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家族に家から追い出されたので、悪役令嬢を矯正します!  作者: 雲乃琳雨


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25/40

25、友達の第二王子

 私たちは会場の中に入って、ひときわ注目を集めた。

 視線が痛い! 刺さるようだわ。指輪の分、我慢だわ! 私は言い聞かせた。でも、すぐに視線は移動し、令嬢たちが見ているのは伯爵だった。めったに舞踏会には顔を出さないから……。私も横から伯爵を見上げる。結局この人は珍獣なのよ。


「なんだ?」

「いえ、なんでもありません。……気になりましたか?」

「穴が開くほど見られてはな」

「ああ……」


 そうですね。珍獣だから、よく見てしまった。


「でも、他の人のほうがよく見てますよね」

「お前の視線のほうが、おかしいからな」


 伯爵はギロリと私を睨んだ。うっ……やばい。珍獣なんて言ったら、本当に串刺しになっちゃうかも。

 音楽が流れる。伯爵と向き合って、お辞儀をして手を組んだ。伯爵の手が腰に回り、こそばゆいわ。


「お前は小さいな」

「やっぱり、大きい人のほうがいいですよね!」

「……」


 伯爵は私をくるりと回すと、抱き寄せた。


「羽のように軽いから、楽だ」

「そうですか……くっつきすぎですよ」


 伯爵はパッと私を離す。伯爵はダンスも上手だ。あ、足を踏んでやろうかな。みんなは、私が下手なほうが喜ぶだろう。私は早速、足を出そうとしたが、急に体が浮いた。


「えっ?」

「お前の考えていることなどお見通しだ」


 伯爵は私の腕を支えて持ち上げると、また下に降ろした。

 ちっ。心の中で舌打ちをしたけど、顔に出ていた。それを見て伯爵は、満足そうに嘲笑ちょうしょうを浮かべた。

 その様子を見てか、周りはさざめいた。音楽が終わり、お辞儀をした。


「さて、十分見せつけたので、今度は挨拶に行くぞ」

「えっ!? 誰ですか」


 ドキッとして焦った。——王様とかかな? ちらりと、壇上の王族の席を見ると、紺色の髪のモンステラ王女が身を乗り出して、ものすごい顔をしてこちらを睨んでいた。

 ぞっ!


「第二王子に会いに行く」


 第二王子は、壇上にはいなかった。薄い紺色の髪の第一王子は、婚約者の公爵令嬢と二人で会場に降りて、他の貴族と話をしていた。公爵令嬢は、ピンクレッドのきれいな髪の人だった。いかにも高貴な令嬢といった感じ。


「第二王子って、性格に問題がありますよね」


 できれば会いたくない……。


「そうだな。会わないと、多分会いに来るぞ」

「会います……」


 こ、怖すぎる……。伯爵と、王族が使う赤いカーテンが付いた入口に向かう。脇にいる従者に通してもらって、会場を出ると左手に階段があった。上にも観覧席がある。


 階段の上に腕を組んで壁にもたれかかっている金髪の男性がいた。第二王子は金髪だと聞いていたので、多分この人だ。金髪は王様の髪色で、紺色は王妃様の髪色だ。  

 赤い絨毯の階段を二人で上がる。

 ああ……この人も私を睨んでいるわ。はぁ……。心の中でため息をついた。


「お前たち、悪魔が憑いているぞ」

「えっ!?」


 私は思わず声を出した。王子はこちらを指さしていた。なんか思い出すわね。


「カイ、この女に悪魔が憑いているから婚約したのか?」

「この悪魔は、こいつのではない」


 王子の問いかけに、伯爵は私に指をさして答えた。こいつ!? 婚約者に向かって……。それと、王子も悪魔が見えるの!?

 王子は人差し指と親指を合わせて、上に向けた。


「なぜ取らない?」

「取っても無駄だからだ。

 紹介しよう。こちらが、ステファン第二王子だ。ステン、私の婚約者のピニオン・マクレガー子爵令嬢だ。今は父親に代わりに子爵代理をしている」

「ピニオン・マクレガーです」

「フンッ」


 私がカーテシーで挨拶をすると、王子は鼻を鳴らして横を向いた。やっぱり怒っているようだ。私もワンスのことがあって、寂しいから、友達の婚約者なんかおもしろくないわよね……。絶対他に友達いないだろうし。王子は少し斜めに顔を上げて、私を見下すように見た。


「その髪色、まるで犬を連れているようだぞ」


 なんだと!? でも我慢だ。私が不釣り合いなほうが、伯爵と婚約解消できるからね。むしろもっと言ってください。伯爵が私を眺めて無表情に言った。


「おもしろいだろ」


 お前が言うな! 伯爵の左腕をつかんで爪を立てた。しかし、伯爵の腕は硬かった……。伯爵は微笑むと、私の手にそっと自分の手を乗せた。


「躾がなっていないがな」


 そう言うと、恐ろしい顔をして私の右手を掴んだ。やばい! 手を振りほどこうとしても、取れないというか、岩に掴まれたみたいに動かない! 私は涙目になる。これだと、お仕置きに怯える犬と同じだ。それを見て、王子は満足したようだ。興味が無くなったように観覧席の方に戻っていった。


「伯爵様はお優しいので、お仕置きなんかしませんよね」

「当たり前だ。そんな趣味はない」


 そう言うと、私の手をパッと放した。良かった! 私は自分の手をさすった。


「舞踏会はこれで終わりだ。帰るぞ」

「はい!」


 良かった! 多分婚約のお披露目だったのね。そういえば、伯爵は出かけるときから無口で、機嫌が悪そうだった。私がいたずらしようとするから、余計に気が散ったのかも。

 私は伯爵の後ろ姿を見た。伯爵でも余裕がないこともあるのね。そう思うと、とても新鮮だった。

 伯爵は振り返ると、私に手を差しだした。私は伯爵の手を取って、階段を下りた。


「王子は、光魔法が使えるのですか?」

「秘密になっているが、そうだ」

「なるほど」


 多分、悪魔が見えるせいで性格がおかしいのね。伯爵は唯一同じだから、きっと親しみが湧いたんだわ。この国は男の神様だから、男性のほうに光魔法が現れやすいという話だ。でも、聖女の様に治癒魔法の話は聞かないな。私は伯爵に聞いてみた。


「治癒魔法は使えますか?」

「使えるが、光魔法は魔力消費が激しいので、悪魔祓いにしか使わない」


 聖女、かわいそう……。


「あいつは、悪魔が見えるせいで人間不信なんだ。光魔法のイメージを損ねるから、内密にされている」

「光魔法の人って性格いいイメージありますもんね」


 二人とも結局そのせいで問題ありだわ。伯爵がジロリと睨む。うおっ!


「伯爵様はお優しいです」

「あいつは難しい性格だから気をつけろ」

「ええ、もちろんです」


 王族に粗相したら即、処刑だわ。内密にされているのは他にも、第二王子に稀有な光魔法があると、王位継承争いに利用されるかもしれないからだろう。


「あいつも一応、聖騎士だ。聖騎士団を指揮して、悪魔崇拝を取り締まっている」


 ぞっ! 気をつけなきゃ! 目を付けられたら大変だわ。私は身をすくめた。それを見た伯爵はため息をつく。


「良かったな、俺の婚約者で」

「ええ、そうですね!」


 何がいいかよく分からないけど、無事に王宮を出られた。

 舞踏会はこの後も3日続くが、私たちは翌日観光をして、明後日帰る予定だ。


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