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第126話 王国首都・前夜

 明け方に目が覚めた。とうとう年寄りの仲間入りか…?朝早くに起きるなんて、前世ではなかったが…。


 隣でカレンが寝息をたてている。見ると服を着ていない。ワシも同じだが…。しどけない姿を見て、朝から悶々としてしまい、彼女の胸元に手を伸ばす。カレンが目を覚まして、腕を首に絡めてくる。キスをして朝から元気に一戦…。


◇◇◇◇◇


 完全に覚醒するため、風呂で水を浴びて、着替えをして食堂へ。カレンもニコニコしながらついて来る。


 まだ席は十分空いているため、階段から見える位置を確保した。しばらくするとロアンたちが降りてきた。何やらピッタリとくっついている…。まるで新婚さん…。ロアンの顔は…。かなりニヤケ気味だ…。


 コーヒーにパンとサラダ、スクランブルエッグにソーセージといった、至極一般的なメニュー。しかし、この宿は肉料理に定評があるらしく、ソーセージが旨い。昨夜のメシも串焼き肉が出て、スパイスやハーブが効いた、少し濃い目の塩味が、冷えたエールと合い、美味かった。


 4人でワイワイやりながら、結構な量を平らげた。コーヒーも旨く、ワシとしては満足だ。


 メシの後、荷物をまとめてチェックアウト。2部屋分の料金をワシが払い、馬車に向かった。ちょうどいいタイミングで、馬車の準備もできてたようで、乗り込んですぐに首都に向けて出発した。


 途中、昼飯で立ち寄った町は、何やらアクセサリーや化粧品といった、女性向けのものが特産のようで、昼の後、男女別れての行動になった。


 男2人だと、何をすればいいのか?コーヒーを飲みながら、タバコを吸っていた。ふとロアンが、


「マモルさん、4人も奥さんいるのに、カレンちゃんにも手ェだしたんですか?いつからです?」


とずばり核心を突いてきた。どうも聞きたかったようだ。


「そういうお前さんも、ミーシャと相性よかったみたいだな?」


と、はぐらかしてみた。


「私のことより、そっちの話です!」


こりゃ話さなきゃ納得しねぇなぁ…。


「抱いたのは、エイサムに来てからだ。ただ、エランの町外れで襲われそうになった時に、カレンを盾にミーシャともう1人を牽制したんだ」


「カレンちゃんを盾にした⁉︎ あの『殺気』を放ったって時ですよね⁉︎」


「まぁ最後まで聞けって…。盾にしたとはいっても、相手は女の子だ。背後から羽交い締めというか、抱きついてな。武器なんか持ってないから、チョイと胸の敏感なトコをな、イジッたんだ。そうしたら、エイサムで続きをしろって言われてな…。あの、みんなで飲んだろ?あの時だ」


「あぁ、マルタさんが先に帰ったときか…」


「そう、その時が初めてだ。近くに彼女の部屋があるって言われて…」


ほぼ、洗いざらい話した…。すると聞いてもいないのにロアンがノロケ始めた…。


「そうだったんスね。で、ミーシャって、わりと見た目が派手に見えるから、グイグイ来るように見えるじゃないですか?それがなかなか恥ずかしがり屋で…。それでいて、身体はすごい敏感なんですよ。肌なんて…」


聞いてられん…。多分、ワシの話しは半分も聞いてないな。コイツの頭の中、ミーシャとお花畑でいっぱいなようだな…。


「それはそうと、明日には首都に着く。今後のことは何か考えたか?」


「今後のことですか〜?ミーシャと所帯持とうかと思ってます」


ダメだ、こりゃ…。頭ん中、『明るい家族計画』しかない…。


「違う。騎士団のこととか、ちゃんと話しをしようと言ったよな?」


『あ?そっちのことですか?すんません、舞い上がってて…」


「おいおい、しっかりしてくれ…。もしアレックスが騎士団辞めるとか、エクランドから離れることになったら、お前さんが騎士団の頭張ることになるんだぞ?」


「そうですね。以前、同じことを団長にも言われました。その時は、全くピンとこなかったんですが、今は考えさせられますね…。でも、いつかはそうなるかもしれないんですよね?」


「だからちゃんと考えろと言ってる。エクランドで騎士団を続けてくれるか?それとも、何かしたいことがあんのか?」


「今は、騎士団を辞めるつもりはありません。ですが、正直なところ、ハンターや冒険者という職にも興味はありますね。自由とまでは言いませんが、自分で仕事を選択できる。まぁリスクは自己責任ですけどね。憧れというわけではなく、騎士団辞めるなら考えたい職業ですね」


「元騎士団というキャリアはプラスになるだろうな。登録後は、おそらく上位クラスからのスタートだろう。いいことを言うつもりはないけど、騎士団のキャリアはそのくらいの価値はあるな」


 人は仕事において、向き不向きがある。これ以外にも、適材適所ということも…。人それぞれ考えや性格が違うのだから、こういうことも考慮しなきゃならん。イヤなことをしていても効率は悪いし、モチベーションも上がらない。本人的には『やりたい』ことでも、立場や環境等がマッチしないで、生産性が上がらない、ヤル気が『空回り』してしまうこともある。


 前世でも、そういうことは、ちょくちょく見かけていた。ヤル気はあるが、周りとウマが合わずに、生産性が上がらない、空回りする、果ては会社に来なくなる。或いは病んでしまう…。自分のチームでも少なからずあった。病むことだけは何とか回避してたけど…。


 アランにしても、ロアンにしても、またアレックスにしても、納得いく仕事をして欲しい。おせっかいなのかもしれんが、そんなことを考えてしまう。2人とも、年齢的には中堅だ。アランは…。少々ロアンより上だが…。これから後進の指導も視野に入れていく世代だ。だからこそ、不満とかを抱えながら、仕事して欲しくない。やっぱり、おせっかいだな…。部下を率いていた頃の、染み付いた性みたいなものか…?


 夕方、首都に入る前の宿泊地となる街に着いた。今までのところより、はるかに栄えている。聞いたところによると、首都に行く人たちの宿泊もさることながら、焼物、陶器や陶磁器などの産地だそうだ。前世でワシの住まいの近くも、一大産地だったな。祭りで様々な色合いの、それでいて渋味のある陶器、陶磁器があったな。


 また御者が宿の手配をしてくれた。風呂付き2部屋。今回は小金貨を5枚渡した。物価が高いと見てのことだが、自分の宿とメシ、そして酒を飲むにも十分な金額のようだ。


 ロアンとミーシャ、ワシとカレンで部屋に入る。風呂で埃などを洗い流し、馬車に揺られた疲れを癒した。


 ワシとカレンの組合せは、よくて親子だと思うが、周りの反応からすると多分、『ロ○コンのスケベ親父』的に見られていると思われる。ただ、ミーシャとだと、『飲み屋のネーちゃん連れてるオッサン』か、『不倫カップル』になるだろうけど…。


 そんなことを考えながら食堂に入ると、見るからにガラの悪そうなのがいた。わざとカレンが見えるように、ワシが背を向ける形でテーブルに着いた。まだロアンとミーシャは来ていない。


 エールとソーセージの盛り合わせを頼み、2人で飲み始めた。すると、酔っ払ったガラの悪い連中の1人が、カレンに声をかけた。


「こんなオッサンとじゃなく、オレらと遊ぼうよ〜、お嬢ちゃん」


と、カレンの肩に手を置いた。次の瞬間、流れるような動きで、カレンが男の手をすり抜けた。男がテーブルに組み伏せられ、目の前にナイフを突き立てられた。


「あたしの旦那様を侮辱しないでくれる?死にたいなら、今殺すよ?」


と言い放ちながら、ニッコリ微笑む。こぇ〜…。いや〜これ、やられたヤツはかなり怖いだろうなぁ…。などと思いながら、カレンの動きを見ていた。スキがない。他のヤツらが身動き取れない状況に陥っている。そのタイミングでミーシャとロアンが来た。


「あら、カレン。面白そうね。アタシも混ぜてよ。それにしても、『エイサムの"瞬殺少女"』に手を出すなんて、身の程知らずだね〜、ニイちゃん…」


いや、ミーシャの姐さん、アンタも圧がすごいわ…。しかし、すげぇ『二つ名』だなぁ…。二つ名を聞いて、周りが騒ついた。二つ名がかなりしれてるようだ。


「カレン、その辺してやれ。そんなの相手にしてないで、メシにしよう」


と声をかけると、カレンがニッコリ微笑みながら組み伏せた男を床に転がした。男たちは完全にビビりながら逃げていく。ありゃ当分ナンパはできないだろうな…。オンナは見た目じゃわからんからなぁ…。恐い怖い…。


 注文していたエール屋ソーセージ、その他が出揃い、4人でいろいろ話しながら食った。メシを終えて、カレンと部屋に戻ると、


「さっきので、あたしのこと恐いと思った?嫌いになった?」


声が震えている。多分、涙を溜めている。手を取って引き寄せ、抱きしめた。


「そんなことはない。ワシがは背後から捉えた時には、なかった動きだったから驚きはしたけど、あれで嫌いになんてなるもんか。ワシのことを『旦那様』と言ってくれたろ?逆に『大事にしなきゃ』って気持ちが強くなったよ。ただね、一度キチンと話しをしなきゃいけないとも思ってる」


と伝えてベッドに腰かけた。やはり涙を流してた。


「ワシに4人の嫁がいるのは知ってるね?嫁になりたいのか、それとも嫁とは違う立場を望むのか、どっちだ?」


「嫁以外って、どんな?」


「嫁より一緒にいる時間は少なくなるけど…。これからワシは領主という立場になる。騎士団はいるけど、領主専属の護衛も必要だ。その護衛になって、嫁がいない時にそばにいる立場だ。ワシとしては、それがいいかな?と思ってる。遠征なんかの外出の時は、いつも一緒だ。

 ところで、カレンは歳はいくつなんだ?今更だけど…?」


「それでいい。一緒にいられるなら何でもいい。幼く見えるけど、もう23…」


うわぁ〜、前世の娘と同じくらいだ!いいのか、ワシ?とはいえ、既に手遅れだが…。


そう言ってカレンが抱きついて来た。そのままベッドに雪崩れ込んだ…。

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