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家族に家から追い出されたので、悪役令嬢を矯正します!  作者: 雲乃琳雨


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38/40

38、エラ再び

 マクレガー子爵邸の塀の前に馬車が着いた。中からエレオノーラが日傘を持って降りた。


「お嬢様! 大変です! エラが現れました!」


 執務室にワンスが駆け込んできた。何ですって!? 私は驚いた。急いで門まで行くと、エラが一人で門の外に立っていた。門は日中開けてある。

 久しぶりに会ったエラは、前よりきれいになった気がする。ふんわりした薄紫のきれいな服を着て、日傘をさして微笑んでいた。

 城にいるんじゃないの? ……なんだろう、すごく怖いわ。


「あなた、ここに入ったら捕まるのよ。分かってるの?」

「ええ、だから外にいるでしょ。

 これを見て、スミレの指輪よ。あなたなら分かるでしょ」


 エラは左手を掲げて、薬指にはめた指輪を自慢げに見せた。王子、あの指輪を送ったのね! なんて馬鹿なの……エラは王子が思っているような女じゃない。


『苦しい……助けて……』


 あれ、声がする。まさか、


「その声、スミレの精じゃないの?」

「そうよ。最近はめるとうるさいから、してないの。でも今日はあなたに見せるために付けてきたのよ」


 エラは嫌そうに、指輪を手で隠した。スミレの精が弱っているの?


「エレ!」


 そこへ、馬に乗った王子がやって来た。馬から降りるとエラに駆け寄って、肩に手を置いた。随分親しげだわ!


「ここは危ないだろ」

「ええ、そうね。でも懐かしくて立ち寄ったら、ピニオンに追い払われたわ」


 エラはがっかりした顔をした。そりゃそうでしょうよ。領主代理なんで。エラは王子の前では違う顔を見せているのね。王子よ、その女はあんたが最も嫌いなタイプの女なのよ。自分で気づけ! 私が言っても信じないだろうから。


「この女に近寄ったらダメだ。不幸になる噂は本当だ」


 そりゃどうも! さっさと帰って! そこに反対側から、伯爵が馬に乗って現れた。馬から降りて二人に話しかけた。


「どうした? ここで」

「やあ、カイ。朝、クイーンの屋敷に行ったら、エレがここに行ったと聞いて、慌てて追いかけてきたんだ。

 昨日モントルの屋敷に泊まらせてもらったが、いなかったな」

「ああ、用事で出ていた。帰るついでにここに寄ったが、……ちょうど良かった。

 私はこの後しばらく巡回に出るから、ステンに伝えようと思っていた」

「分かった。私もすぐに城に戻らねばならない」

(巡回に出たら、しばらくは戻ってこないわよね! いいことを聞いたわ!)


 伯爵は特にこの状況を気にしていないようだ……。エラはなんかうれしそうにしている。


「私は今、クイーンの屋敷に住んでいるの。じゃあね」


 エラはそう言うと、二人は帰って行った。何ですって!? 隣に! 隣は王家が管轄しているから、王子が住まわせたのね。近づいていることに、なんだかゾッとした。伯爵は馬を引いて中に入ってきた。


「大丈夫か?」

「大丈夫じゃないですよ。あの女、私を挑発に来たんです! どういうことですか? 城に住んでいたのに?」

「両陛下があの親子の素性を知って、追い出されたんだ。王子がクイーンを管理することを申し出て、親子を住まわせた」


 そんな! あの馬鹿王子が!


「王子はエラの性格に、全く気がついていないみたいですね」

「そうだな」(女に免疫がないせいだな……)「ステンもあの性格だから言っても無駄だ」


 伯爵も呆れていた。馬を馬番に預け、私たちは中に入って応接室で話をした。


「エラが、王子の大事にしていたスミレの指輪を見せたんです」

「その指輪のことは知っている。あの女は舞踏会に指輪を付けて出ていたぞ」


 何ですって!? エラが社交界デビューしたの!?


「エラはやる気がなくてダンスが上達しなかったって、ワンスから聞きましたよ」

「そうなのか? 普通に踊れていたぞ」

「え?」


 どういうこと?


「さっき、スミレの精が弱っていました。何ででしょう?」

「! それは、おかしいな。普通、付けただけでは変化しない」


『それはだな、私のせいだ!』


 宙から、白地に耳や顔の一部が濃いグレーの猫が現れた。


「その声は、サルティー!? 呼ばれなくても来るんじゃないの!」

『聞かれたから来ただけだ。久しぶりだな!』


 テーブルの上に座ると、手をなめ始めた。


「またかわいい猫に憑りついたのね」

『当たり前だろう! こいつに踏みつぶされたくないからな!』


 猫なのに器用に、伯爵を手でビシッと差した。


「さっきのどういうことなの?」

『私が、精霊の力をあの女に流したからだ』

「もしかしてそれで、ダンスが踊れたの?」

『そうだな。王子がいない時は私も力を貸している。いる時は精霊の力を借りている』


 え? それって……私は悪魔崇拝事件のことを聞いた。


「悪魔教の集会に現れたのよね。そのときに指名したのはアーヴィンだったって」

『それは、あの親子を逃がすための嘘だ。王子が近づいていたからな、二人は引き合っていたので、会わせたのだ!』

『!』


 私たちは驚いた。確かに王子は、きれいな平民女性を探していた。エレも貴族になりたがっていた。


『上手くいっただろ! あいつも聖騎士で気に食わん奴だからな』

「それは、否定しない」


 私はサルティーに言った。サルティーはニヤリとした。


『お前とは気が合うな!』

「そうね」

「おい!」


 伯爵は私を(たしな)めた。私はムッとする。


「王子は私を疑っていましたからね。それに悪魔が悪いわけではありません」

「その考えが、悪魔崇拝だ」

「え!?」


 伯爵は厳しい目をして、そう言った。私はドキッとして、思わず口元に手を近づけた。私、そうなの? ……いいえ、そういう意味で言ったんじゃないもの。

 私はキッと伯爵を睨んだ。


「それは違います! 私は悪魔を崇拝しているわけではありません!

 神学の授業でも言っていました。悪魔は人の負の心から生まれるんです。悪いのは人のほうです!」

「……」


 伯爵は私の強い反論に目を見張った。それから、黙って席を立つと、部屋を出て行った。

 あれ? 私はサルティーに聞いた。


「もしかして私たち、今、ケンカしましたか?」

『そうだな』


 サルティーは横目で私をチロリと見てそう言った。こうなってしまっては、仕方がない。伯爵も私を疑っているからな。

 サルティーに気になっていることを質問した。


「悪魔は生贄を必要としないと聞いたけど、それは本当なの?」

『そうだ。血や肉などの死骸や物は我々には意味がない。我々に必要なのは負の心だ。

 (けが)れたものを捧げれば、悪霊が来て操られるだけだな』

「悪霊のほうが酷ですね」

『そうだな。悪霊も人だからな』


 神官や魔法使いが言うには、悪霊が見えるのは悪霊に憑りつかれた者だけなので、この国では霊的な占いを、詐欺として禁止している。悪霊は見えないので、どうしようもないのだ。


「アーヴィンたちが集会で倒れたのはどうして?」

『実体化して魔力が減ったからな。捕まえやすいようにエネルギーを吸い取った。死んだ魂も、負のエネルギーが生み出されるから私のものだ』


 そうなんだ! 授業で言っていた、


『悪魔に魂を捕らえられると、そこから逃げ出すのは困難で、転生することができないそうです』

『みんな我が糧となれ』


 ってそういうことなのね。怖い!


「エラに憑いていた、子デビルがいなくなったのは?」

『実体化の時に食べた。王子が見たときに憑いていないほうがいいだろ。子デビルはどこにでもすぐに復活する。

 それ以来、あの娘には私が憑いているから、他の悪魔は憑いていない。王子には気づかれないようにしている。くくくっ』


 サルティーは小さく笑った。お~い、こいつ! がっつり敵じゃん!


『母親の中デビルは私が使役している。今も母親といて、母親は愛人を殺すつもりだぞ』

「え!」


 サルティーは毛づくろいしながら、ちらりと私を横目で見た。愛人のジャンよね! それってダメじゃない!

 私は急いで応接室を出て、マイクに警備署へジャンの家に行くように連絡してもらった。間に合うかしら?


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