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病弱令嬢は”魔王様”に恋をする  作者: ぽかぽか


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42/52

42.

 数日後。

 セリアはオーレリアとともに王立魔法療養院を訪れていた。あらかじめ訪問の約束をしていた二人は、受付で名前を告げると院長室に案内された。


「お待たせしました」


 部屋に入ると、院長が穏やかな笑みで迎えた。

 その隣には、セリアの主治医も同席していた。


「本日はどのようなご用件でしょうか」


 セリアは一つ息を吸い、小さく頷く。


「実は、ご相談したいことがあるんです」


 少し緊張しながらも、自分の考えを話し始めた。

 療養院で過ごす患者たちのこと。

 不安な気持ちを少しでも忘れられる時間を作りたいこと。

 そのために、お茶会を開いてみたいと思ったこと。


「私も入院していた頃、オーレリア様とお茶を飲みながらお話しした時間に、とても救われたことがあるんです」


 二人は最後まで静かに耳を傾けていた。

 話が終わると、院長は主治医に意見を求めた。


「先生はどう思われますか」


 主治医は少し考え、穏やかに頷いた。


「とても良い提案だと思います。ただ、患者さんによって食べられる物や参加できる時間が異なります」

「はい。必ず先生方に確認していただきたいと思っています」

「ええ、体調に配慮しながら行うのであれば問題ないでしょう。患者さん同士が交流する機会にもなると思いますし、きっと良い時間になると思います」


 その言葉に、セリアはほっと胸をなで下ろした。

 主治医はセリアに視線を向けた。


「セリアさんご自身が元気になられたからこその発想ですね。本当に良かったです」

「ありがとうございます」


 セリアは照れくさそうに笑った。

 院長も優しく微笑む。


「では、会場や日時は、医師や看護師と相談して決めましょう。療養院としても協力していきたいと思います」

「ありがとうございます!」


 思わず声を弾ませるセリア。

 隣ではオーレリアも嬉しそうに微笑んでいた。


「ご協力、本当にありがとうございます」


 院長は二人を見つめながら頷く。


「皆さんにとって、療養院での楽しみが一つ増えそうですね」


◇◇◇


 療養院を出た後、オーレリアがセリアに声をかけた。


「少し街に寄っていきませんか」

「はい」


 二人は並んで王都の街を歩き始める。

 まず立ち寄ったのは、小さなカフェだった。

 温かい紅茶が運ばれてくると、オーレリアが微笑む。


「まずは、どんなお茶会にしたいか考えましょう」

「そうですね」


 オーレリアが持参していた手帳を開き、二人は思いついたことを書き出していく。

 一度に参加しやすい人数。

 お茶やお菓子。

 会場の飾り付け。

 患者が無理をしない時間。

 患者ごとの食事制限やアレルギー。

 話題に困らないような工夫。

 考え始めると、思った以上に決めることが多かった。

 二人の紙は、気づけば文字でいっぱいになっていた。


「準備することがたくさんありますね」


 セリアが少し驚いたように笑うと、オーレリアも頷く。


「ですが、その分きっと素敵なお茶会になります」


 カフェを出ると、近くの雑貨店に立ち寄る。

 可愛らしいティーカップ。

 花柄のテーブルクロス。

 小さなリボンや季節の花。


「このリボンならお花に合いそうです」

「こんな飾りがあるだけでも、明るい雰囲気になりますね」

「少しでも明るい気持ちになってもらえたら嬉しいです」

「ええ。きっと穏やかな時間になると思います」


 オーレリアの言葉に、セリアは嬉しそうに笑った。


「今日は見るだけにしましょう。必要なものが決まってから、また来ればいいですもの」

「はい」


 二人は店を後にする。

 帰り道、セリアは青空を見上げた。

 考えなければいけないことはたくさんある。

 それでも、不思議と大変だとは思わなかった。

 自分にもできることがある。

 誰かの笑顔のために、自分から動くことができる。

 お茶会の準備はまだ始まったばかり。

 それでも、これからがとても楽しみだった。

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