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家族に家から追い出されたので、悪役令嬢を矯正します!  作者: 雲乃琳雨


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29、アーヴィンとの決別

 ダジメント男爵邸では、サンディが普段着のワンピースを着て、明るい壁紙の廊下に立っていた。もうメイドの仕事はしなくてもいい。アーヴィンの婚約者として過ごしていた。


 でも、私が自由に使える手当が少ししかないわ。奥様が言うには、マクレガー家に支払っている賠償金のせいで余裕がないと言っていた。


『お母様がそう言うなら、仕方ないよ』


 アーヴィンは母親には逆らわない。せっかく貴族の婚約者になったのに……。私は歯をギュッと噛みしめた。でも奥様はこの夏、避暑旅行に二回も行っている。私の費用を削っているのね!

 私は執務室に行って、アーヴィンに聞いてみた。


「私の費用がないのよ」

「仕方ないよ。それで、この家が取り潰されないから」

「じゃあ、ピニオンに言ってちょうだい。これからの賠償金を無しにしてくれって。それさえなければ、私に費用が回ってくるでしょ」

「う、うん。じゃあ聞いてみるよ」


 アーヴィンは頼りなく答えた。アーヴィンは少し物足りないけど、顔はかわいいし、大体のことは言うことを聞いてくれる。平民から抜け出せたし、私にとって申し分ない相手だわ。

 悪役令嬢のピニオンだったからこそ、アーヴィンと恋人になれたと思う。交際を反対していた旦那様を殺してくれたことも感謝している。

 でも、今のこの待遇には不満だわ。



 アーヴィンはマクレガー子爵邸に向かった。


(気が重いが、サンディのためなら仕方がない。それにピニオンは強欲だと思う……。ピニオンが言うには、賠償金は従業員たちの休業中の給料ということだが、そんなことを気にするはずがない。ちょうど、サンディ分の費用に当たるから、僕たちへの嫌がらせだろう……)



 ピニオンが乗馬の訓練をしているところにマイクがやって来て、アーヴィンの来訪を告げた。


「アーヴィン様が来ました」

「え?」


 なんか予定があったっけ? 私は乗馬用のズボン姿のまま、アーヴィンと応接室で面会した。


「何の御用かしら?」

「あ、賠償金のことで来たんだ。減額してもらえないだろうか? 今後の支払いを無しにしてほしい」


 何を言ってるのかしら、こいつ。家が取り潰しにならなかっただけでも感謝してほしいのに。勘違いも甚だしいわ!


「工場の逸失いっしつ利益を入れてないのは、あなたも知っているでしょ。十分減額しているわよ。払わなかったら家が取り潰しになるのに、それでもいいのかしら?」

「……君と話ができるとは思ってないよ。もういい。帰る」


 なんなのよ、その態度は! 払える額にしてやってるのに、自分のことばかり言って! 領地経営は上手くいっているようだけど、本当に子供だわ。改めて、アーヴィンという人間が分かったような気がした。私はツンと上を向いて答える。


「そう、じゃあ、お帰りになって」

「君は僕の父を殺したんだ。それを忘れないで」

「何ですって!!」


 なんてことを言うの!! 私はアーヴィンをキッと睨みつけた。張り倒してやりたいところだけど、手を握ってぐっと我慢した。おじ様と同じように、愚かなことはしたくない。やっぱり、アーヴィンとおじ様は親子ね。本当に貴族男性は苦手だわ……。

 アーヴィンがドアを開けると、マイクが険しい顔で立っていた。


「お送りします」


 そう言うと、アーヴィンを連れて行った。私も後をついていく。アーヴィンを送り出すと、私はマイクに言った。


「もうこの家にアーヴィンを入れないでちょうだい」

「承知いたしました。お嬢様はご立派です」

「……ありがとう。その言葉で救われたわ」


 マイクはあの言葉を聞いていたんだ……。私たちは微笑んだ。



 アーヴィンは屋敷に帰るとサンディに報告した。


「ダメだったよ」

「……」


 本当にやる気があるのかしら? 私はアーヴィンに不満を持った。


「領地経営は問題ないけど、父の費用分までお母様が使っているから君の分がない」


 やっぱり! 奥様のせいね!


「でも、母方の親族に邪魔されると君を貴族にできない。だからそれまではお母様の助けが必要なんだ。その後は、お母様に引退してもらってここから引っ越してもらうよ」

「まあ! 私のことを考えてくれていたのね。うれしい!」

「もちろんだよ!」


 私はアーヴィンに抱きついた。アーヴィンも私を強く抱きしめた。


(ピニオンは意地悪な少年のような女だった。サンディは、本当にかわいらしい素直な女性だ。ピニオンに傷つけられた僕を優しく包んでくれた)「君を家に入れることができたから、父が死んだのは良かったと思ってる。当主になって家のことも自由にできるから。父は今まで本当に邪魔だった」

「そうね。そして、今邪魔なのは奥様だわ。奥様がいなければ、費用が私にまで回ってくるわよね」


 旦那様の分も合わせて!


「そうだな。このままだと、お母様がそれ以上お金を使いそうだ。お母様も父のせいで使えなかったからね」


 じゃあ——

 早急に奥様をどうにかすればいいんじゃないの?



 モントルのジューベリ伯爵邸の庭で、エレオノーラが久しぶりにお茶会に参加していた。他に令嬢が二人いる。


「エレ嬢、大変でしたね。家を追い出されるなんて。本当になんて悪役令嬢かしら」

「本当よ! しかもカイゼル様と、婚約までするなんて!」

「なんでも、強引に婚約を取り付けたらしいわよ!」

「まあ! お気の毒!」


 それを聞くと、私の胸が痛んだ。なぜ、ピニオンばかりいい思いをするの? ずっとそればかり考えている。ジューベリ伯爵令嬢のミシェルが言った。


「私、舞踏会で二人を見ましたのよ。カイゼル様、すごく穏やかな顔で踊ってらしたわ。まるで仲の良い二人を装っているようでした」

「ご自分を犠牲にされて、ご立派ですわ!」


 伯爵様……かわいそう。ピニオンなんかと婚約して。私が救って差し上げたいわ……。


「そういえば、あの女、強盗を蹴り殺したらしいですわ」

「まあ! なんて野蛮な。どんな育ち方をしたら、そうなるのかしら! ダジメント男爵も死刑になったし、あの女に関わるとみんな不幸になるわね」


 そうよ、全部ピニオンのせいよ! 私はスカートをぎゅっと掴んだ。

 今のところ支援してくれそうな貴族は見つかっていない。お母様は支援してくれる家の令息と私を結婚させようとしているけれど、私は嫌だわ。だって、伯爵様がいいんだもの。どうにかならないかしら……。


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