表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
病弱令嬢は”魔王様”に恋をする  作者: ぽかぽか


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/10

4.

 数日後。

 約束の時間より少し早く店に着いたオーレリアは、窓際の席でフレディを待っていた。


「待たせてしまってごめん」


 聞き慣れた声に顔を上げる。

 フレディは申し訳なさそうに席に着いた。


「いいえ。今日は来てくださって安心しました」

「最近は約束を破ってしまうことが多かったからね」


 そう言って苦笑する。

 その表情を見ながら、オーレリアは静かに切り出した。


「今日は、そのことでお話があります」

「僕も少し話したいことがあったんだ」

「そうですか」


 紅茶が運ばれてくるのを待ち、オーレリアは口を開く。


「数日前、セリア様からお手紙をいただきました」


 その言葉に、フレディは少し驚いたように目を瞬かせた。


「セリアから?」

「はい」


 オーレリアは頷く。


「手紙には、何度も『どうか気になさらず』と伝えていると書かれていました」


 フレディは小さく笑った。


「うん、そうだよ。でもね……遠慮してるだけなんだ」


 あまりにもあっさり認めたので、オーレリアは一瞬言葉を失う。


「否定はなさらないのですね」

「うん」


 フレディは迷いなく頷いた。


「でも、セリアは優しいから」

「優しい……ですか?」


 フレディは懐かしそうに笑う。


「病気の時って、一人でいると寂しいだろう?」

「……」

「僕も子どもの頃、熱を出した時は一人で寝ているのがすごく心細かったんだ。だけど遠慮して『一人で大丈夫』って言ってたんだ」


 だから分かるんだ、と続ける。


「セリアは『気にしないで』と言うけど、本心じゃない」

「そうでしょうか」

「うん。遠慮しているだけだよ」


 その口調には一切迷いがなかった。

 オーレリアは静かに尋ねる。


「一度でも、セリア様のお気持ちを聞こうと思われたことはありますか?」

「もちろん聞いてるよ」

「それでは、もし帰ってほしいとおっしゃったら?」

「セリアはそんなことを言う子じゃないよ。……もし言ったとしても、それは僕に気を遣っているだけだ」


 迷いのない返事だった。

 オーレリアはゆっくり息を吐く。


「そうではない可能性は、お考えになったことはありませんか?」

「考えたことはないよ」


 即答だった。


「だってセリアは優しい子だから」


 同じ言葉を繰り返す。

 まるで、それ以外の答えは存在しないと言うように。

 オーレリアは胸の奥に小さな違和感を覚えた。

 話が噛み合わない。

 自分はセリアの気持ちを尋ねている。

 けれどフレディは、自分の考えしか話していない。


「オーレリア、僕も君を不安にさせてるんじゃないかと心配していたんだけど……ああ、なるほど。君がそんなことを言う理由が分かったよ」


 フレディは優しく笑った。


「嫉妬しなくて大丈夫だよ」

「……嫉妬?」

「婚約者なんだから、不安になる気持ちは分かる。でも、セリアは幼馴染なんだ」

「違います」


 オーレリアは静かに首を横に振る。


「私がお聞きしたいのは、そのことでは——」

「心配しなくていい」


 言葉を遮られる。


「君のことも大切に思っているから」


 優しい声だった。

 けれど、その優しさはどこか空回りしているように感じられた。


◇◇◇


 屋敷に戻ると、侍女のエマが待っていた。


「お帰りなさいませ、お嬢様」

「調べてくれたことを聞かせてちょうだい」


 エマは一礼し、集めた話を順に報告する。


「療養院の看護師の方々は、フレディ様はとても優しい方だと口をそろえておりました。差し入れを持って来られたり、皆さんにも気さくに声を掛けてくださるそうです」


 そこまでは、オーレリアの知るフレディだった。


「ですが、主治医の先生だけは違う見方をされていたそうです」

「違う?」

「療養院の関係者に聞いたのですが『面会時間が長く、セリア様のお体が心配だ』と話されていたそうです」


 オーレリアは目を閉じる。

 看護師と主治医。

 同じ人物を見ているのに、受ける印象が違う。

 そして今日のフレディとの会話。


「……やはり」


 セリアの手紙は、嘘ではないのだろう。


「療養院に行った方がよさそうね」

「セリア様に、お会いになるのですか?」

「ええ、明日にでも。用意をお願いね」


 自分の目で確かめたい。

 手紙だけではない。

 フレディの言葉だけでもない。

 本当のセリア・ホワイトという人を。


 そして、翌日。

 王立魔法療養院に到着すると、案内された病室の前で足を止める。

 オーレリアは小さく息を吸い、扉をノックした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ