↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病弱令嬢は”魔王様”に恋をする  作者: ぽかぽか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/52

41.

 ゼインから過去の話を聞いた翌日。

 セリアは自室の窓辺に座り、庭を眺めていた。


(ゼイン様……)


 思い出すのは、あの時の言葉だった。

 『もう慣れた』と、何でもないことのように話していた。

 その言葉に『慣れることなんてない』と返したこと。


(あんなことを言ってしまったけど……)


 今でも間違っていたとは思わない。

 傷ついた過去は、なかったことにはならない。

 だからこそ、我慢してほしくなかった。

 けれど、言葉を伝えただけで、すべてが変わるわけではない。


(私も、ゼイン様みたいになりたい)


 誰かを助けられる人に。

 誰かに寄り添える人に。

 自然とそんな思いが浮かんでいた。

 病気が治ったら、魔術を勉強したい。

 ゼインのように人を治療することは難しいかもしれない。

 それでも、魔術を学べば誰かの役に立てる日が来るかもしれない。

 けれど、それは病気が治ってからの話だ。

 セリアは小さく苦笑した。


(今の私にもできること……)


 考えながら、療養院での日々を思い返す。

 診察を待つ間、静かに本を読んでいる人。

 庭を歩きながら空を見上げている人。

 皆、それぞれ不安を抱えながら毎日を過ごしていた。


(少しでも、病気のことを忘れて過ごせる時間があれば……)


 その時、以前オーレリアと療養院で過ごした時のことを思い出す。


「お茶会……」


 思わず声に出す。

 病気のことを忘れて、好きなことを話しながらお茶を飲む。そんな時間があれば、少しだけでも心が軽くなるのではないだろうか。


「でも……」


 セリアは困ったように首を傾げた。


「お茶会を開くには、どうすればいいんだろう」


 考えているうちに、一人の顔が浮かぶ。


「そうでした」


 二日後には、オーレリアと会う約束をしていた。


「オーレリア様に相談してみよう」


 そう決めると、少しだけ胸が弾んだ。


◇◇◇


 二日後。

 セリアは公爵家を訪れていた。

 応接室に案内されると、オーレリアが穏やかな笑みを浮かべて迎えてくれる。


「お待ちしていました、セリア様」

「今日はお招きいただいて、ありがとうございます」


 挨拶を交わすと、オーレリアはほっとしたように微笑んだ。


「お手紙ではお元気だと伺っていましたけれど……」


 一度言葉を切り、優しく続ける。


「こうしてお顔を見られて安心しました」


 フレディの一件があったばかりだ。

 直接元気な姿を確認できたことで、本当に安心したのだろう。


「ご心配をおかけしました」


 セリアは申し訳なさそうに頭を下げた。


「もう大丈夫です」

「それを聞いて安心しました」


 二人は顔を見合わせ、小さく笑う。


 それから最近読んだ本や、退院後に庭を歩いた時のことなど、他愛のない話をしながら穏やかな時間を過ごした。


 紅茶を一口飲んだところで、セリアは姿勢を正す。


「オーレリア様」

「はい」

「今日は、一つご相談したいことがあるんです」


 オーレリアは静かに耳を傾ける。


「私……ゼイン様のように、誰かの力になれる人になりたいんです」


 少し照れたように笑う。


「だから、今の私にもできることはないか考えていて……」


 セリアは先日思いついたことを話し始めた。

 診察を待つ患者たちのこと。

 不安そうな表情をしている人たちのこと。

 少しでも笑顔になれる時間があればと思ったこと。


「許可をいただけたら、療養院でお茶会を開いてみたいんです」


 そう言うと、少し困ったように笑う。


「でも、私は開いたことがなくて……どうすればいいのか分からないんです」


 話し終えると、オーレリアは柔らかく微笑んだ。


「とても素敵なお考えですね」


 その一言だけで、セリアの表情が明るくなる。


「私もお手伝いします」

「本当ですか?」

「もちろんです」


 オーレリアは優しく頷いた。


「お茶会の準備も一緒に考えましょう。それから、療養院にお話をする時もご一緒します。一人で説明するより、その方が安心でしょう?」


 セリアは嬉しそうに何度も頷いた。


「ありがとうございます。でも……」


 少しだけ自信なさそうに笑う。


「ゼイン様みたいには、なれないかもしれません」


 すると、オーレリアは静かに首を横へ振った。


「お兄様のようになる必要はありません」


 セリアは目を丸くする。


「お兄様には、お兄様にしかできないことがあります。そして、セリア様にも、セリア様にしかできないことがあります」


 その言葉は、とても優しかった。

 セリアは胸の奥が温かくなるのを感じる。


「……はい」


 自然と笑顔がこぼれた。

 誰かの笑顔のためにできることを思い浮かべながら、セリアは期待に胸を膨らませていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。