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第133話 町の守護

 ルナ2人、ベッドで目を覚ました。明け方というわけではないが、まだ早朝だ。小窓から朝陽が差し込み、ルナの肌が光って見える。吸い寄せられるように、ルナを抱きしめた…。



*  *  * 



 母屋に行く前にタバコを吸い、ルナが出てくるのを待った。少し照れながら、ルナが納屋から出てきた。


 母屋に入ると既に朝食の準備が済んでいた。コーヒーもドリップされていて、芳しい香りが鼻腔をくすぐる。


「今日、何か予定あるの?」


「予定というか、ルナとタマモに相談かな?」


「「相談?」」


「最近またバカな冒険者がチラホラ出てきてるって聞いた。ヤツらの行動を確認したら、暴れて捕まって、暴れた記憶がなかったり、捕まった後、呆けてたりと自分がしたことを理解していないみたいでな。まさかと思ってね」


「『魔族』?」


「…の可能性はあり得ると思う。でも、暴れても人死にや重傷者が出たわけじゃない。直接の『大きな被害』は出ていない。やってることは『天邪鬼』っぽいんだよな…」


「『天邪鬼』ねぇ…」


ルナは心当たりでもあるのか、呟いていた。


「それで何をしたいの?」


とタマモ。


「エランの町を囲む結界を張りたい。森の結界は、あくまでもこの村と、町に近い森の一部だけをカバーしている。この村は含まれてても、町には結界がないからな。なんとかできないかと思ってね」


『町の守護』は、喫緊の課題かな?エイサムのようになってからでは遅い。先手を打てるなら、打っておきたい。


「わかった、準備する。森の祠みたいなものは考えなくていいよ。お札とそれを入れる箱があれば大丈夫よ。お札は私が用意するから」


と、タマモが言った。


「え?お札、用意する?あぁ、そうか、タマモは『巫女』さん…」


「そうよ?私は巫女でもある。本来、巫女は神の依代として、神を宿して吉兆を占ったり、神託を与えたりするわ。だからお札も用意できるの」


『九尾の巫女狐』、でかした!などと思っていたらルナが、


「箱にはさ、マルタ姉の作った指輪入れて、タマモの『封印札』を貼るのはどうかな?」


「その指輪って、例の『魔除け』の?」


うん?それってなかなか強固になるんでは?


「それもそうね。箱はどうする?」


「よし!箱はワシが作るよ。小さくてもいいだろう?で、指輪はいくつある?」


「昨夜直したり、追加で作ってたから…。リビングにあるだけでも7個あるわね」


「ルナ、タマモ。2人で適するモノを探してピックアップ。位置も決めて。『五芒星』がいいだろうから…」


すぐに取り掛かった。ワシは納屋に行き、端材や板材を見繕った。『箱』は、寄木細工的なモノを考えていた。とはいえ、寄木細工でロック機構など、簡単にできるわけではないが…。あくまでもイメージだ。


 母屋のリビングには、指輪が5個並べてられていた。タマモの姿はない。


「あれ?タマモは?」


「し〜ッ!今、お札の準備で部屋に篭ってる。小さな紙に『封印術式』を書くから、集中が必要なの」


「箱の大きさを確認したかったんだが…?」


「このくらい」


とルナが両手で箱のサイズ感を示した。大体5cmほど。


「了解。作ってくる」


ワシは納屋という工房に戻り、箱の仕組みを考えた。タマモが集中してお札を作るなら、それを受ける箱も雑ではいけない。ザッと仕組みを図式化して、それを指定の大きさでできるように検討した。


◇◇◇◇◇


 数時間後、お札ができたとルナが納屋に来た。こちらは箱の最後の1つを仕上げているとこだ。できたモノを先にルナが母屋に持って行った。


 最後の1つを持って母屋に行くと、箱がテーブルに置かれたまま…。タマモに配置位置など考慮することあるか聞いたが、そんな手間はないようにしたという。かなりの集中を要したようで、タマモ自身は疲労困憊のようす…。なんか悪いことしたな…。


 箱の一部を、軽く叩くことで抜き取る。それが『閂』になっていて、箱が開かない仕組みだった。箱を開けて指輪を納めた。蓋になる部分を組み付け、再度『閂』差し込み、ロックする。その『閂』を巻くように、タマモが『封印札』を糊で貼った。5個の箱が封印され、準備は万端だ。


 マリアに地図を出してもらい、テーブルに広げた。町を囲むように円を描き、『五芒星』を書き込む。各頂点の付近に目印を決めて、配置位置を確定させた。


 地図と5個の箱をバッグに入れて、町に向かった。長時間の集中をさせて、疲れているタマモに留守番を頼み、マリアとルナを伴って家を出た。寝ててもいいように、鍵はかけて行く。


 町の外れにロアンがいた。彼は結界のこと、祠のことも知っているため、何をするのかを説明した。一緒にいた騎士に伝令を頼み、各頂点にあたる場所に騎士を配置して、我々の作業を円滑に進められるように手配してくれた。それどころか、ロアン自身が設置に同行すると言い出した。


「パトロールはいいのか?」


「パトロール?そんなのは他の者に任せますよ。私は『エクランド公の護衛』です」


モノは言いよう…。ロアンはなかなか弁が立つ。それは口先だけではなく、しっかりと理論建てられたモノだ。頭の回転も早く、側近として頼もしい。


 機転が効いて理論派のロアンと、冷静沈着、時に大胆な行動ができるアラン。ワシの周りには頼もしい男たちがいる。ありがたいことだ。ヒースは…、力技と、半ば強引な政治力は頼れるな…。


 さて、設置場所に着いてみたものの、正直、設置に困った。ただ置いておくと、おそらく蹴り飛ばされて箱がなくなる。結局、穴を掘って埋めることにした。穴は目印とした『大きな木』の根元に掘って箱を収めた。他の場所にも同じような木があるから、その根元に肘くらいの深さの穴を掘るよう、ロアンが伝令を走らせた。


 数時間後、全ての箱を埋めて、町を囲む『五芒星』が完成した。すると、町の中のそこかしこで、倒れる冒険者や一般の町民が出た。


 倒れて気を失った者たち。一旦ハンターギルドに収容された者たちは、一様に


『何も覚えていない』


状態で、何故倒れたのか、倒れた場所で何をしていたのかも、全くわからないという。ヒースもアランもお手上げだった。ただ、何らかの被害(イタズラ程度だが)を被った人々からのクレームはそれなりにあり、その多くは、倒れた連中が加害者だった…。


◇◇◇◇◇


 ギルドの会議室に、ワシとマリア、ルナ、ヒースとアラン、そしてロアンが集まった。クレームで確定された者は、全て留置場行き…。覚えがあろうがなかろうが、こればかりは目撃証言がある限り、仕方ないことだ。


 実は、事前にルナから『天邪鬼』について話を聞いていた。自分の『意識の一部』を人や動物に憑依させて、暴れさせたり、イタズラさせたりと、ホントに『子どものイタズラ』のレベルが多いそうだ。しかし、実体を伴う本体が暴れた場合、それなりの実害を伴うらしい。今回はそこまでの実害はなさそうだが…。


 またルナ曰く、『天邪鬼』は結界の中では憑依させることも、実体を保つこともできないらしい。要するに、『魔族』とは言っても、かなり下等な類ということ。おそらく、結界が張られたことで、憑依も実体化もできなくなり、消し飛んだのだろう。


 しかし、『天邪鬼』が下等だとしても、相手は『魔族』だ。もっと高等なモノもいる。それが関わっているとしたら…。相手の狙い、計画がわからんことには手の打ちようがない。さて、何をどう話して対策を考えればいいか…。


「で、だ。マモル、じゃねぇ、エクランド公、聞いてるのか?いや、お聞き頂いてますか?」


「『マモル』でいい!ったく、めんどくせぇなぁ…。悪い、チョイと考えごとしてた」


「そこはちゃんと聞いててもらわんと…。今回倒れた連中は、全員記憶が曖昧だ。やったことは確かなんだ。目撃証言も多数ある。しかし、全てが記憶がない。この点については説明がつかん。どうしたものかって話してたんだ」


「倒れた連中には、『魔族』の類が取り憑いていたことは確かだと思う」


「何故そう言い切れるんだ?」


「ワシがロアンを伴って埋めた箱は、『魔除け』を仕込んだものだ。それを町全体を囲むように、『星型』に配置した。その星を囲む円の中には結界が生まれる。その結界が作用して、憑依してたものが浄化され、消し飛んだと考えられる。通常、結界の中には下等な『魔族』は入れない。入れるとすれば、相当高等な『魔族』だろうな…。ただな、ほとんど消し飛んだと思われるため、『魔族』が何の目的でこんなことをしているのか、聞き出すこともできん。皆目見当がつかんのよ…」


と言い終えて、上を向いた。わからないから手の打ちようがない…。暗礁に乗り上げた感じだな…。

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