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それは皆のもの  作者: 皆麻 兎
2.Sgrh

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7 . 捜索_会話_エンカウント

「おぉ…」

「これはすごい…!」


馬車に揺られてから数時間が経過し、私達一行は仕入れ先と合流予定の場所へ到達する。

その場所は、上から下へと流れる濁流。水が多く流れる巨大な滝だった。


 あれが、入口…?


私は、上から下に流れていく水の流れに対して目を凝らしてみると、水流の音が響き渡る中で一か所だけ奥へ続く穴のような物体(なにか)が垣間見える。


「“滝の洞窟”なんて、よく云ったものだよ。一体、その双子はどんな宝を探し当てているんだろうね…!」


滝を見上げながら、ナハトが不意に呟く。


「ナハト、道具(インニャル)の(・)運び屋(チャハダラ)が会う双子ってのは、洞窟の手前で合流する手はずだったんじゃねぇのか?」

「!」


すると、同じ徒党(パーティー)である槍使いの青年が彼に声をかける。

その時、私は自身が呼ばれている二つ名に対して僅かに眉へ皺が寄った。


「確かに、俺もそう聞いていたんだけど…。アビさん、実際のところどうなんだい?」

「…あの双子の事なので、秘宝探求(トレジャーハント)に夢中で卸売業者(わたし)が訪ねてくることを忘れている可能性大…ですね」


ナハトに話しかけられた私は、双子の話をしながら冷や汗をかく。

本当に彼らならあり得る話だからだ。


「じゃあ、ナハト。全員で洞窟の中へ入っていくのは、魔物の襲撃があった場合に護衛対象(かのじょ)を危険に晒す可能性高いわね。なので、二手に分かれましょうか?」

「そうだね…。じゃあ、件の双子捜してくるのは、君達二人でいいかな?」


僧侶の女性がナハトに提案すると、彼はそれを受け入れる。

そして、次の案として槍使いの青年と僧侶の女性に双子と合流してこちらに連れてくる役目をお願いしていた。


 いや、徒党(パーティー)を二分するのも如何かと思うが…まぁ、いいか。双子達(かれら)も何かあった可能性あるから、放置はできないもんね…


冒険者達(かれら)にモノ申したい気分ではあったものの、冒険に関して素人の私が口を出すことではないと思いなおし、唇を結んだ。



こうして、滝の洞窟入口入ってすぐの所に私・ナハト・魔法使いの3人が残り、他の二人が洞窟の奥にいる双子達の捜索に出発した。


「デューラさん、道具製作者もやっているんだ!やっぱりすごいなぁー…!」

「やっぱり彼女、魔法使いの界隈では有名なんですね?」


双子の捜索が行われている間、入口に待機する私は徒党(パーティー)の一人である魔法使いの少女と話をしていた。

彼女曰く、卸売業者(わたし)の得意先であるデューラさんは、魔法使いの界隈でも非常に有名らしい。目の前で話すこの少女は推定年齢16歳くらいのようだが、デューラに憧れて魔法使いの道を目指したそうだ。

私は相槌を打ちながら聞いていたが、隣にいるナハトは苦笑いを浮かべている。おそらく、同じ話を過去に何度も聞いたのだろう。そう言いたげな表情(かお)をしていた。


「そういえば、ナハト。さっきからアビさんの顔見つめているけど、どうしたの…?」

「え」


突然魔法使いの少女から話を振られた事で、彼は一瞬固まる。


「?ナハトさん、私の顔に何かついていたりします…?」


敵意はなさそうだと判断して放置していたものの、私も視線が自分に向いているのは気になっていた。故に、良い機会(タイミング)だと思って私も尋ねる。


 あぁ、もう…この身体小さめだから、どうしても視線を上に上げなくてはいけない。…面倒!!


私はこの時、自身というよりは、このアビという娘の身体が小さめな事を嫌悪した。というのも、私がこの肉体に憑依した頃から身長は伸びておらず、150㎝くらいしかない。故に、自分より背の高い人物がとりわけ男性に多いため、面と向かって話す際はどうしても上目遣いで視線をあげる必要があるのだ。因みに、フェカドゥにある本来の“精霊タリング”の肉体はもう少し身長はあるはずなので、猶更歯がゆかったのである。


「いえ、特に顔には何もついてないですよ。ただ…」

「ただ…?」


私から向けられた視線に対し、ナハトは挙動不審になりながら腕を組んで一瞬黙り込む。

透き通るような碧眼が一度閉じられ再び開くと、真っすぐな眼差しをして口を開く。


「アビさん…は、少し似ている気がします。幼少期、同じ村で育った俺の幼馴染に」

「!」


そう告げるナハトの瞳は、どこか憂いを帯びていた。

口調からして冗談や女性を口説くような雰囲気ではなく、その場の空気が固まったような気がする。ここに人目がなければ、風の精霊に頼んで空気の入れ替えをしてほしいくらいだ。


「ナハト、それって…」


一瞬呆けていたものの、すぐに我に返った魔法使いの少女が仲間に声をかける。その時だった。


「…何か来る…!!」


洞窟の奥から何かが勢いよく迫ってくるような轟音と、複数の足音を耳にした私はその場ですぐに立ち上がる。

近づいてくる気配に気が付いた冒険者二人も、すぐに立ち上がって臨戦態勢を取り始めた。


「もう、これどうやって倒せばいいのよーーーーーーー!!!!」

「姉さんが、お宝に夢中になっているからこんな事になったんだろうがよ!!」

「お嬢さんら、喧嘩している場合じゃないぜ」

「本当に」


物凄い形相で叫びながら走ってきたのは、今回合流予定だった件の双子。

そしてその斜め後ろには、先程一旦別れた槍使いと僧侶が全速力でこちらへ向かってくる。


「あれは…!?」


彼ら4人を追いかけてきていた存在(もの)―――――それは、巨大な刃物で出来た丸い車輪のような物体を身体の一部のように高速回転し、真ん中の空洞部分に全身が存在するような異形の魔物だったのである。


「二人とも…状況は!?」


両手剣の柄に手をかけていたナハトは、仲間二人に状況確認をする。

すると槍使いの青年が、件の双子とはすぐに見つけ出せたものの、宝に夢中で探索を切り上げてくれなかったおかげで魔物と遭遇したそうだ。


「あんな円形の刃物じゃ、俺の槍との相性も悪い!加えて、その双子が使う得物も同じくな相性最悪(かんじ)だから、ひとまず一目散に逃げてきた!!」


状況説明する青年に対し、ナハトと魔法使いの少女は若干呆れていた。


 まぁ、武器の相性悪いのに無駄に立ち向かわなかっただけ、まだ利口だと思っておこう…


私は、彼らのやり取りを見ながらそんな事を考えていた。

魔物と遭遇(エンカウント)した際、“先手必勝”なんて言葉もあるが、それが可能になるのは「自分の攻撃が確実に相手へ当たるだろう」という確信がある時くらいだろう。槍使いの槍だと、あの丸い刃を回転させながら動く敵に当てよう物ならば、ことごとく弾かれる。双子も一応冒険者なので武器を持っているが、短剣(ダガー)なのでさほど効果はない。


「とはいえ、そいつが洞窟の外に出れば、人里へ向かう可能性もある。…倒すしかないか」

「おしゃべりばっかりしていたから、身体動かして早くお腹空かせたいのよねー…!」


そう告げるナハトと魔法使いの少女は、どこか楽しそうな笑みを浮かべていた。

逆境だと燃えるのか単に戦いが好きなのかはわからないが、怖い魔物が近づいている時は頼もしいともいえる表情を二人は浮かべていた。


「トガちゃんとトゴ君、お久しぶりです」

「あれ、あんた誰だっけ…?」

「姉さん!!僕らが手に入れたアイテムを流通させてくれている、卸売業者のアビさんだってば!」


ひとまず目的の人物に会えた私は、二人の元へ駆けよって声をかける。

名前をそれぞれ呼んだら、予想通りの反応が返ってきた。


「あ、そうそう…」


そして、双子の顔を正面から見て私はある事を思い出していた。


「魔物の討伐自体は、あの徒党(パーティー)に任せるとして…。補佐ついでに、こ(・)れ(・)をぶつけるのをお願いしてもいい…?」

「アビさん…?って、それは…!!」


私は、口を動かしながら自身の肩から紐でひっかけている革袋から、何かの入った布袋を取り出した。

構造は企業機密だが、私の革袋の中は、王都にある自宅のある大きな収納と精霊の力を介して繋がっている。そのため、自分がその収納にストックしている物であれば、その場にいなくても簡単に取り出すことが可能なのだ。


 袋の中身が揺れている事と…。あの魔物の性質から、私が何の道具(アイテム)を取り出したか気が付いたようね。…流石、秘宝探究者(トレジャーハンター)…!


私が布袋をちらつかせただけで何を示すか気が付いたトゴに対し、感心していた。


「了解!魔物に投げつけるのは、あたしに任せて!!」

「うん、頼みます」


私から布袋を受け取ったトガは、一直線に魔物の方へ向かって走り出す。


「お…おい…!?」


後ろから全速力で走ってくる双子の片割れを目にした槍使いは、目を丸くしていた。

魔物は、私達の方へと突進するようにその丸い刃を高速回転して迫ってくる。


「そぉぉおれっ…!!!」


魔物がトガの真横を通り過ぎた際、走っていた彼女はその場で脚を踏ん張って袋の中身をぶちまける。

布袋から姿を現して敵にぶつけたのは、多少灰色で濁った色はしているが、普段は道具屋ではめったにお目にかかれない代物であった。


いかがでしたでしょうか。

今回、またどこで区切るか難しくて際どい所で終わらせてしまったかもです。

この滝の洞窟は某有名RPGだったり、遭遇した魔物は某少年漫画からひねり出した怪物だったりと、色々な所をモデルとさせて頂いてる次第だす。

最後、トガが魔物にぶちまけた物体については次回書きますが、これもとある作品に出てきたアイテムをモデルとしてます。何故アビがあんなアイテムを持っていたかというと、トガトゴ双子のような”仕入れ先”から珍しいアイテムを受け取った際に道具屋に流通させようと彼女は営業かけたりもするのですが、時折お店で売れ残ったり、時には納品先に渡していない一部の道具があります。アビの自宅にはそういった”流通していないアイテム”を一時的に自分で保管していて、精霊の力を介して自由に出し入れができるというのが、今回の解説。

さて、次回はどうなるのか?そういえば、ナハトとの会話もまだ途中でしたよね。。。

次回もお楽しみに★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します(__)


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