第134話 事件は現場で…
会議室にいるロアンの元に、騎士団からの伝令が飛び込んだ。
「マモルさん、大変です!隣町のエルゴでも、ここエランと同じようなことが起きているとのことです!ただ、冒険者ばかりではなく、一般の人も暴徒化しているようです!」
頭痛ぇ…。何がしたいんだ?『魔族』のヤツら。会って聞いてみたいもんだ。ただの嫌がらせだろうけど…。目的が全くわからない…。
「何人くらい暴れてるんだ?」
「10人前後のようです!」
「ルナ、頼まれて。タマモと一緒に『お館様』のところに行ってくれないか?領地全体を囲む結界が、至急必要になりそうだ。ヒース、エクランド領全体の地図はあるか?」
地図を見ながら、どうすれば全体を囲めるか、検討してみた。
「領地全体に『護りの星』を作るのか?」
「効率が悪いな…。もっと効率よく結界張ることはできんのかな?」
「あたしたちはそれを、『お館様』に確認して、お願いしてくればいいの?」
「あぁ、そうだ。頼めるか?」
「うん!帰って支度できたら、タマモと一緒に行って来るね!」
とルナが会議室を飛び出した。マリアが付いて行こうか迷っていたが、
「まだ明るいし、大丈夫だろう」
と伝えて座らせた。ヒースが
「『お館様』って誰だ?」
と聞いてきたが、詳細はメンドくさいので、ルナとタマモの育ての親だと伝えた。間違ってはいない。
効率的な結界の設置を聞くのは、単に効率の問題だけではない。お札や封印をタマモに作らせることは、2度としたくなかった。集中しすぎて、終わってからフラフラだったからだ。たまには『お館様』にもお仕事をして頂こう。
「領地内に騎士団の配置を再検討する必要がありそうだな。ロアン、今の配置を教えてくれるか?」
「各町に10〜15名ほど配置しています。領内の町は4つ、その近隣に2〜3つくらいの村が存在します。とりあえずは今の配置でカバーできると思いますが…」
「そうか、そうだな、何とか足りるか…。マリア、お使い頼まれてくれるか?マルタの店に行って、指輪がいくつくらいあるか、確認して、預かってきてくれないか?代金は別途支払うから。弟子の分は確保して構わない」
「うん、行って来るね!」
マリアが走って行った。ワシはテーブルの地図を見直した。『鎮守の森』が、領地の西の端。町や村はその東側に固まっている。そこを円で囲む。この町や村をカバーできれば、被害は最小限に留められる。もっとも、大きな被害は出てはいないが…。先のことを考えると、予防線は張っておきたい。
◇◇◇◇◇
ルナは家に着くなり、タマモを起こしていた。
「タマモ、起きて!あたしたちにしかできないことをする必要ができたのよ!」
「どうしたのよ…?疲れてるのに…」
「わかってる。マモルも申し訳ないって言ってた。でも、マモル以外に『お館様』のトコに行けるのは、あたしたちだけなのよ!」
「『お館様』のトコに…?慌ててるってことは、マモルの指示なのね?なら急がないと…」
理解が早い。タマモがベッドから出た。
「で、何をするの?」
ルナが説明する。領地全体を囲む結界が必要になったこと、短期間で効率よく結界を張る方法がないか、『お館様』に確認する必要があること。その効率化は、タマモに無理をさせないためであること…。
説明を聞いたタマモは、即座に着替えを始めた。
「マモルがそう言うなら直ぐに行こう」
まだ疲れているであろう身体で準備した。ルナは部屋を出て、コーヒーを入れ始めた。少しでもタマモが覚醒して、無理なく動けるように…。
コーヒーを一杯飲んで、ルナとタマモの2人は森に入って行った。
◇◇◇◇◇
マルタの店では、マリアが状況を説明し、マルタがありったけの指輪を出していた。
「これを騎士団の一部に付けさせて、身を守らせるのね?持って行きなさいな。マモルが待ってるんでしょ?あんたもこれ付けときなさい」
と、店で手伝っている弟子に渡した。マリアは言われるがまま、指輪の入った袋を手に、ギルドに戻って行った。
「まぁ次から次へと…。こんなところの領主になるなんて、ウチの人も運がないわね…」
「師匠、奥さんっぽい発言ですね?」
「一応、奥さんなんだけど⁉︎ あんたもチョイチョイ失礼よね…」
「でも旦那さん、新しい領主様なら、今回の問題もあっという間に片付けるんじゃないですか?この間のエイサムだって『無血停戦』をやったくらいですから…」
「だといいんだけどね…。今回のは、そんなに簡単じゃない気がするのよ…。だからあんたも、気を付けて、自分の身は自分で守りなさい」
ワシの家族は一様に、『今回の件はヤバそうだ』と、直感的に理解していた。
◇◇◇◇◇
マリアが持って来た指輪を受け取り、数を数えた。20数個あった。よくもまぁここまで作ったこと…。
5つはギルド分として確保した。ヒース、アラン、ティナ、そしてチャッキーとコーダに渡す。あと17個ある。そのうち2つをミーシャとカレンに、残りはロアンに託し、騎士団内で配布する様に伝えた。
「この指輪、マルタが魔石と土台の指輪に魔法陣を刻んだもので、『魔除け』の役割を果たす。ワシとの関わりの深いメンバーを中心に渡したい。指輪を増せれば、騎士団にも渡して行きたいと思っているが、なんせ手仕事で作ってるからな、どうしても数が少ない」
と言いながら、渡して行った。アランに2つ渡した際に、
「マモルさんと奥さんたちの分は確保されてるんですか?」
と、まぁもっともな問いが…。
「確保してるというか、既に付けてる。これのコピーだよ、渡してるのは」
と言って、自分とマリアのモノを見せた。
「色石のところを魔石にして、台座だけじゃなく、石にも直接、魔法陣を刻んである。台座はマリアが作ったモノだ。魔法陣はマルタが刻み、その確認をルナとタマモがやった。ワシの奥さんたちに共同作業だよ」
渡されたモノを、各々が付けた。ロアンには、彼自身の分と、ミーシャとカレンの分を渡し、それとは別に残りを袋のまま渡した。
「すぐ渡して来ます!」
とロアンが会議室から出て行った。ワシも会議室から出て、コーダとチャッキーを探した。ティナ曰く、
『2人で仲良く修練場で話をしてる』
という。修練場に行くと、ベンチに並んで座る2人の姿があった。だが、『仲良く話してる』ようには見えないが…。2人して息が上がってる。
「よう。いつからそんなに仲良くなったんだ?」
と冷やかし半分に言いながら、指輪を渡した。
「"オッチャン"、これ何?」
『平常運転』のチャッキー。
「『魔除けの指輪』だよ。ワシの関係者に渡してる。2人は客と弟子みたいなもんだからな。渡しておく」
「「アザっす!」」
2人とも、安定の『平常運転』だった…。




