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第128話 国王陛下謁見

 ゆっくり開いた大きな扉の中に入ると、陽射しが差し込む、明るく広い謁見の間であった。長い時間、陽射しが差し込むように計算され、奥の玉座はまるで『後光が差すかの如く』光輝いていた。見事な計算と演出、設計した人の見事な仕事に、思わず感心して、見惚れてしまった。


 『後光が差す』玉座には、国王陛下その人がおわした。まぁ、至って当然だが…。マンガとかでありがちな『膨よかで優しげ』とか『全戦無敗の屈強な王』などは当て嵌まらず、まるで


『存在するだけで周りを優しさで包み込む』


ような雰囲気の方だ。ワシが知っているマンガだと、胸に7つのキズを持つ男の『長髪の兄』みたいな…。似たように長い銀髪で、ヒゲを生やしているが、キレイに切り揃えてある…。いわゆる正統派の『美男子』だ。『イケメン』などと、安っぽい形容詞ではない。年齢もワシと同じくらいか、少し若い…。


 ワシは数歩進んで膝を折った。国王はよく通る声で


「よくぞ参った。此度の貴殿の働き、聞いておる。大儀であった。面を上げ、楽にせい」


「有り難きお言葉、痛み入ります。小生の行いましたことについては、陛下のお耳汚しになったのではと恐縮しております。こうしてお目通りが叶いましたこと、恐悦至極に存じます」


「いやいや、そう固くなるな。此度の働きは目を見張るものがあった。なにしろ内乱を回避して、血を流さずに停戦をさせた。他の者では、まずできなかったであろうことを貴殿はやってのけた。これには相応の褒美を取らせる。爵位と領地の授与だけでは足りぬと思っておる」


まいったな…。爵位授与は確定事項か…。それはエクランド公からの領地の引継ぎ含めてのものだろうな…。


「爵位については拝受いたします。また、領地については、一度エクランド公も交えてお話しさせて頂きたく存じます」


「エクランド公は既に納得して、エイサムへの領地替えを受け入れた。貴殿は拒むつもりか…?」


先に話がついているのかよ…。覆せないか…。


「いえ、エクランド公がご納得されたのであれば、否やは申しません。拝受いたします」


「そうか!受けてくれるか!そうかそうか。それはそうと、貴殿は他国からエクランド領に入ったと聞いておる。元の国は何処か?」


「……誠に申し上げ難いのですが、エトロア王国内、エクランド領に来るまでの記憶がありませぬ。覚えていたのは自分の名前だけという有様でした。そんな小生のような、何処の馬の骨とも知れぬ者にこれほどのご厚情、恐悦至極に存じ、陛下に忠誠をお誓いする所存でございます」


 とにかく早く終わらせたい。その一心で、ひたすらゴマをすった。忠誠までは誓わんでもよかったと思ったのだが、さすがにエクランド、エトロア王国に来る前の話などできんからな。ここはひたすら誤魔化すしかない。


「そうか…。他国のことを聞けるかと思っておったが、そういうことでは、残念だが仕方がないか…。わかった。気にするな。褒美についての細かなことは、コレと話すがよい」


と、右隣に立つ初老の男性を指した。指された男性はこちらに会釈をしたため、こちらも会釈を返した。


「今日はゆるりと休め」


と優しく言い残し、国王が退室された。その瞬間、ドッと疲れを感じた。威圧感ではない。おそらく『王としての威厳』なんだろう。兎にも角にも平伏せざるを得ない気持ちになる。


「マモル殿、こちらへ…」


初老の男性に声をかけられた。別室に行くらしい。大臣とか、そういう立場の人か?政治的なことは疎いからなぁ…。内政についてなんて、聞いてもいなかったしな。連れられた部屋に入ると、エクランド公がいた。


「マモル殿、久しぶりです。謁見は無事に終わったようですね」


「エクランド公、またお会いできて光栄です。いろいろお話しさせて頂きたいことが、山のようにあります」


と、握手をしながら挨拶した。相変わらずスキのない、『策士』にも思える御仁だが、今頼れるのはこの人だけだ。


「今日からは、私はエイサム公であり、あなたがエクランド公ですよ」


先手を打たれた。ワシが『公』…。背中がムズムズする…。顔を引きつらせながら、


「そうでしたね…。はははは…」


と乾いた笑いで答えた。笑って誤魔化すしかなかった…。


「さてご両人、そろそろよろしいか?私は、国王陛下のおそば付であり、内務全般を任されている、ガイナムと申す。爵位は公爵じゃ。エクランド公マモル殿、以後、よろしくの」


と名乗られた。


「これは大変失礼つかまつりました、公爵閣下。先に閣下よりご挨拶を頂いてしまい…。内務全般と申されますと、王国内の政の全般を担われていると、解釈してよろしいでしょうか?」


「うむ、理解が早くて助かる。ここは我らだけだ。畏まらんでよい。もっとフランクに話を進めよう」


なかなかのくだけた御仁のようだ。肩が凝らんで助かる。


「でだ、今回の褒美、報酬だがな、爵位と領地だけではないぞ?金品も与えよと仰せでな。して、如何程欲しい?」


「いや、如何程と言われても、妥当な額がわからんので…。ガイナム卿はどの程度が妥当と思われますか?」


う〜ん、と考えてからガイナム卿が言い放った額が凄かった…。


「金貨換算で1,000枚くらいかのぉ」


はぁ〜⁉︎ 金貨1枚で約5万程度だったよな?それが1,000枚ってなると…?5千万⁉︎


「何、白金貨でもらえば、ほんの10枚だわい」


いやね、確かに金貨10枚で大金貨1枚だよ。それが10枚で白金貨1枚だけどさ…。問題は額だろう⁉︎ 目眩がする…。


「ガイナム卿の言われる数字は妥当だと思いますよ?それはそのままマモル殿が頂くもの。プラス、領地の運用管理の費用は国庫から支払われるので、上手くやり繰りして残せば、そのままマモル殿の取り分になります」


「マモル殿は遠慮するタイプか?」


いや、遠慮じゃなくて、金額のデカさにビビってます…。


「その他に、宝物庫からいくつか見繕えばいい」


「宝物庫から見繕うとは?」


『絵画や貴金属、武器等々、欲しいという物全てではないが、持たせろと言われている」


ダメだ、へたり込みそうだ…。まぁ、頂くとして貴金属かな?嫁さんたちとカレンと…。ミーシャも…?は、ちょっと考えよう…。ミーシャまで考えるとティナやチャッキーも、となりそうだけど…。


「わかりました。後ほど宝物庫を見せて下さい。それで、爵位についてですが…?」


「爵位はここに記されておる。『男爵』が授与されることに決まった。ちなみにエイサム公は『子爵』だ。ここの爵位は、働きによって認められれば昇格がある。『伯爵』より上になれば、世襲も可能じゃな」


働きねぇ…。今回のようなことは起きないだろうし、起きて欲しくないな。だとすると、昇格のチャンスはほぼないか。まぁ、昇格したいわけではないけど…。


「まずは、この書類にサインをしてくれ。爵位と領地の受領の証だ」


それぞれ2通にサインをして、1通づつ受け取った。ここも契約書の取り交わしは変わらんか。報酬の額は、ガイナム卿が言った額から何故か増えて、20枚の白金貨と決まった。


 受領証の取り交わしの後、宝物庫に案内されることになった。話が進むなぁ。解放されるのも早いか?


 宝物庫は、わりと片付いており、種類別に保管場所も分けられていた。管理簿も付けられているようで、紛失が発覚した場合は、打ち首とのことだ。管理担当者は気が気じゃないだろうな。


 ここでは、貴金属と宝石を中心に確認した。そこそこの大きさのルビー、サファイア、エメラルドにダイヤモンドといった色石や、金銀プラチナ(白金)…。嫁さんたちプラスアルファへのお土産だ。あとはミスリルやタングステンのような鉱石類をお願いした。


「これらを頂ければと思いますが…?」


とガイナム卿に確認した。


「鉱石については、どのくらい必要か?」


「自分の武器などを作るだけですから、木箱1箱(一箱で石50kg程度)づつもあれば…」


というと、すんなりOKとなり、宝物庫を後にした。


「領主となったのに、まだ自身で槌を打つか?」

とガイナム卿に皮肉られた…。 


 先ほど受領書を交わした部屋に戻り、3人で茶を飲みなから軽食を摂ることに。今回の停戦について聞きたいとのことで、どうやって戦火を交えず停戦できたのか、何があってエイサムの騎士団長だけが命を落としたか、など…。


 "停戦合議"については、領主館に首長を集めることで、彼らを『人質』として各部族を牽制したことや、エクランド公にお願いして、内乱の口火を切った場合、部族全体での『連帯責任』とし、領地から永久追放する旨の『文書』を作成したことなど、話した、というか報告した。謁見の際に、こうした話が出なかったこともあり、おそらくこの場が『報告の場』と踏んでだ。部屋にはいつの間にか書記がおり、ワシの報告を筆記していた。


 何故、エイサム騎士団な団長だけが命を落としたか…?この点については、


『騎士団長の乱心』


として報告した。一旦は、だが…。『魔族』について話はしないとならんが、今の時点では、記録に残したくはない。ガイナム卿交えて内々で吟味してから、報告した方がいいと考えた。


 報告の記録を終えて書記が退室した。そのタイミングで、『エイサム騎士団長の乱心』の本当のことについての報告を始めた。

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