10 . ”仕入れ先”の友人と共に
「お!やっぱりいたね」
「デューラさん…!!?」
ある日の朝、私はいつものように道具を“納品先”の一つである冒険者ギルドに届けるために、件の建物を訪れていた。
そこで、普段はギルドで見かけない“仕入れ先”の魔法使い・デューラと偶然会ったのである。
「珍しいですね、冒険者ギルドに顔を出すなんて…」
「…今日は、ちょっとね。友人が訪ねてきたので、付き添いで来たんだ」
「そうなんですね…」
私達は、何気ない会話を交わす。
彼女が顎で指した先には、ギルドの受付嬢と話す冒険者の風貌をした女性の後ろ姿が見えた。
耳が細長い…。という事は、耳長族の魔法使い…?
私は、後ろ姿からでも耳の端っこが少し見えた事やその女性から感じる魔力量の多さから、優秀な魔法使いだろうと仮定していた。
「では、私はこれで…」
「あっ、そうだ!!」
道具の納品を既に終えていた私はデューラと別れを告げようとするが、彼女は突如私の台詞を遮る。
「アビ、君はこの後もアイテムの納品先いくつか訪問するかい?」
「あー…はい。今日は主に、王都内の納品先を回りますね」
「じゃあさ、そのお仕事に私ら二人も同行してもいいかい?」
「はぁ…??!」
デューラから発せられた完全予想外の台詞に対し、私は珍しく素が出て素っ頓狂な声が漏れていた。
「…という事で、女の子3人で王都巡りだー!!」
「…強引な所は変わらないのね、デューラは」
その後、ギルドでの用事を済ませたデューラの友人と合流していた。
半分呆れたような声をしていたが、すぐに私の方へと向きなおして口を開く。
「私は、フレイプ・アイン。デューラから話は聞いてるわ」
「アビ・タリングです。宜しくお願いします」
自己紹介をしてくれたエルフの魔法使いに対し、私も名を名乗って相手から求められた握手を返した。
「じゃあ、荷車あって多少目立つかもですが、ご容赦ください」
「大丈夫よ。デューラから聞いたと思うけど、王都を訪れるの100年ぶりで地形とかうろ覚えだからね。荷車があった方が、はぐれなくて済みそうだしね」
「やっぱり、私ら只人と時間の感覚違うねー!」
私は口を動かしながら荷車を引き始め、そんな私とフレイプの会話を聞いていたデューラが軽く笑いながら呟く。
そうだ、私は精霊だから時間の流れに無頓着だけど…。100年って、普通の人間だったら一生を終えていそうな年数。でも、普通に百年単位の数字が出るのは、流石長命種よね…
私は、デューラの台詞を聞いた途端、不意にそんな事を考えていた。
因みに、この世界における長命種はエルフが一番長く、その次はドワーフだろう。前者の平均寿命が900年。後者の平均寿命が、300年程だ。私のような精霊もエルフと同じく900年近く生きるが、ここでそのような話をする訳にはいかない。
その後、私達3人は王都へと繰り出す。卸売業者の仕事に同行するというのは、王都散策としてはちょうどよいコースらしい。確かに、王城や道具屋といった、王都の様々な施設を巡るのは、初めてもしくは久しぶりにこの地へ来た者にとっては一番都合がいい。デューラもそれを解った上で私に提案してきたのだろう。
「納品してくれる回復薬の件……宜しくお願いしますね」
「勿論!お任せあれー♪」
私は、変な物を見るような細い目つきで、デューラの方を向く。
すると彼女は、ちょっと悪戯しようとしている子供みたいな表情で応える。
今回、友人であるフレイプとデューラを私の仕事に同行させてあげる見返りとして、次の仕入れ時に普段より多く魔力回復の回復薬を作成して提供してもらうという事で商談成立させたのだ。
報酬でも貰わないと、やってられなくなるしね…
土地勘のない人に対して街を案内するのは、簡単そうで意外と難しい。しかも、決行日当日に依頼されたものだから、ただ働きはしたくなかった私である。
「あ」
「アビさん…!?」
その後、納品先を何件か回った後、本日最後の納品先である道具屋にてまたもや思いがけない人物に遭遇する。
それは、先日滝の洞窟へ行った際、私の護衛を担ってくれた徒党のリーダー・ナハトだった。
「道具の補充…ですよね。今日はおひとりですか?」
「はい。他のメンバーは、別のお店で買い物中です」
「成程」
ナハトは、回復薬といった消耗品や、魔力のこもった装飾品等色々なアイテムを物色している。
私は特に気にすることもなく、荷車から持ってきた道具の陳列をしていた。因みに今いる道具屋は、店番をしている店主がだいぶ高齢なので、指示された場所に卸売業者が商品の陳列まで手伝っているという訳だ。
「このお店で最後なので、二人は少々お待ちください!」
「…じゃあ、私ら2人は貴女の荷車の近くでおしゃべりしてるわね」
「了解です」
道具屋の売り場隅っこに立っていたフレイプに話しかけると、何を思ってかデューラを引き連れてお店の裏側へと2人は行ってしまった。
その際二人の魔法使いは、入れ違いで入ってきた冒険者の客を一瞥する。
あれ…?
その一瞬のすれ違いの際、私はフレイプの仕草に違和感を覚えた。ほんの一瞬の出来事だったので、自分の見間違いかと目を一瞬擦る。
「あの…店員さんっすか?」
「あぁ、すみません」
すると突然、道具屋に入ってきた冒険者の男性に声をかけられる。
我に返った私は、話しかけた人物に視線を向ける。
「ごめんなさい、私実は店員ではないので…。入用の場合は、あそこの店主に声をかけてくださいね」
「…わかりました」
何か訊きたい事があったのかもしれないが、店員でない自分が答える訳にはいかないかなと考え、すぐに少し居眠りしていた店主を指さす。
「…アビさん」
「ナハトさん、どうかしましたか?」
冒険者が店主の元へ向かったのを見計らってか、ずっと黙っていたナハトが私に話しかける。
声が割と小さめだったため、私は彼の態度に対して首を傾げる。
対するナハトは、少し視線を宙に浮かせてから視線はお店の商品に固定したまま、話を続けた。
「…買いたい物買えたので、そろそろ俺は店を出ます。アビさんは、納品の方は終わりましたか」
「あぁ、もうすぐで終わ……」
ナハトとの会話は小声とはいえ何気ない内容だったが、私がその先を口にしようとした瞬間に気が付く。
何故彼が、小声で私に話しかけていたのかを。
私は、いつもの調子で道具を陳列する。息をひそめ、再び口を開いた。
「俺の勘違いだったら、すみません…。ただ、貴女のお連れの方がお店を出て行ってから、店の空気が変なかんじがして…。一応、注意してみてください」
「お気遣いありがとうございます、ナハトさん」
「あと…そうだ。俺の事、ナハトでいいですよ」
「では、私もアビで大丈夫です」
お互い緊張した面持ちだったが、最後の方で少し緊張がほぐれた気がした。
剣士の勘…って奴かな。いずれにせよ、こういう第六感ってのは意外とあたるし…。何より、先程の“あれ”と辻褄が合いそう…
唇を軽く結びながら、私は残りのアイテムの陳列を完了させる。
その後は、道具屋の店主に挨拶して受領印をもらい、お店をあとにするのであった。
荷車を置いていた裏口へ向かうと、そこにはフレイプとデューラが待ち構えていた。
「アビ。これにて、今日の納品先は全部回り終えたかい?」
「はい、これにて本日の業務は終了ですね」
デューラに声をかけられ、私は今日の仕事が終わった旨を伝える。
「アビちゃん」
「何ですか?」
すると、隣にいるフレイプから声をかけられる。
この時私に見せた彼女の笑みが、何か含みがあるような気がして肩が一瞬震える。殺気や敵意ほど強烈ではないが、その豊富な魔力が少し漏れているような感覚がした。
「この後、夕飯行くんだけど…一緒に行く?」
「いつもお世話になっているし、私が奢るよ?」
対するデューラの口端が少し吊り上がっている。
まるで、これから狩りに行こうと提案する狩人みたいな表情をしていた。
前衛がいない魔法使いだけだけど、この面子なら…
私の脳裏に、この後起こるかもしれない出来事を想像し、私はフッと哂う。
「じゃあ、夕飯の後は夜遊びですかね?」
「そういうこと。なので、なるべく素面で行きましょう」
「了解です」
この会話によって、夕方から夜にかけての予定が決まる。
今宵、特に予定入れていなくてちょうどよかったかな…
運がいいと思う半分、業務内容と違う事をこれからしなくてはならないと思うと気が重い。
ともあれ放置できない事態でもあるため、ここでフレイプとデューラに協力するのが最善だと思い立った私は、彼女達と一緒に道具屋を後にするのであった。
いかがでしたか。
一見すると、女の子だけの王都散策。と思いきや、次回は何だか物騒な回になるかも?
今回初登場したフレイプ。実は彼女、前作にも登場していた魔法使い。詳細は前作をご覧くださいなんですが、彼女が長命種のエルフって事で今作にも登場できたかんじかなぁ。。
ナハトとの何気ないやり取りも入れられてよかったかなぁと。
次回は、魔法使い3人の夜遊びになりそう?実際は、本当に大人の遊びはしないですけどね((´∀`*))ヶラヶラ
次回もお楽しみに★
ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します(__)




