がとっさに聞いた。


「カイゼルだ」

「伯爵は、巡回に行ったはずよ!」


 エラが叫ぶ。


「サルティー、私の体を使いなさい。この女だと伯爵に刺されて終わりよ!」

『そうだな。あいつは、お前を殺せない』


 サルティーが私の体の中に入ってきた。中に取り込まれた人たちの嘆きが聞こえてくる。前入ってきたときよりエネルギーがとても強いわ。私の瞳も黒くなって、白目の部分は赤くなっているだろう……。


 エラは正気に戻った。力が抜けて床に座り込む。自分が起こした事態に動揺しているようだ。私はエラに冷たく言った。


「あなたは、もう終わりよ」


 エラは私の姿に恐れをなしていた。あー、スッキリした!


『お前の役目はこれからだ』


 おっと、そうだった。ここでサルティーが私から抜けて、またエラに入ったら終わりだわ。

 伯爵が応接室に入ってきた。本当に来た。どうしてここにいるのかしら?


「大丈夫か?」


 伯爵は私の姿に少し驚いていた。


「悪魔を取り込んだのか……」

「そうよ」


 私は不敵に笑うと伯爵に近づいた。体は浮いていて、目線が近い。私の禍々しい空気に、伯爵は少し顔をしかめた。


 サルティーは思い違いをしている。伯爵は、悪魔に憑りつかれた人間を容赦しない。人を殺しても悪魔は生き残る。このままだと、私だけが刺されて死ぬ。

 伯爵に殺されるのかと思うと、惨めで涙が出てきた。


『あ! こら、泣くな!』


 サルティーが怒っている。伯爵が私を見つめて、静かに聞いてきた。


「なぜ泣いている?」

「あなたに殺されると思うと悲しいの……」


 涙が頬を伝うと、体が熱くなり光った。


『あ!』


 サルティーが声を上げると、体から出て行くのが分かった。

 元に戻ったわ。なぜだろう……? 私は床に降りたが、力が入らなかった。そのまま意識が遠のいた。


 カイゼルはピニオンを受け止めた。サルティーは黒い靄になっていた。怒った声だけがする。


『だから、泣くなって言っただろ!』

(涙で浄化されたんだな)


 ピニオンを優しく抱きしめると、目をつむってピニオンの頭に顔を寄せた。


「私がお前を殺すわけないだろ」


『やっぱりな!』


 サルティーがフンッと、勝ち誇った感じで言った。


(サルティーは、浄化されて力を使い果たしたようだな)


 カイゼルは、サルティーに向かって指をはじいた。


『あぁぁ~』


 光がはじけて、サルティーはその場から消えた。

 外から声が聞こえる。サルティーの魔法が解けたのだ。


「お嬢様! どこですか!?」


 マイクの声がする。カイゼルは答えた。


「ここだ!」


 応接室にマイクとコンラッドが入ってきた。クラウディオも廊下にいた。カイゼルが指示を出した。


「ピニオンは無事だ。その女にはもう悪魔は憑いていない。その女から指輪を外してくれ」

「分かりました」


 マイクがエレオノーラから指輪を抜き取った。


「待って、その指輪は返して!」


 エレオノーラは抵抗する力がなく座ったまますがるだけだった。マイクは無視して、カイゼルに指輪を渡した。

 カイゼルは指輪を右手で受け取ると、光魔法を使った。指輪が輝き、スミレの精は回復してまた眠りについた。カイゼルはそれを確認すると指輪をポケットに入れた。そして、冷たくエレオノーラを見て言った。


「その女を縛って、警備署に連行しろ」

「やめて、違うの! 私じゃない。ピニオンに悪魔が憑いていたのよ!」


 コンラッドが、エレオノーラを縛って廊下に連れ出した。マイクも後に続き、カイゼルもピニオンを抱きかかえて部屋を出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ