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家族に家から追い出されたので、悪役令嬢を矯正します!  作者: 雲乃琳雨


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35/40

35、悪魔と生贄

 ダジメント男爵邸に、ソルビエは呼び出されていた。


 またここに来ることになるとはね。今はアーヴィンが当主だから、来ても心配はない。もう、恋人のメイドとも上手くいっているはずよね。今日はピンのことで呼ばれたけど、何かしら?

 ソルビエは応接室に案内された。ソファに腰かけて待つと、アーヴィンが入ってきて、向かいに座った。


「来ていただいて、ありがとうございます。手紙に詳しく書けなかったのは、ピニオンが、悪魔崇拝をしていることに関してだからです」

「!」


 悪魔崇拝!? ピンが? アーヴィンは話を続けた。


「私たちは子爵家に賠償金を払い続けています。ピニオンが悪魔崇拝者である証拠を掴めば、払わなくて済みます。私とサンディはそのために悪魔教に入信しました。人数が多い方がいいので、それでお二人にもご協力いただけないかと思いました」


 何ですって!? 悪魔教なんかに入ったら、即死刑なのに! きっとあのメイドの浅知恵ね。

 でも、エレも言っていたけど、ピンに関わった者が次々と不幸になって、本人が上手くいっているのは本当だわ……。私はアーヴィンに聞いた。


「ピニオンが、悪魔崇拝をしているのは本当なの?」

「はい、名簿に名前がありました。その名簿を手に入れるか、集会で本人を見ることができればと思います」


 その名簿が本物かどうかよね……。偽物じゃないかしら? みんなが知っている著名人の名を使うのは、詐欺師によくある手よ。

 でも悪魔崇拝は、本当かどうか興味があるわね、それと、子爵家にはメアリーの証言書がある。私たちが罪人である以上、貴族にはなれない。でも子爵家と取引できれば、チャンスが開かれるかもしれない。


「3日後に、モントルでサルティー教の集会があります。ピニオンが来るかもしれません。お二人を集会にゲストで招待しますので、来てもらえないでしょうか。証人になってほしいのです」


 証人ね。あの死神伯爵を思い出して、顔が引きつった。なるほど、今度は私たちが証人になるってことね。おもしろいわ!


「分かったわ」

「ありがとうございます。住所はここです」


 アーヴィンは紙を差し出した。書いてある住所は、平民の下級居住区ね。



 3日後。私とエレは狭い路地に入ると、仮面をつけてマントのフードを被った。所定の家に来るとドアをノックした。中から仮面の男が現れた。


「ようこそ、ゲストの方。どうぞお入りください」


 後について中に入り、地下の階段を降りた。対応は悪くないけど、地下は怪しげだわ。エレも不安そうだ。

 地下はロウソクの明かりがともり、十人以上いるのが分かる。みんな仮面をつけていた。ピンらしき人物はいなかった。

 リーダーと思われる茶髪の男が話し始めた。


「では、ゲストも来ましたので、悪魔召喚の儀式を始めます」


 悪魔を呼び出すのね!


「儀式には若き乙女の血を捧げます」


 え? リーダーの隣には、黒髪でショートカットの若い女がいた。あの姿、サンディだわ。少し離れた横にアーヴィンらしき男もいた。

 血だけを取るのだろうか? モントルには、若い女性の変死体がたまに出る。まさか、殺すのでは? サンディが話し始めた。


「残念だけど私は、乙女じゃないの。あそこの女を使いなさい」


 サンディはエレを指さした。何ですって! 会員たちが、エレの腕を掴んだ。


「お母様!」

「エレ!! 放しなさい! あんたたち」


 私とエレを引き裂く。サンディは笑みを浮かべ、アーヴィンはただ見ているだけだった。

 あいつら、私たちを騙したのね!! エレは両腕を押さえられ、リーダーの男が短剣を振りかざした。——私のエレを傷つけたら許さない!!


『やめろ! 汚らわしい!!』


 どこからともなく、大きな声が響いた。するすると煙が昇り、悪魔が姿を現した。頭に曲がった角、上半身裸、下は煙のまま細くなっている。


「おお! サルティー様ですね! 初めて召喚に成功した!」

『いかにも、我が名はサルティー、七大悪魔の一人だ。

 生贄を殺しても悪霊が来るだけだ! 死霊のような下品なものはいらん。生きたままの人間のほうがよほど有益だ』

「知りませんでした! どうか、お許しください」

『いいだろう。みんな我が糧となれ。——私には依り代が必要だ。そうだな。そこの男、お前にする』


 サルティーはアーヴィンを指さした。私はこの隙に、エレを引っ張って逃げだした。一階に上がる。


「エレ、大丈夫?」


 エレは顔面蒼白で、恐ろしさで震えていた。エレを抱えてドアを出て路地を歩き出すと、エレは足をつまずいた。


「エレ!」


「どうした」


 突然声をかけられた。目の前に金髪の若い騎士が立っていた。後ろにも五人ほど騎士がいる。捜索だわ! ここはバレていたのよ。

 そうだわ、あいつらに思い知らせてやる! 私は自分とエレの仮面を取った。


「だ、騙されて悪魔教に連れてこられたんです。娘が生贄にされそうになって! た、助けてください!」

(この娘! あの嘘つきの、偽の妹じゃないか?)

(なんて、きれいな男性なの……)


 騎士はエレを見て目を見張った。二人はお互いを見ていた。


「場所はどこだ」

「そこです」


 私は出てきた家を指さした。



 ステファンの目には、中デビルが離れたところから見ているのが分かった。


 あいつは、この母親に憑いている中デビルだな。中デビルに向かって心の中で言った。


 去れ!


 中デビルは頭を下げると、家の中に消えていった。娘のほうの子デビルは憑いていないな。恐ろしい思いをして、欲望が消えて離れたのだろう。

 それにしても、美しい娘だ……。



 ソルビエは騎士がエレオノーラをじっと見ているのに気がついた。


 金髪の騎士は後ろの部下に命令した。


「この二人を警備署に連れて行け」


 それはまずい!


「待ってください。エレは気分が悪いんです。家で休ませてもいいでしょうか?」

「分かった。二人を家まで連れて行ってくれ。あとで話を聞きに行く」


「分かりました。王子!」


 王子ですって!? この騎士は、あの第二王子なの!? 


(王子!?)


 エレの顔に血の気が戻ってきた。……王子はエレを見ていた。もしかしたら、運が向いてきたのかも……!

 私たちに騎士が一人つき、他の者は王子について家の中に入っていった。これで、アーヴィンとサンディはお終いね! いい気味だわ。私たちは付き添われて、安全に家に帰ることができた。



 翌日王子がアパートを訪ねてきた。騎士を一人連れてきたが、中に入ってきたのは王子だけだった。これは、期待できそうだわ。

 王子には食卓テーブルに座ってもらった。この家にはリビングがないから仕方がない。エレにお茶を淹れさせた。


「ありがとう」(エレオノーラといったな。動きも優雅で美しい)


 王子はエレに微笑んだ。エレは恥ずかしそうに微笑んで、私の隣に座った。


「取り調べで、アーヴィン・ダジメントと恋人のサンディは、自分たちはピニオンの悪魔崇拝を調べるために入会しただけで、お前たちは仲間だと言っていた」


 あいつら!


「違います! あの二人にピニオンが集会に来たときの証人になってほしいと、ゲストとして呼ばれたんです。そしたら、サンディがエレを生贄にして。あの二人は悪魔を呼び出すのに協力したんです」

「二人の入会書はあったが、ピニオンが入会した形跡はなかった」


 やっぱり、ピンは入会していなかったのね。とんだ危ない橋だったわ!


「あなたたちが犯した罪のことは、ケニン伯爵から聞いている」


 伯爵話したのね! あいつめ。二人が友人なのは、エレがお茶会で聞いてきたので知っていた。これでもう、王子との話はないわね……。


「二人は子爵家を出てから苦労しているのだろう?」(こんなことに手を貸したんだからな)

「ええ、そうですが」

「なら、城に来ないか?」

『え!?』


 私たちは驚いた。どういうことなの?


「私たちの身分も、罪もご存知なのでしょう?」

「ああ、そうだ」


 正気なの!? でもこのチャンスを逃すことはできない。私は遠慮がちに言った。


「王子がよろしいなら、喜んで参ります」

「なら、私が帰る時に一緒に城に行こう。ほとんどのものは城で用意するから、必要なものだけ持って行くように」

「はい。分かりました」

「では、失礼する。またな、エレオノーラ」

「はい!」


 王子はお茶を飲むと、エレに挨拶をして出ていった。王子はエレに気があるのね! さすがだわ、私のエレ!


「エレ! やったわ! 城に招待された!」

「本当! 夢みたい!」(あんな怖い思いをしたのに、全部がいいほうへ向かった! すごいわ)


 私たちは抱き合って喜んだ!

 後日、王子が迎えに来て、王子の馬車で城に向かった。


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