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家族に家から追い出されたので、悪役令嬢を矯正します!  作者: 雲乃琳雨


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28/40

28、伯爵と勝負

 目が覚めると知らないきれいな部屋だった。私、寝ちゃったんだわ。部屋の中は薄暗い。もう夕方だ。


「どこかしらここは?」


 予定では、先にメダスの子爵邸に行くはずだった。ワンスが部屋に入ってきた。良かった。


「お嬢様、目が覚めましたか」

「ここはどこかしら?」

「モントルの伯爵邸です」

「えっ!?」

「伯爵様が、もう遅いからこちらに泊まるようにとのことでした」

「そうなのね」


 出発が遅くなったからだな。わぁ、伯爵の住まいに来てしまった。ここは豪華で広い部屋だ。


「お嬢様と伯爵様が寝てしまって、身を寄せる姿が恋人同士のようでしたわ!」


 何!?


「その後、起きた伯爵様が予定をモントルに変更して、到着するとお嬢様を抱えて運んでくださったんです! その様子がとても素敵で、みなさん見惚れていました」


 ワンスが両手を握ってうっとりとして言った。うわぁ……! 私たちは、婚約者という名のただの知り合いなのよ。みんなが思っているような関係じゃないわ……。

 前にも伯爵に抱っこされたことはあったけど、みんなに見られたのはやばい。何もないうちに別れないといけないのに……。でも、お礼は言わないとな。


「お食事の用意ができましたので、呼びに来たんですよ」

「分かりました」


 食堂に行くと伯爵が座っていた。歩いて来るときに使用人たちの視線がマイクと同じ、頬を染めてキラキラしていた……。そして、妙に歓迎されている。普通、ぽっと出の婚約者が悪役令嬢なら、みんな嫌がらないだろうか? 食堂でも執事やメイドたちの妙な視線を感じるけど、お礼を言わないと……。


「運んでくださって、ありがとうございます」

「問題ない」


 羽のように軽いとか言ってたもんな。伯爵だって、そんなにたくましく見えないけど、どこからあんな力が出るのだろう。引き締まっているのだろうか。いや、私がか弱いからだな。自分で納得。


「また、私を見ているのか?」

「はい。伯爵は怖いけど、強そうに見えないなと思って」

「フッ」


 伯爵は呆れて苦笑した。私は真剣ですよ。


「明日、弓で勝負しよう」

「はい。小型の弓を用意してください」

「分かった。その後、送らせる。私は仕事があるからここでお別れだ」

「はい。じゃあ、明日もらったお茶とお菓子を持っていきますね」

「ああ」


 ついでに自分が買った物も渡そう。

 食事が済んだあと、お風呂に入ってからワンスに髪をいてもらった。ワンスは、伯爵邸の使用人たちから聞いたことを話してくれた。


「伯爵様は、前領主のお祖父様とお祖母様にとてもかわいがられたそうです。それで、モントルを継いだそうです。ここの使用人の方々も伯爵様のことを温かく見守っていました。ご結婚されないと言っていた伯爵様がご婚約された相手が、悪名高いお嬢様だったので、当初は心配されていたそうです。でも、今日のご様子を見て、みなさん心を入れ替えたそうです」

「どのように?」

「先代御夫婦は、別荘地にお住まいで、ここには伯爵様しかいませんが、いつもほぼ無表情で無言だそうです。でも、お嬢様といてとても柔らかい表情をされていたので、みなさん安心したそうですよ」


 ま、ず~い! 変に期待させたらダメだよね。早く王女に手紙を書かないと! 私を助けられるのは王女だけよ!


「あと、イーサンとビルがお嬢様に気遣ってもらったことを絶賛していましたので、それもあったようです」


 うお。それは……そういうつもりでは、でもうれしい。イメージを変えたいとは思ってるけど、人によってはまずい。困ったものだ……。



 翌日、私は髪を一つ結びにしてもらい、伯爵に渡す紙袋を持って訓練場に行った。

 伯爵邸は広い。入ったときは寝ていたから、まだ外からは見ていないけど、うちの三倍はありそうだ。もう、城だよ。城は政府機関があるので、ここの三倍はあるだろうけど。

 伯爵はすでに来ていた。白いシャツ姿でラフな格好だ。いつもきちんとしているので新鮮だ。やっぱりたくましいかも。着やせするタイプだな。伯爵は目をすがめて私を見る。


「なんだ?」

「ちょっと、新鮮で。おほほほほ」

「? この弓を使え」

「はい」


 私は紙袋を棚に置くと、用意された矢かごを腰につけ、小型の弓を取った。屋外に的が用意されていた。


「的までは30mある。五本勝負だ」

「はい」


 私は一本中心から外れたが、四本は真ん中に当てた。伯爵は、三本は周りに当たって、二本中心に当てた。


「見事だな。お前の勝ちだ」

「やった!」

「どんな、馬がいい?」

「私が乗りやすいような小さめで、早い馬がいいです」

「分かった」


 伯爵は満足そうに微笑んだ。道具を片付けると、私は紙袋を渡した。


「伯爵にはお茶がまたくると思うので、私が二つもらいました。ケリー領のお菓子も一箱あります。ピンクの缶とこっちの箱のお菓子は私からのお土産です」


 伯爵は意外そうな顔をして、ピンクの缶を手に取った。実は、私は前もらった青い缶を取ってある。何も入ってないけどきれいなので、棚に飾っていた。


「私も黄色い缶のレモンのお茶を買ったので、来たときに淹れますね」

「楽しみだ。私からもお土産がある」


 伯爵も紙袋を私に渡した。中にいろいろな箱が五個ぐらい入っていた。全部に王室御用達のマークがある。


「おお!」

「回ると時間がなくなるだろうから、首都の伯爵邸の者に頼んで用意させた」

「ありがとうございます!」


 気が利く! こういうところは素敵よね。なんだか今日の伯爵は素な感じだった。自宅にいるからかな。


 伯爵と別れると帰る準備をした。帰りの御者と護衛は、ビルとイーサンだった! 二人とも休んでいいのに、最後まで送りたいとまた志願してくれたのだ。デニスともここでお別れなので、ワンスとお土産の交換をしていた。ワンスはちょっと涙目だった。外から見た伯爵邸は、本当にデカイ。これが、街中にあるから本当にすごいわ。

 馬車に乗って、伯爵邸を後にした。私はワンスに聞いた。


「デニスとはどうなったの?」

「月一ぐらいで、手紙を書くことにしました」

「そう」


 ワンスは寂しそうだった。これからは二人ともすぐには会えないからな……。そう簡単にはいかないわね。

 私は帰ると早速王女に手紙を書いた。


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