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家族に家から追い出されたので、悪役令嬢を矯正します!  作者: 雲乃琳雨


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21/40

21、放火事件

 数日後の朝、秘書官のクラウディオが慌てて執務室に入ってきた。私はマイクと仕事中だった。


「大変です! 織物工場が火事です!」

「何ですって!!」


 私とマイクは驚いた。そんな!


「今は従業員が火を消している最中です。連絡の者が来て伝えてくれました!」

「行きましょう!」

「はい!」


 マイクが返事をする。クラウディオは衛兵二人と先に、馬で工場に向かった。マイクは使用人を警備署に送った。私は氷を料理室にもらいに行き、メイドに新しいナフキン五枚と救急箱を用意してもらった。

 私とマイク、連絡に来た従業員の男性と一緒に、馬車に乗り込んで出発した。マイクが男性を紹介する。


「こちらは、従業員のジュードです。こちらは、子爵代理のピニオン令嬢です。ジュード、話を聞かせてください」

「初めまして、お嬢様。朝出勤すると、工場が中から燃えていました。私たちはみんなで消火活動にあたりました。火の勢いは強かったです」

「そうですか」


 私は顔を曇らせて返事をした。綿は燃えやすい。お父様が寝ているときに、こんなことが起きるなんて……。

 工場に着くと、なんとか火を消した後だった。工場には防災小屋が用意してある。それでも、半分以上が焼けてしまった。なんてことだ。私は工場を見たことがなかった。最初に見た姿がこんな姿だなんて……もっと早く来ればよかった。

 従業員はみんな、飛んできた煤で汚れていた。クラウディオは工場長と工場の状態を確認している。


「みんな、消火活動ありがとう」


 私は力なくそう言った。なんでこうなったのかしら? 朝に中から燃えるなんて……。マイクが従業員に尋ねた。


「最初の状況はどうでしたか?」

「勢いがよくて、不自然でした。工場には火種になるようなものはなかったはずです」

「やはり、それなら放火かもしれませんね」


 そんな!! いったい誰が……。でも、ここはマイクに任せなきゃ。私は従業員たちに尋ねた。


「怪我をした人はいる?」

「はい、少し火傷やけどした者がいて、今水で冷やしています」


 女性が少し離れた水道の場所を指差した。男性二人がバケツを下に置いて、水を出して交代で冷やしている。私は様子を見に行った。


「火傷を見せてちょうだい」

「はい」


 一人は右肘から下全体が赤くなっていた。一人は左手の甲に細長い火傷がある。冷やしていたから、水膨れにはなっていない。良かった。

 私は馬車から保冷箱とナフキンを持ってきた。中の氷をアイスピックで割り、ナフキンに包んで渡した。


「これで冷やして」

「ありがとうございます」


 もう一つ作る。私のできることはこれぐらいしかないわね。私は水道を止めた。


「氷はまだあるから移動しましょう」

『はい』


 二人とみんなのところに移動する。二人が後ろでひそひそと話している。


「この人はお嬢様みたいだけど、エレオノーラ様は追い出されたって話だよな」

「そうだな。旦那様と同じ髪の色だし、ピニオンお嬢様だろ」


 従業員には、エラが出て行った理由を言っていない。突然大声がした。



「私は犯人を知っています! こいつに違いありません!」


 えっ!? 見ると、工場長が小さな男の子の襟を掴んで、引っ張り上げていた。私は従業員たちに聞いた。


「あの子は?」

「はい、あの子は少し前に雑用で雇ったミルンです」


「ボクじゃありません!」


 ミルンは抵抗していた。工場長が言う。


「お前は先に来ていたじゃないか!」

「それは……ボフスさんからこの時間に来るように手紙をもらったんです」

「え? 俺はそんな手紙、渡してないけど」

「そんな……カバンのポケットに入っていて」


 そのやり取りを聞いて思った。……何かおかしいわ。ボフスが頭をかいてミルンのことを話した。


「ミルンは俺が紹介したんです。雑用の子を探しているって聞いて、母親が病気で大変だからと思って。いい子だと思ったんですけど……」


 秘書官がマイクに報告する。


「割れた窓の下に木箱が置いてありました。そこから侵入したと思われます」

「ボクが来たときには火が付いていました」

「お前がつけたなら、そりゃそうだろ」

「本当に違うんです。お願いです、信じてください!」


 ミルンは必死で懇願していた。……あの子が嘘をついているように見えないわ。


「待ちなさい。その子を放しなさい」


 工場長の手が緩んだ隙に、ミルンは工場長から離れてこちらに来た。私はミルンの肩に左手を置いて聞いた。


「その手紙はあるの?」

「いいえ、読んだら捨てていいって書いてあったから。でも、ゴミ箱にまだあると思います」


 それを聞いて工場長の顔が引きつった。まさか……。話している時に、警備署の兵士二人が到着した。

 ミルンを犯人だと言ったのは工場長だわ。窓が割れていたと言ったけど、ミルンはどこも怪我をしていない。工場長なら鍵を持っている。


「工場長、あなたはミルンの次に来たのよね」

「は、はい」

「あなたが火をつけたのね。工場長を連行して」


 私が構わずそう言うと、全員が驚いた。工場長がたじろいだ。


「ま、待ってください! わ、私じゃありませんよ」


 工場長はみんなに信頼されていたでしょうに。私も何で工場長がそんなことをしたのか分からないわ……。


「待ちなさい」


 声がして振り返ると、ダジメントのおじ様が歩いてきた。


「工場が火事だと聞いて、駆け付けてきたよ。工場長が嘘をつくはずないだろ。まずその子供を調べたらどうだ」(ふう、来て良かったよ。子供ならたいした罰にはならないからな)


 どうしてここにおじ様がいるの!? まさか! おじ様が首謀者なの!? 私は工場長に言った。


「工場長、あなたお金をもらったのね! 正直に言わないと、あなたは放火の罪で死刑になるわよ」

「えっ……」

「待て、まだ決まったわけではないだろう」


 おじ様が遮る。来てもらってちょうど良かったわ。ここで勝負を付けないと……逃げられてしまうかもしれない!


「誰に命令されたのか言いなさい! 言えば減刑で終身刑にしてあげる。今言わないとあなたは死刑よ!」

「おい、やめろ!!」

「——ダジメント男爵です。お金をもらいました……」


 工場長は呆然とした顔で、膝をついて座り込んだ。みんなが一斉に、おじ様を見た。


「嘘だ!! 何を言っている。わ、私は帰る!」


 おじ様は踵を返すが、兵士が阻んだ。


「そこをどけ!」

「捕まえてちょうだい!」


 私が叫ぶと、兵士はおじ様の手を掴んで後ろ手に縛りあげた。


「やめろ!」


 工場長は衛兵が縛った。兵士の一人が私たちに言う。


「監査官が後日来ますので、現場はこのままにしてください」

「分かりました」


 マイクが答えた。おじ様と工場長は、おじ様が乗ってきた馬車で連行された。


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