42.
数日後。
セリアはオーレリアとともに王立魔法療養院を訪れていた。あらかじめ訪問の約束をしていた二人は、受付で名前を告げると院長室に案内された。
「お待たせしました」
部屋に入ると、院長が穏やかな笑みで迎えた。
その隣には、セリアの主治医も同席していた。
「本日はどのようなご用件でしょうか」
セリアは一つ息を吸い、小さく頷く。
「実は、ご相談したいことがあるんです」
少し緊張しながらも、自分の考えを話し始めた。
療養院で過ごす患者たちのこと。
不安な気持ちを少しでも忘れられる時間を作りたいこと。
そのために、お茶会を開いてみたいと思ったこと。
「私も入院していた頃、オーレリア様とお茶を飲みながらお話しした時間に、とても救われたことがあるんです」
二人は最後まで静かに耳を傾けていた。
話が終わると、院長は主治医に意見を求めた。
「先生はどう思われますか」
主治医は少し考え、穏やかに頷いた。
「とても良い提案だと思います。ただ、患者さんによって食べられる物や参加できる時間が異なります」
「はい。必ず先生方に確認していただきたいと思っています」
「ええ、体調に配慮しながら行うのであれば問題ないでしょう。患者さん同士が交流する機会にもなると思いますし、きっと良い時間になると思います」
その言葉に、セリアはほっと胸をなで下ろした。
主治医はセリアに視線を向けた。
「セリアさんご自身が元気になられたからこその発想ですね。本当に良かったです」
「ありがとうございます」
セリアは照れくさそうに笑った。
院長も優しく微笑む。
「では、会場や日時は、医師や看護師と相談して決めましょう。療養院としても協力していきたいと思います」
「ありがとうございます!」
思わず声を弾ませるセリア。
隣ではオーレリアも嬉しそうに微笑んでいた。
「ご協力、本当にありがとうございます」
院長は二人を見つめながら頷く。
「皆さんにとって、療養院での楽しみが一つ増えそうですね」
◇◇◇
療養院を出た後、オーレリアがセリアに声をかけた。
「少し街に寄っていきませんか」
「はい」
二人は並んで王都の街を歩き始める。
まず立ち寄ったのは、小さなカフェだった。
温かい紅茶が運ばれてくると、オーレリアが微笑む。
「まずは、どんなお茶会にしたいか考えましょう」
「そうですね」
オーレリアが持参していた手帳を開き、二人は思いついたことを書き出していく。
一度に参加しやすい人数。
お茶やお菓子。
会場の飾り付け。
患者が無理をしない時間。
患者ごとの食事制限やアレルギー。
話題に困らないような工夫。
考え始めると、思った以上に決めることが多かった。
二人の紙は、気づけば文字でいっぱいになっていた。
「準備することがたくさんありますね」
セリアが少し驚いたように笑うと、オーレリアも頷く。
「ですが、その分きっと素敵なお茶会になります」
カフェを出ると、近くの雑貨店に立ち寄る。
可愛らしいティーカップ。
花柄のテーブルクロス。
小さなリボンや季節の花。
「このリボンならお花に合いそうです」
「こんな飾りがあるだけでも、明るい雰囲気になりますね」
「少しでも明るい気持ちになってもらえたら嬉しいです」
「ええ。きっと穏やかな時間になると思います」
オーレリアの言葉に、セリアは嬉しそうに笑った。
「今日は見るだけにしましょう。必要なものが決まってから、また来ればいいですもの」
「はい」
二人は店を後にする。
帰り道、セリアは青空を見上げた。
考えなければいけないことはたくさんある。
それでも、不思議と大変だとは思わなかった。
自分にもできることがある。
誰かの笑顔のために、自分から動くことができる。
お茶会の準備はまだ始まったばかり。
それでも、これからがとても楽しみだった。




